第864話 調査しないと後悔するかもかな

「義理の妹さんはかなり宮田さんに対して害意を持っているか、余程特殊な嗜好持ちですね。

この部屋にあるかなりの物が危険なレベルで穢れを溜め込んでいるので、今後は義理の妹さんからの贈り物は全部要らないと断るべきでは?

退魔師に見てもらったら不自然な位体に悪いレベルの穢れを蓄積した物が多かったから、悪意があるか本人に何か危険な嗜好があるかだから、どちらにせよ断るとでもはっきり言った方が良いですよ」

碧が部屋の中を歩き回りながら言った。


骨董品が好きだとしても、無難な骨董品だってそれなりにあるのに危険なのばかり選んでいると言うのは悪意を疑うよね。

もしくは本人に自殺か殺人願望があるとか。


「ちなみに弟さんとの関係が良好で、悪意を持つはずが無く単にこう言う怪しげな骨董品が好きな人なのだとしたら、こう言うのを家に大量に溜め込んでいる可能性も高く・・・そうなると弟さんの健康に差し支えるかも知れませんね」

弟さん夫婦(妻だけで弟は蚊帳の外の可能性もあり)が宮田さんを若死にさせようとしているか、もしくは弟さん本人が危険に晒されているか。


どちらもあまり良い話じゃあないよね。


「ちなみに、宮田さんのご両親は大丈夫ですか?」

祖父母から会社なり豪邸なりが孫に節税対策で残されるんだったら、親にもそれなりに資産(将来的には遺産)があるのだろう。


節税のためと言ったって、自分の老後の資金を子供達の善意に頼らなければならない程に遺産を譲る親はそうそう居ないと思う。

まあ、頭がお花畑だったらそう言うのもあり得るかもだけど、そんな人はそこまで積極的に節税に励まないだろう。


「母は義妹と趣味が合わないとはっきり表明するタイプな人で、結婚してすぐの頃に骨董品や置き物系は自分の目で見て決めたいからプレゼントは欲しくないときっぱり断っていたので大丈夫でしょう。

元気一杯で体調も悪くない様ですし」

宮田さんが言った。


おお〜。

凄いね。

まあ、家の家具とか装飾に拘りがある人だったら趣味が合う人以外からはプレゼントは貰っても邪魔なだけだよね。

貰い物を売るのは微妙だし、捨てるのだって手間が掛かる事が多い。

しかも日本だったら物を貰ったらほぼ同じぐらいの価値のお返しを何らかの機会に渡すのが常識らしいし。


「弟に関しては・・・義妹のやる事に興味がなくて気付いていないのか、消極的に賛同しているのか分かりません。

どちらにせよ確認したいので、弟の家に同行して頂けますか?」

宮田さんが聞いてきた。


ええ〜?

遺産が絡む家族関係って拗れやすいし恨まれやすいのにこっちに得る物はないから、首を突っ込みたくないんだけど。


「骨董品を探しているからと見せて頂きに行って、探して居たのと違うって話で帰る程度だったら良いですけど。

穢れが酷い場合でも、退魔協会へ依頼する様に話をつけて貰えますか?

後から詐欺だったのではって弟さんに言われたくないので」

宮田さんが払うんだったら何も言わないだろうけど、良い年した収入のある成人男性の支払いを姉が完全に肩代わりするなんてことは無いだろうし、自分で払うとなったら弟さんが『本当に詐欺じゃないのか』と疑問を持っても不思議はない。


特殊詐欺のニュースが毎日の様に流れる現代で詐欺を疑う気持ちは分かるとしても、私たちがそう言う目で調べられるのは不快だ。

それに悪意がない場合は、今後のことを考えるならちゃんと専門家に祓ってもらって義理の妹さんの趣味が悪すぎることを誰かが証明する必要があるだろう。


穢れが全然なかった場合はそう言う手続きは不要だが、その場合は宮田さんと弟さんの関係に罅がはいりそう。


宮田さんが溜め息を吐いた。

「義理の妹の趣味が思っていた以上に悪いと判明するか、実の弟が姉を妻が長期戦で死なせようとしているのに気付かないうっかりモノかそれに賛同する様なロクデナシだと判明するか。

どれもあまり嬉しく無い結果ですが、知らないまま見過ごして放置したら後で後悔する事になるかもですからね。

取り敢えず、弟が不注意で死にそうかどうかを確認したいので、付き添いだけでもお願いします」


そういえば、こう言う鑑定ちっくな浄化はしない依頼で幾ら取るか、決めてなかった。

退魔協会の調査費ぐらいにすれば良いかな?

あれも詳しい価格設定は知らないんだけど、弟さんの家に行く日が決まるまでに青木氏にでも確認しておこう。

事故物件の依頼の時の調査費を節約出来るから私らに確認を依頼しているのだ。

大元の調査費が幾らぐらいか、聞いたら教えてくれるだろう。


やっぱ家族関係って面倒な案件が多いなぁ。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る