第863話 害意が溜まりまくりな部屋

「この壺は貰い物との事ですが、他にもその贈り主から貰った物があるなら見せて貰えますか?」

碧がじっと壺を見つめてから尋ねた。


確かに、これ一個じゃ無いなら全部浄化しなきゃ状況は改善しないかもだよね。

15万円だったらこの汚泥の如き壺を浄化するだけでも退魔協会にバレたら嫌味を言われそうなレベルだから、更にもっと沢山あるならちょっと微妙な心境だが。


まあ、全部一箇所にまとめて碧が清めの祝詞を唱えちゃえば一回で済むんだから、こっちの労力的にはそれ程違いは無いかな?

要は、退魔協会にバレなきゃ良いのだ。


とは言え。

贈り主が何を考えているのか、じっくり考察した方が良いんじゃないかと言う気はする。


「弟が結婚した涼子さんって骨董品が好きなのか、しょっちゅう色々と贈り物をくれるんだけど、どれもあまり趣味に合わなくて・・・。

日常的に見ていたく無いから奥の部屋に纏めてあるもだけど、彼女が遊びにくるたびに一々どれか出しておかないと哀しそうな顔をされるので面倒なのよ。

だから少なくとも見た目は悪くないあれだけはダイニングルームの飾り棚に置いたの。

残りは全部こちらの部屋です」

廊下を進み、奥の方へ進みながら宮田さんが説明してくれた。


義理の家族から趣味の合わない骨董品を贈られ続けるって、それは災難だね。

趣味が合わなくても捨てる訳にはいかず、場所ばっかり取って良い迷惑だろう。

と言うか、他のもあの飾り壺みたいのだったら呪われた品を渡して早死にする事を期待されてたりしない??


子供がいれば宮田さんが早死にしても弟に相続権はない筈だけど・・・宮田さんって子供がいるのかな?


「ここが人に貰って困った物を置いておく部屋です」

宮田さんの案内された部屋は壁一面に棚が備え付けてあり、更に部屋の中にも幾つか棚があった。

一体どれだけ貰い物されてるの??

しかも。

「凄いですね・・・」


部屋が穢れやら怨念だらけなんだけど。

それが家の他の部分に漏れてないって凄すぎる。


「この部屋って特別に作られたんですか?」

碧が宮田さんに尋ねた。


「ここはこの家を祖母から相続した時に、『捨てられない貰い物をしまって置く部屋』と教わった部屋なんですよ。

元々部屋にあった物は祖母にとって『捨てられない貰い物』だと言う話だったので、相続した際に心置きなく全部処分して暫くすっきりしていたんです。ですがどうも義理の妹と趣味が合わなくて、貰っても困る物ばかりくれるせいでここ数年で部屋の中がまた大分と混み合ってきてしまって・・・」

溜め息を吐きながら宮田さんが言った。


いや、趣味に合わない物ばかり贈ってくるなら、さっさと捨てるなり売るなりした方がいいんじゃない?

好みに合わなかったから処分したって言ったら贈り物をしなくなるかもよ?

まあ、この部屋を見る限り、ヤバい代物を受け取るのを拒否したと思われたら義理の妹さんがマジで殺し屋か呪師を雇ったかも知れないけど。


「ええと、この部屋にある物って随分と害意剥き出しな感じなんですが・・・宮田さんと弟さんの利害関係とか相続での順位はどんな感じなのか、お伺いしても良いですか?」

結婚しているかとか子供がいるかって人にとっては聞かれたくないポイントな場合もあるが・・・ちょっとこの部屋は、無い。


直接宮田さんに呪いは掛かっていないが、縁起が悪いとか祟られているとかな評判がある物を手当たり次第に集めたのか、部屋に置いてある掛け軸や壺やお皿や人形は統一性がなく、ざっと見たところ7割ぐらいは悪霊になり掛けな付喪神が憑いていたり、穢れが蓄積している。


こう言うのをプレゼントしまくって相手が死ぬ事を期待しているんだとしたら、ある意味気が長いよね。

それとも嫌がらせなのかね?


「祖父母が亡くなった際に節税対策という事で両親を飛ばして弟が祖父の会社の株の7割を相続し、私が3割とこの家を受け取ったのですが・・・私は子供がいないので、両親の相続までに私が死んでいればそれなりにあちらが得る物は増えますね」

溜め息を吐きつつ宮田さんが教えてくれた。


おっとりしているなりに害意はそれなりに気付いていたのかな?

だったらさっさと贈り物は全部処分すれば良かったのに。


それとも弟さんとの関係を損ねたくなかったのかね?

と言うか、義理の姉を殺そうとする妻なんて、さっさと離婚した方が良く無い?

金のために人を死なせようとする妻なんて、義姉の殺害に成功したら次には義両親を殺し、最後は夫も殺すんじゃない?


弟も遺産の受け取りを増やすために宮田さんの殺害に消極的にでも賛成しているなら、そっちも関係を切るべきだし。


何とも怖いねぇ。



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