第861話 支払い方法は

取り敢えず。

退魔協会の名刺を宮田さんに渡し、こちらに依頼したら詐欺の心配は必要ないし問題が解決しなかった場合にも別の術者を送られるか返金して貰えるかの可能性は高い事を伝える。

ただし、依頼するとまず実際に霊障があるかの調査が入りこちらに数万円、そして悪霊なり呪いなりと言った問題が実在すると判明した場合は退魔師が派遣されるが、問題の難易度によって送られる術師のランクも変わり、値段も場合によっては数十万円程度変わる。


私らに頼んだ場合は行ってみて霊障関連の問題がなければ交通費プラス2万円。

霊障があるならば、私たちでも解決出来ないような大規模な問題だったら辞退して退魔協会を勧めるが、それ以外の場合は15万円という事にした。


15万円だと退魔協会経由の依頼で中抜きされた後と比べても少なくなるが、最寄りの案件しかやるつもりは無いしペットを愛する人間に悪人はいないと言う事で、ちょっと割引価格で受けても良いだろうと急いで念話で相談した結果決めた。


カリスマ祈祷師以外の付き合いで仕事が来る可能性もあるけど・・・まあ、気に入らない人だったら退魔協会を薦めれば良い。


「15万円ですか・・・」

ちょっと微妙な顔をして宮田さんが呟く。


流石に真面目にお金の話をする際にキャリーケースに顔を突っ込んで肉球を鼻に押し付けているのは不味いと思ったのか、顔を突っ込むのはやめて今はわしゃわしゃとジルちゃんの喉や頬を撫でている。


猫の喉元や頬って自分で舐めてグルーミング出来ないのに、何故か良い感じに柔らかくて撫で甲斐があるよね〜。


暫くしたら『もう良い!』って動かれちゃう背中とかと違って、いつ迄でも撫でさせてくれるし。

ゴロゴロ度も高い気がする。


「退魔協会の報酬額よりも極端に低くすると睨まれて色々と嫌がらせを受けたりするので・・・」

ジルちゃんと宮田さんの戯れあいをスルーして碧がさらっと説明する。


まあ、碧個人に嫌がらせする蛮勇を持つアホは退魔協会にも居ないだろうけど、実家の方とか他の親族が被害を受ける可能性はあるからね。


別に違法だったり白龍さまが怒るような露骨な事をしなくても、申請書類の細かい部分までイチャモンをつけるとか、認可とか承認を常に後回しにするとかって言う感じの実務的な嫌がらせっていうのは可能だし、国に一つしかない業界団体を敵に回すと色々と面倒だ。


「分かりました。

ジルちゃんが治ったのは事実ですし、それこそジルちゃんが治らなくて大学病院に行って色々と検査したり手術したりしたら20万円ぐらいは軽く飛んでいくので、お二方に来ていただいてジルちゃんと私の不調の原因を取り払ってもらう方が最終的には安上がりですよね。

では、お願いします!」

ふんっと踏ん切りをつけるような感じで息を吐き、宮田さんが言った。


「では、あと一組程祈祷の依頼があるので、その後に行きますから住所を教えてもらえますか?

待っていて頂けるなら一緒に行きますが」

碧が携帯を取り出しながら聞く。


「あ!

家の状態を確認しておきたいので、先に帰りますね!

住所はこちらです」

携帯のアドレス帳を取り出して碧に見せながら宮田さんが言った。


ちなみに私らはクレジットカードでの支払いは受け付けてないんだけど、家に現金があるのかな?

一応支払いアプリ系のは私も碧も使っているから、あれでも支払いが出来るとは思うけど。


快適生活ラボを創立した時に銀行口座を会社名義で作ったんだけど、クレジットカードの支払いを受ける契約は高くつくから最初から考えてなかったんだよね〜。

ネットで販売するようになったら必要かもとは思っていたけど、まだお守りとかも直に売るか、碧の実家経由だけだし。

私らが個人で支払いアプリに受け取ったのを会社に付け替えるのってどう言う手続きをしたら良いのか、今度柳原税理士さんにでも相談した方が良いかも?


下手にクレジットカード関連の情報を受け取るとそれが漏洩したりしたら面倒だし、クレジットカードってカード会社への手数料が高いらしいからね。あれはタッチしたくない。

除霊とかを本当に私たちが直に退魔協会を通さずにやるとなると、それこそ祓い終わってから『やはり詐欺だったんだ』とか言い掛かりをつけてクレジットカードの支払いをキャンセルする人が出てくる可能性だってゼロではないし。


そう考えると高額な除霊関係は退魔協会経由で依頼してもらう方が無難なんだよねぇ。

ただ、知り合いに問題があるのが発覚した際に割高になると分かっているのに相手が後からゴネないか心配だから退魔協会を通せとも言い辛いし。


だからまあ、15万円で一回なら受けても良いかな〜って事になったが・・・上手くいくか、どのくらい需要があるかはこれから乞うご期待ってやつだね。


ちょっと悩ましい。






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