第856話 うっわぁ〜

「ちなみに、天罰は何になさったんですか?」

下痢とか悪夢とか色々とバリエーションはある筈だが、碧を騙して土地神を排除するのに利用しようとしたのだ。


碧個人を狙って依頼を出させた訳では無いかも知れないが、白龍さまとしてはガッツリ厳しい罰を下すと思われる。


『これから死ぬまで、誰からの問いも全て必ずその場で真摯に真実を答える様にした。

嘘から出た悪事なのじゃ。

丁度良い償いになろう』

白龍さまがご機嫌そうに言った。


「え、『真摯に』って黙り込んだり、わざと誤解するような嘘では無いけど真相じゃないよね〜みたいな答えも駄目って事ですか?」

よくある、『教会の方から来ました』系の詐欺師が使う様な話法も駄目だったり?


『勿論じゃ。

知らぬ事は知らぬとしか言えぬが、推測でもいいから教えよと聞かれれば黙る事も出来ぬぞ』

白龍さまが得意げに尻尾を振りながら答えてくれた。


うっわぁ〜。

政治家の後継ぎとして終わってるじゃん。

と言うか、政治家じゃなくてもこれからの人生、かなり難しくなりそうだね〜。

まあ、世の中には誠実で嘘をつかない人だっているのだ。

そう言う生き方を目指せば大丈夫かも?


とは言え、結婚生活は諦めた方が良いかもね。

夫婦の間では、場合によっては白い嘘も必要だ。

買い物に行って『どっちが似合うと思う?』と聞かれた時に『どっちも似合わない』と答えたら、ぶん殴られても誰からも同情して貰えない。


買い物なら最初から同行しないと言う選択肢もあるけど、一緒に暮らすとなると会話をせざるを得ないし、その際に常にいつでも思っていることを正直に答えていたら人間関係を維持するのは難しいだろう。


沈黙すら出来ないのは致命的だね〜。

ざまぁ。


「それは素晴らしく相応しい天罰ですね!!」

碧がニッカリと笑って徐に携帯を取り出した。


「もしもし、佐藤さん?

実は耳寄りな話を聞いたんですけど。

ええ、あの治水工事の名目で国費を使って不良債権化した土地を買わせようとしている政治家の話。

実はあの件の関係者が、何を考えたのか今まであの地域を守っていた土地神を悪霊だって嘘をついて退魔師にお祓いさせようとしたそうなんですよ〜。

で、それがバレて天罰が下ったらしく。

何と、結果として秘書をやっている安田氏の息子が今後一切嘘をつけず、誤解を招く様な言い方も、質問を無視する事も出来なくなったらしいんですよ!!

政治家がガッツリ関与している事件の渦中の人が、嘘もつけない上にダンマリも出来ないなんて、まるで天からの贈り物ですよね!」


携帯電話の向こう側から何やら歓声めいた音が聞こえてきた。

が、喜んでいる暇はないと思ったのか、慌ただしい礼を述べたら直ぐさま電話が切れた。


はははは〜。

配偶者に罪のない白い嘘をつけないのでも痛いが、週刊誌の記者に正直に真実しか答えられないなんて・・・その息子が記者に捕まったら凄い事になりそう。

しかも、別に今回協力してくれてる記者だけじゃ無くって、記事が出版されて他の新聞記者とかテレビ局とかに質問されても黙れないし嘘をつけないのだ。

もしかしたら物凄い暴露情報がお茶の間ニュースで流れる可能性もあるね。


その記事が原因で政敵にでも国会とかの審議会にその息子が呼び出されたら、場合によっては全国にテレビ放送されている場で色々明らかにされるかも??


流石にそこまで行く前に息子を面会も出来ない程の重篤な病気だとでもして父親が病院に放り込んで入院させる可能性が高いけど。


息子の問題に父親が気付くまでにどの位の情報が流出するか、楽しみだ。


「ついでに今回のことに関する罰として、関係者一同が十分罰せられるまでその息子が健康でいる様に出来ませんか?」

白龍さまに聞いてみる。


誰にも嘘がつけないとなったら、看護婦とか病院の清掃員とかにでも質問されたら正直に答えてしまうのだ。

薬漬けにして昏睡状態にするとか、殺すとかする可能性もゼロでは無い。

と言うか、政治家による不祥事の際に高確率で起きる秘書の『自殺』が起きるかもだし。


通常だったら跡取り息子を殺したりしないだろうけど、嘘をつけない様じゃあ跡取りとしてもう役立たずだし、今まで秘書として父親の悪事にも色々と関与してきたんだったら漏らされたら不味い情報も色々と知っていそうだ。

自分にも被害が及ぶとなれば、父親がそのうち損切りを決めてもおかしくない。


海外に逃すとかだったらどうしようも無いが、殺されるのは回避した方が面白いし、こっちの精神的負担にもならないで済む。


『そうじゃの。

殺せず、毒も効かぬようにしておこう』

白龍さまが頷いた。


ふっふっふ。

暫くニュース番組をしっかり見ておこっと。



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