第854話 次の一手
「さて。
土地神の排除なんて言うとんでもない依頼をこっちに押し付けてきたのは調査員が悪いのか、誰か職員が買収されたのかを退魔協会に確認するのと、週刊誌に政治家の親族関係の怪しい収用目当てらしき治水工事の話を売り込むのと、どっちを優先するべきかな?」
横田氏と別れて帰宅する為の電車をプラットフォームで待ちながら碧が首を傾げて聞いてきた。
一応横田氏から、もっと
退魔協会の方には依頼を完了してない理由を連絡しなくちゃならないけど、そこは横田氏に待ってくれと言われたって事で口裏合わせはしてあるので良い。
とは言え、横田氏の情報収集が終わったら出来るだけ早く手を打たないと他の工事の手配とかが進んじゃったら無駄にキャンセル料が発生しちゃったり、他の人に迷惑が掛かったりしかねない。
「こう、白龍さまが退魔協会に天罰を下すプロセスで、誰が袖の下を払ったかとか分からないですかね?
天罰ってスケールが小さければ直ぐには天罰だとは分からないですよね?
先に関係者をダウンさせつつ情報を抜き取れれば、両方同時進行的に出来ないかな?」
退魔協会に確認しようとした際に政治家の方へ情報が流れて何らかの手を打たれたら面倒だけど、週刊誌に話を流すにしてもどうせ印刷にかかるタイムラグとかを考えると待つのも微妙だろう。
『碧への理の繋がりで天罰を下せば悪意がある人間は分かるが・・・単なる無能ならば天罰の対象にはならぬ事もあるし、『何故』を知らぬままに金だけで買収された場合も結局理由は分からぬままじゃぞ?』
白龍さまが現れて教えてくれた。
そっかぁ。
もしかして、政治家が退魔協会を騙せると思って何も説明せずに嘘を言って依頼を出し、調査員が単に霊力の有無だけ調べる様なバカだった可能性もゼロでは無いのか。
「ちなみに、今回の依頼に関与した人間が単に無能なだけだった場合ってどう言うケースだったら天罰が落ちますか?」
無能も罪だけど、天罰でそれを見分け出来るの?
『土地神を悪霊扱いする依頼なんぞ、どこかに悪意が無ければ出る訳がない。
悪意がある人間には天罰が下る。
ダメだろうと言う事実を知っていて何もしなかった人間にも下る。が、本当に何も考えていない人間だった場合は何らかの理由で過去に儂から警告でも受けて居ない限り今回は警告止まりじゃの』
白龍さまが答えた。
そっかぁ。
考え足らずな無能は一回パスを貰えて警告だけなのか。
警告したら今回の依頼に関して問題があるとこちらが見做していることがバレるな〜。
まあ、考えてみたら政治家には絶対に悪意に近い欲があったんだから、天罰はどちらにせよ下るか。
「よし、天罰を下して貰って政治家が動けない様にして、その間に父親にでも丁度いい週刊誌の伝手を教えてもらおう」
碧が携帯を取り出しながら言った。
「あれ、碧のお父さんってそんな所にも伝手があるの?」
幾ら由緒正しい神社で広い人脈があると言っても、マスコミは畑違いな気がするけど。
「神を恐れぬ愚行をやろうとする様な政治家や企業を止めようと思ったら、弁護士を雇って法に基づく正義を主張するよりも世論を煽る方が早い場合も多いからね。
そう言うのは一族の誰かがずっと担当してきたんだけど、親世代では父親が一番マスコミの連中と効率的に付き合う相性が良かったんだって」
肩を竦めながら碧が言った。
まあ、マスコミを使うとなったらそれなりに清濁を合わせ飲む度量プラス脅しも必要に応じて使う怖さが必要だろうから、誠実とか正直とか真面目なだけじゃあダメだよね。
・・・そう考えると碧ママなんかも向いてそうな気もするけど、女性は変な風に絡まれる可能性があるから碧パパがやっていたのかな?
碧の世代は誰がやるんだろ?
まあ、ある意味白龍さまと言う無敵な脅しがある碧がやるのが一番効率が良いかもだけど、次の世代が真似できなくなるから、できれば誰か一族の誰かがやった方が良さげ?
彼もそれなりに腹黒さは持ち合わせてそうだけど。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます