そろそろ・・・な時期?
第847話 進路と質問
「お久しぶり〜」
呪詛返し消去の依頼の話が来ないままに4月になって新学期が始まり、履修する授業を決める為に幾つか興味がある教授のクラスに出席してみようと大学に来たら、1年の時の英語のクラスで一緒になったクラスメートとばったり会った。
名前なんだったっけ?
去年は殆ど会わなかったから名前を呼ばなかったんだよなぁ。
「お久しぶり!
もう履修する授業は決めた?」
名前を思い出そうと記憶の中を探しながら応じる。
い・・・なんとか。そうだ、伊東だ。
藤じゃなくて東が付くイトウなのだと自己紹介の時にかなり力を込めて主張していたのが記憶に残った相手だった。
「まだ〜。
インターンシップとかに差し支えない様に出席に関してあまり煩くない先生じゃないと困りそうじゃない?
だからまだ情報収集中。
サボりには煩くてもインターンシップだと言えば許してくれる先生もいるらしいから、ここ数年で色々と変わっていて情報収集がギリギリなのよねぇ」
伊東さんが言った。
サボりかインターンシップかどうかなんて、どうやって教える側は確認するんだろ?
と言うか、大学って学ぶために親が大金を払って通っているんだから、バイトにも劣る様な数日程度のインターンシップなんぞに現を抜かすよりは教える内容に興味がある授業を優先すべきだと思うけどねぇ。
まあ、奨学金を貰っているなら自分の借金だから学ぶことよりも将来収入を重視して、より良い就職へ繋がりそうなインターンシップを優先するのもありだろうけど。
と言うか、親だって子供を大学に入れるのって学ぶためと言うよりは将来いい仕事を見つけてそこで有利に昇進していく為と言うのが主目的だろうから、考えてみたらインターンシップを優先しても文句は言わないかな?
なんとも言えず本末転倒な気がしないでも無いけど。
もっとも、大学で習った内容が面白くても本当に将来の役に立つかと聞かれたら微妙なとこだけどね〜。
私なんか特に、確実に大学で学ぶ内容と退魔師としての収入は関係ないだろうし。
「そっかぁ。
でもさぁ、インターンシップであちこち行きまくっても、それで授業を蔑ろにしたら面接の時なんかにそれが滲み出てマイナスな評価にならない?」
まあ、大学の授業をどのくらい真面目に受けていたかなんて就職の面接で聞かれる事はあまり無さそうな気もするが。
「う〜ん、まあそこら辺は色々調べて兼ね合いを工夫しなくちゃね!
長谷川さんはどの業界を狙うの?
インターンシップの情報は色々と集めているから何だったら聞いてね!」
伊東さんが元気に言ってきた。
就職ってある意味、ライバルを蹴落とす競争だ。あまりいい情報を皆にばら撒いていたら馬鹿を見ることになるかもよ?
まあ、親切っぽい顔をして他者を蹴り落とす為に共有する情報を調整している可能性もあるけど。
「う〜ん、知り合いと起業しないかって誘われているから、今は起業関連のセミナーとかの方が興味があるかなぁ」
起業そのものは実は既にしてあるんだけどね。
とは言え、売り上げアップの為のアイディアとか節税対策とか、色々起業関連の情報はあっても損じゃあないだろう。
「へぇぇ。
在学中に起業って言うのも今は流行よねぇ。
でも、上手くいかなかった場合も考えて就職活動の方も少しはしておく方がいいんじゃない?
インターンシップで他の会社の内部を見て色々学んでいくのも為になると思うし」
親切そうに伊東さんが言った。
でも。
微妙に嫉妬の濁りがオーラに滲み出た感じがした。
ほんの一瞬だったけど。
「そうだねぇ。
まだ将来の夢を話し合っている様な段階だから、インターンシップとかもちょっと経験してみるべきかもね。
とは言え、まず最優先すべきは履修登録だけど」
「だね〜。
じゃあ、私の教室はあっちだから!」
バイバイと手を振って左の方に向かった伊東さんと別れ、私が出席するつもりだったクラスの方へ向かう。
う〜ん、大学2年までは就職なんて先の話だから何をしていても特に突っ込みも無かったが、3年になるといい会社のインターンシップに受け入れられたかとか、どの業界を狙うのかとか言った話題の比重が大きくなりそうだなぁ。
起業すると言っても説明しにくい業務内容だし、インターンシップは興味がないと言ったら親切がましく色々と助言されそうな気もするし、3年の間はオンライン授業を増やすかなぁ。
4年の夏ぐらいになって皆が内定をもらった頃になれば落ち着くんだろうけど。
もしくは既に大学院とか司法試験とかの進路を決めていて、他者の進路にあまり興味がない連中との付き合いの比重を増やすか。
就職に関して不確実性が高い蓮中ほど不安解消も兼ねて色々と聞きたがるだろうし、ある意味自分の常識とずれた答えに対して批判的になりそうだしなぁ。
退魔師の事を言わないとなると、現時点で将来に関して話し合う様な親しい付き合いはし難い。
ちょっとこれから暫くは大学での人間関係が微妙になりそうだ。
気軽な大学の友人付き合い程度で、わざわざ意識誘導を使ってこちらに質問しない様に仕向けるのもどうかと言う気がするからなぁ。
ううむ。
微妙だ。
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