第843話 『あなたは呪われています』を信じるか
『あれって、「呪われているから神社に行ってお祓いをすると楽になりますよ」って教えてあげれば良いかな?』
考えてみたら、別に私らが呪詛返しをしなくても、神社でお祓いをして貰えば大抵の呪詛は返せるだろう。
『確かにね。
でも、神社に行けって説得できるか微妙な気も?』
碧が指摘する。
う〜ん、確かに私たちは親切心から神社に行けって教えてあげてるんだけど、本人にしてみたら心無い揶揄いだと思うかも。
日本人って極端に太った人が少ないせいか、太った人に対して虐めっぽい揶揄いとかやりそうだし。
『取り敢えず、彼女の時間が終わるのを外で待って、捕まえて説得するか。
意識誘導を使えば少なくとも一回は神社に行くのを試す方向に説得できると思うし』
私たちの30分後に入ってきたっぽいから、ビュッフェ時間も私らの30分後に終わって出てくるだろう。
お腹いっぱいだったら気分も良くなっていて話を前向きに聞く気持ちになっているかもだし。
『でも、万が一呪詛の転嫁が掛けられていたらとばっちりな転嫁先の被害者が可哀想だし、神社のお祓いで返せるかもハッキリしないから、一度凛が返してあげて、以後は同じ様な感覚があったら神社に行ってお祓いをする様にって言った方が良いんじゃないかな?
意識誘導でも私たちを詐欺師だと思うぐらい強く疑うんだったらちゃんと退魔協会経由で依頼する様に言って、そこまで疑わないなら神社のお祓い料金で今回だけ特別って事でやってあげたら?』
碧が提案してきた。
まあ、体重に悩む女性の一人として、呪いで太った哀れな同胞を助けるためだと思えば一回ぐらい無料なり割安料金なりでやってあげても良いんだけどね。
でも。
『退魔協会に依頼したら高くつくよ〜って話はしておく方が良いだろうけどね。
住んでいる地域か勤務先を聞いたらちゃんとしたお祓いのできる神社を教えてあげられる?』
いくら退魔協会の依頼よりは安いとは言え、何回もハズレに当たって繰り返しお祓いするよりは1回で当たりを引く方が良いだろう。
『そうだね。
分からなかったら黒崎さん辺りに聞けば教えてくれると思うし』
よし。
そんじゃあ、時間まではガッツリ美味しい料理を食べよう!
◆◆◆◆
「ちょっとお時間を頂けますか?」
ビュッフェを終わり、心行くまでガッツリ美味しい料理とスイーツを食べた私たちはブラブラとホテルの庭を歩き回って腹ごなしな軽い運動をしつつ女性が出てくるのを待った。
碧に消化促進の術を掛けてもらいつつふらふらと歩いていたら、良い感じに食べたケーキとかが消化されてきた感じ。
やっぱ、ちゃんと服装から準備しておくと食べ放題も良い感じにガッツリ入るね。
前回スイーツビュッフェの時はそこまで下準備しなかったせいで、体重はまだしも食後の苦しさとかどれだけ入るかとかはイマイチだった。
もっとも、前回は途中で発火騒ぎが起きたから思う存分は食べられなったって言うのもあったけど。
後でお詫びにもう一度行けたものの、やっぱノリというか勢いというか、美味しくても仕切り直しって気分的に違うんだよねぇ。
まあ、それはともかく。
隠密型クルミを付けて見張らせておいた女性が出てきたところで、声を掛けた。
超常の力を証明する為にガッツリと強い意識誘導でも掛けて本人の記憶に残らないうちに何処かへ連れ出すぐらいの事をするかね〜とも碧と話し合ったんだけど、変に警戒心を煽る様な事をしない方が無難だろうし、親切で助けてあげているだけなのにそこまで捨て身にならなくても良いかという事で、普通に声を掛ける事にした。
「はい?」
ちょっと警戒した様な感じで女性は振り返る。
考えてみたら、私も街中で赤の他人に突然声を掛けられたら基本的に変な宗教か押し売りの勧誘かと思って警戒する。
少なくとも完全無視だけはしない様に、多少だけ警戒心を弱める意識誘導の術は掛けさせて貰ったけど。
「私たち、退魔師協会の人間なんですが貴女に呪いが掛かっている様だったので声を掛けさせて貰いました。
ちょっとそこのベンチで話をしませんか?」
カラオケの個室でも入った方がプライバシーはあるが、改めて考えてみたら赤の他人と個室に入るなんて嫌だろうという事で、ちょっと人通りからは離れていて普通に話せば声が聞こえないけど、視界には入っている程度の場所にあるベンチを示しながら誘った。
善意で声を掛けているんだけど、警戒心を和らげるのって面倒だわ〜。
まあ、世の中色んな人が居るからしょうがないんだけど。
「呪い??」
あからさまに『はぁあ?』と言う顔をして聞き返された。
だよねぇ。
どうすっかな。
考えてみたら、一度はちゃんと返された状態を知る為に私が返した方が良いって話だったけど、呪いっていうのを信じてない相手に突然声を掛けて、呪いを返してあげるから金を出せって言うのって怪しすぎるかも。
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