女の敵
第840話 ブッフェ再び
「あの呪師未満な男、結局呪詛返しが多すぎて昏睡状態になって入院したんだって〜」
いつものウォーキングとクレープ購入から帰ってきたら、碧が先日の事件に関して教えてくれた。
「へぇぇ、昏睡状態ねぇ。
考えてみたらこっちだと呪詛返しの昏睡状態って復活することあるの?」
前世だったら原因が何であれ昏睡状態になったら水分補給も食事も取れないのだから数日で死ぬ事になったのだが、日本だったら点滴とか胃瘻とかで延命は出来る。
そうなると死ななければいつかは復活しそう?
呪師なんぞを延命する意味があるかは不明だが。
「呪師だって分かっていて呪詛返しが疑われる場合は因果応報って事で延命措置は取らない決まりらしいから、もう目覚めないんじゃない?
と言うか、呪詛返しってそれこそ私らみたいのが清めない限り勝手に治らないよね?」
碧がちょっと首を傾げながら聞き返した。
へぇぇ。
呪師だって分かっていると呪詛返しの時は延命措置しないんだ。
まあ、死んだり昏睡状態になったりする様な呪詛返しが来るような呪詛を掛けていたら、どうせ体調復帰後に裁判で死罪判決を受けるだろうしね。
延命措置する意味がないか。
「呪詛返しは掛けた呪詛がどんなタイプかにもよるねぇ。
体の一部を捧げて何かを相手から奪うタイプの恒久的な呪詛だったら呪詛返しも戻らないけど、魔力や生命力を捧げるだけの不調を起こす様なタイプはある程度の期間を生き延びれば治る、筈?
まあ、治る前に死んじゃうんだったらそれまでだけど」
呪詛による不調ってある程度以上に強度が高いと意識不明になるんだよねぇ。
呪詛返しはその傾向が特に強いと聞いた気がする。
前世では呪詛を掛けられるだけの生体
「一件ごとの呪詛はそれこそ店のシャッターにペンキで落書きする程度な嫌がらせに近いけど、マジで塵が積もって山になる程やってたからねぇ。
みみっちいのを大量にやって意識不明になる程の場合にどうなるのか微妙に不明だけど、このまま昏睡状態から衰弱死が一番無難そう」
碧が肩を竦めて言った。
「確かにねぇ。
今は腕が悪いけど、練習していけばそのうち腕が上がるだろうし、あれだけ無闇矢鱈と呪詛を掛けまくるタイプだったら練習や試行錯誤も熱心にやりそうだし、危険だよね」
あそこまで憎しみというか僻み根性と言うかに溢れていたら、下手に魔力を封じて投獄なんぞされたら自分か他者の命を使う呪詛に早い段階で辿り着きそうだ。
「練習熱心と言うか実践タイプと言うか。
あんな人が居るんだね。
ああ言うのって呪詛を学ばなかったらそれこそ会社で嫌がらせをしまくったり、意味もなく誰かに粘着して変な中傷を繰り返すタイプになりそう。
まあ、それはさておき。
外はどんな感じだった?
大分と暖かくなってきたよね?」
呪師の事をポイっと投げ捨てる様なジェスチャーをしつつ碧が聞いてきた。
「やたらと風が強くて、クレープを外で食べてたら埃まみれになりそうな気がしたわ〜。
だから外で買うのは暫く諦めようと思った。
・・・今度またスイーツの食べ放題ブッフェに行かない?」
一円相当とは言えポイントが貯まるのが良いインセンティブになっているのか、新しい携帯とスマートウォッチを買ってもう4ヶ月近くになるがまだ毎日のウォーキングが続いている。
流石に雨の日はやってないけど。
だから食べ放題で甘い物を食べても良いと思うんだよね。
どちらにせよ碧がいれば安心なカロリーカット付きだし。
「良いね!
ここんとこ行ってなかったもんね。
でも、クレープに関しては持って帰ってきて食べたら良いんじゃないの?
それ程遠くは無いよね?」
碧が言った。
由緒正しい神社のお嬢様なせいか、道で食べ歩きするって言うのは碧の生活スタイルには無いんだよねぇ。
私の場合は前世で屋台で買った串焼きとかガレットっぽいのとかを食べながら歩くことも良くあったから抵抗感は無いんだけど。
まあ、日本で食べながら歩いていると周囲から注目を集めている気がするから、急がなくていい食材の場合はあまりしないんだけどね。
「クレープはあの皮のパリッとした食感も魅力の一つだから、持って帰るとちょっとへにょっとしちゃってダメなんだよねぇ。
だからクレープも食べられるスイーツブッフェがあったらそういうのはに行きたい!」
やっと指がかじかむほどの寒さが緩んだのは良いのだが、春先はどうも強風な日が多くて折角クレープ屋のキッチンカーが来てても微妙に食べ辛いんだよねぇ。
ブッフェでクレープを焼いてくれるところってあるのかな?
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