第838話 考え足らず過ぎる!
『もう少し北へ広げた方が良いじゃろう』
結界の範囲を指定する為にハネナガに私の魔力を込めた鹿角のピンバッチを運んで貰っていたら、白龍さまが指示してきた。
おや?
呪詛を受けた人が居る範囲が分かるのかな?
あまりそう言う細かい事を感知するのは得意じゃないと思っていたんだけど、呪詛って幻獣に取っても不快らしいから何か視えるのかも。
『ハネナガ、もう200m北へお願い』
取り敢えずハネナガに指示を出す。
この鹿角ピンバッチはクルミの分体用に買って持っていたんだけど、こう言う結界の範囲指定にも使える。
込めておいた魔力を結界の補助に使えるから便利なんだけど、結界が消えるまで回収出来ない。川越まで取りに来る気は無いから、破棄としたら今回はちょっと赤字かなぁ。
元々、解呪付き添いに関しても割安で受けたからねぇ。
結界と清めに関しては口裏合わせをするだけで報酬は求めないだろうし。
ピンバッチ代と魔力でより良い来世を得る為のカルマ値を買ったと考えるしかないよね。
来世の条件がこれで良くなるなら、最終的にはペイするだろう。
と言うか。
カルマ値が良い事がどう転生で作用するのか、微妙に不明だけど。
悪いとゴブリンとかになるんだろうと言うのは想像できるが、良いと言っても同じ人間に生まれるんだったら上限値がありそうな気がする。
才能や生まれる環境が良くなるのかね?
とは言っても、金持ちの家に生まれるとか黒魔術の天才として生まれる事が幸せに繋がるかは微妙だからなぁ。
はっきり言って、魔術師時代の社会では下手に貴族に生まれるよりはそこそこ裕福な商家にでも生まれた方が安全な可能性は高かった。
下手に貴族の女に生まれると
・・・遅れたと言うか身分制度のきつい文明に生まれるなら男に生まれる方が有利なんだけど、これってカルマ値次第で希望が通ったりするのかね?
カルマ値が低いと女に生まれるなんて言うつもりはないが、女で黒魔術師に生まれるだけでほぼ確実に隷属を強制される社会だったら、どれだけ生まれた時のその他の条件が良くても意味がないからなぁ。
まあ、カルマ値が良かったら女性の黒魔術師でも普通に好きな様に暮らせる社会で生まれる事が出来るのかもだけど。
寒村時代って頑張って生きたけどそこまでカルマ値を上げる様な事をした記憶もないから、比較的恵まれた今世の生まれが偶然なのか比較的良かった(多分?)カルマ値のお陰なのか、分からない。
それはさておき。
『ここで良いか?』
カルマ値と来世の親ガチャとか素質とかの関係を考えている間にハネナガが指定された位置に着いたのか、念話が入ってきた。
『良いんじゃない?
次は西に400mほどでお願い』
白龍さまが何も言わなかったので、適当に街の中心部にある店の範囲をカバーしそうな距離を指定してお願いする。
足りなかったら白龍さまが言ってくれるでしょう。
多分。
と言うか、どうせ手を貸してくれるんだったら白龍さまがピシャっとあの呪師に天罰を下してくれる方が楽な気がするけど、出来る限りは人間がやるべしって考えなんだろうね。
あまり天罰に頼りすぎるのも確かに良くないだろうし。
ヤバそうな呪詛関連な犯罪には、碧を巻き込めば白龍さまが天罰を下してくれると当局側に思われたりしたら面倒だ。
今回の事に関しても、変な噂が立たない様に田端氏に釘を刺しておく方が良いかもなぁ。
しっかし。
師匠役が全てを教え込む前に消えたせいにしても、あの呪師はバカ過ぎるよねぇ。
呪詛って言うのは返されたら倍になって戻ってくるのだ。
だから呪師は金で呪詛を請け負う場合は出来るだけ自分ではなく依頼人が呪詛を放つ形にして、自分が放った呪詛が全て返ってきても死なない程度に仕事の量も可能な限り管理する。
前世で話を聞いた呪師はそう言っていたし、今世だって今まで知った一人前な呪師はそれなりに注意を払って呪詛の管理をしているっぽかった。
単なる八つ当たりで金にもならない呪詛を掛けまくるなんて、アホ過ぎる。
呪詛の一つ一つは微々たるものだし多少の不調を引き起こす程度のレベルだが、それをこれだけばら撒いているのだ。
既に現時点で気分は最低だろうし、範囲指定して一気に清めて呪詛を返したら体と精神が耐えられない可能性も高いんじゃないかな。
自分が死ぬ程の大量な呪詛を八つ当たりでばら撒くって・・・あり得ないでしょう。
あの呪師の師匠は呪詛返しに関して全然注意喚起しなかったのかね?
対象を指定しないで掛けられる接触型呪詛なんて言うほぼ使い道がない呪詛のやり方を教えるより先に、もっと基本的な事を教え込むべきだっただろうに。
それとも・・・自分がしっかり一人前と認める前に勝手に出ていった弟子が自滅する様に仕掛けた罠なのかね?
まあ、取り敢えず。
呪詛を返した結果はどうなろうと、因果応報だよね。
私たちは呪詛を掛けられた人たちを救済しているだけなんだ。
さっさと済ませてしまおう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます