第833話 近所のおばちゃんと身ばれリスク

田端氏が門の側で車を停めたら、道の少し先の方で停まっていた車から2人程男性が降りてきた。

先に来て見張っていたのかな?

こんな住宅地じゃあ車を停めて何人も中に人が居たら近所の暇なおばさんに観察されまくりそう。


現時点だったら暇なおばさんが近所の知り合いと立ち話する際に噂される程度で済むかもだが、今の若い世代がおばちゃんな年齢になった頃には怪しげな車とか立ち止まって家や人をじっと見つめている人とかってどんどんSNSとかにアップされて暴かれちゃいそうだなぁ。


まあ、暴かれても逮捕される対象が近所のおばちゃんのSNSを見てなければ問題ないだろうけど。


でもネット情報を集めるのが上手い犯罪者なんかだったら、GPSとかうっかり溢れた個人情報とかを元に近所のおばちゃん達を特定してその人達のSNSの情報を集めるプログラムでも組んでおいて、そっちに怪しげな人影情報があったらアラートが自分の携帯にでも来る様にしそう。


もっとも、今の若い世代がおばちゃんになる頃にはアラートが送られる先は携帯ではなくもっと最新式な機具になってそうだけど。

メガネ型のVR機とか、首か手首にでも埋め込むチップとか?

メガネ型はまだしも埋め込み式チップはちょっと嫌かな。

既に現時点でアメリカのナイトクラブとかでは埋め込み型チップで会計をする店もあるらしいけど。

まあ、支払いだけだったら良いかな。

ネットに自分がアクセスして情報を見れる様にするとなると、ハッキングされたら個人情報が身体情報も含めてダダ漏れになりそうで怖い。


確か、アメリカの某大手電気自動車メーカーの持ち主は脳に直接埋め込むインプラントを研究している会社も持っていて、それが近いうちに初めて人間の被験者相手にインプラントをするってどっかで見た気がする。


現状では脳にチップを埋め込むなんて事故か病気で体に支障がある人用だろうけど、今の若い世代がおばちゃんになる頃には最新式の携帯として存在する可能性もあるかも?


そうなった時にインプラントがウィルスに侵されたりしたらどうなるのか、怖いねぇ。

ある意味、新しい呪詛の形になりそうだけど・・・私がそれに対処できるかはちょっと疑問かも。


そんな事を考えたら、いつの間にか後からも男女が二人近づいてきていた。

「被疑者は家の中にいる様です」


「家の裏から何処かに逃げられそうか?」

田端氏が尋ねる。


「太田が裏で待機していますので、大丈夫かと」


そう言えば、刑事ドラマとかでは意外とあっさり犯人が家の裏から逃げるよね。

一人裏に待機させるだけで大丈夫なのかね?

呪師だったら相手を動けなくする呪符を持っている可能性もありそうだけど。


『ハネナガ』

脳裏で魔力を召喚陣にこめて、鴉霊の使い魔を喚ぶ。


『どうした?』

ハネナガが目の前に現れる。


『この家から呪師が飛び出してきて逃げたら、見失わない様に追跡しておいてくれる?』

ここで容疑者(被疑者とどう違うんだろ?)に逃げられたら私達の拘束時間が長くなるからごめんだ。


『了解』

ハネナガがふわりと宙を舞い、側の木の上の方へ消えていった。


警官だってプロだし、一人で裏を見張る作業を任された人はそれなりに戦闘力があるんだろうけど、一応ね。

備えあれば憂いなしって言うし。

意外と移動時間は掛からなかったけど、川越までまた来るのは面倒だ。


「では、行きます。

被疑者を我々が拘束するまではこちらで待っていて下さい」

田端氏が私たちに声を掛けて、家の方へ向かった。


「車の中で待っているべきかな?」

碧が窓から家の方を覗き込みながら言う。


「下手に警察と一緒に居るところを携帯とかで録画されてネットにアップされたら困るけど・・・帽子か何か、持ってきてる?」

外に出ておいてもしも呪師が走って来たら足を引っ掛ける振りをして昏倒させたいから、外で待機している方が良さそうだけど、帽子は持ってないんだよなぁ。

マスクをして、マフラーを広げてほっかむりにしたら顔が一部隠れるかな?


車に乗った時に暑かったので外したマフラーを広げて頭に被ったら、碧がぶふっと吹き出した。


「こっちの帽子を貸そうか?」

自分の帽子を私に差し出しながら碧が言った。


「スペアの帽子がないなら悪いよ」


「大丈夫。

私はマスクとサングラスで誤魔化すから」

カバンの中からサングラスを取り出しながら碧が言った。


マスクに帽子、マスクにサングラスの二人組って・・・ちょっと怪しげ?


願わくは、誰にも目撃されない事を期待しよう。

全国ニュースにこの格好が流れたりしたらちょっと絶望しちゃうぞ。








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