第832話 支払いの追跡は

川越駅に着き、田端氏の指示通りに道を渡ってコンビニの駐車場に行ったら、停まっていた車の一つから田端氏が出てきた。助手席にエコバッグが置いてあるので一応店で買い物はしたらしい。


パトカーじゃ無くって普通の車なんだね〜。

まあ、捜査・逮捕しに行くのにパトカーで行ったら家の前に停まった瞬間に逃げられる可能性があるよね。


これって普通の車なのか、それとも覆面パトカーってやつなのか、どっちだろ?

と言うか、ドラマなんかだと犯人逃亡の連絡が無線か何かで入って、運転席からペタっと赤色灯を外の天井に貼り付けてサイレンを鳴らしてぶっ飛ばすイメージだけど、考えてみたら赤色灯はまだしもサイレンは最初から車体の外側の何処かに付いてなきゃダメだから、普通の車じゃあ無いか。


ハイスピードなカーチェイスをしても赤色灯が吹っ飛んでいかない為には車体に貼り付ける磁石がかなり強力じゃなきゃいけないだろうけど、そうだとしたら外す時に大変じゃ無いのかな?


しかも、考えてみたら強力な磁石だったら携帯とか車内の精密機器とかを壊しちゃいそう。


そう考えるとペタっと貼りつける赤色灯には何か仕組みがあって、スイッチを押したら回転しながら光るのと共に電磁石的に強力な磁力が発揮されるとかなのかな?


思わず車に乗りながら運転席や助手席の方を観察してしまったが、タクシーの料金メーターに似た感じな機器があるだけで赤色灯は目につく場所には無かった。


警察が使う車って普通そうなのも全部覆面パトカーなのかな?

なんかこう、ちょっと高くつきそうな気がしないでも無いが。


まあ、どうでも良いって言えば良い事なんだけど。


「今日はご協力ありがとうございます」

田端氏がペコリと頭を下げながら言った。


「いえ、呪師はさっさと取り締まっちゃうに限りますからね。

ちなみに、大江さん以外にも呪詛の依頼をした人が居たか、分かりましたか?」

シートベルトを締めながら尋ねる。


交通事故の場合は後ろの座席もシートベルトを締めとかなきゃ危険だって言うのは分かるけど、マジで面倒。

やばいぐらい飛ばし始めたらって締めるって事にしてくれればいいのに。


まあ、それこそ突然危険運転車とかを見つけてカーチェイスを始めちゃったらシートベルトの事なんて忘れるかもだが。

でも考えてみたらうちらを連れて呪師を逮捕しに行く途中だったら余程のことがない限りカーチェイスを始めるとは思えない。

と言うか、田端氏に埼玉県でカーチェイスする権限があるんかね?

相手が呪師だったら何かこう、退魔協会へ派遣になった際に特別な権限を全国的に与えられていそうだけど、普通の一般車両の危険運転とかは権限外じゃないかね?

それこそ、目の前で銀行強盗が行われていても他の県の警官だったら権限が無いとか言いそうなぐらい日本の警察ってお役所ちっくで頭が固い印象があるんだが。


まあ、人を拘束して逮捕する権限があまり緩く使えちゃあヤバいしね。

警官でもDV野郎とかエスカレーターを上がる人のスカートの中をカメラで盗撮する様な変態も時折いるらしいんだから、全国どこでも警官の権限を行使できるんじゃあ一般市民としてはちょっと嫌だ。


まともな人の方が圧倒的に多いんだろうけどね。

とは言え。

悪霊とか呪詛とか退魔師関連とかがメインな仕事になっているであろう田端氏のカーチェイス技能が錆びついていないかはちょっと心配だから、権限があろうとカーチェイスはしないで欲しい。


もしかして、今日捕まえる予定の呪師が逃げたらその人を追っかけてカーチェイスする羽目になる可能性はあるかな??

・・・もしも呪師が逃げそうになったら、足を引っ掛けた振りをして昏倒させよう。


「残念ながらアマ◯ン社のギフトカードをコンビニで買って渡しただけなので、履歴を追うことが出来ず、他にも依頼主が居たかは呪師側の記録を調べないと分かりませんが・・・掲示板の書き込みを見る限り、何人かは使った可能性が高いでしょう」

車を発車させながら田端氏が教えてくれた。


最近は仮想通貨とかEC関係のオンラインで使えるギフト券とか、色々と支払い方法があるからなぁ。

考えてみたら、支払いアプリで電話番号さえ分かればその場で払い込めるアプリなんかはどうなんだろ?

資金決済アプリの方がギフトカードよりもしっかり履歴管理とかはしてそうかな?


ギフトカードってコンビニで買おうとすると現金でしか買わせてくれないけど、あれって考えてみたら購入履歴とかがほぼ追跡不可能になる訳だよね?

そう考えると一番危険なのってギフトカードかも。

まあ、ギフトカードは5万円程度しか買えないから、何百万円とかの詐欺だったら使い捨てに買い取った銀行口座とか仮想通貨とかを使わざるを得ないんだろうけど。


・・・そう考えると、ギフトカードで払えちゃった大江さんの呪詛ってめっちゃ割安だった??

そんな事を考えている間に車がちょっと街の外れの方に進み、ボロっちい一軒家の前で停まった。

アパートじゃなくて一軒家なんだ?

ちょっと意外。











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