第831話 『善行=プラスなカルマ値』・・・だよね?

『呪師の逮捕に行くのですが、退魔師に同行して貰って呪われない様に警告してもらうなり随時解呪してもらうなりするのと、後から捜査に加わった人間全員を確認して呪われていた者を解呪して貰うのと、どちらが良いと思いますか?』

大江さんちの件はどうなったかな〜と思いつつ源之助と遊んだり炬燵でお守りを作っていたりしていたら、田端氏から電話があった。


どうやらあの掲示板でそれとなく広告していた呪師の捜査・逮捕に踏み切るらしい。


「お、呪師の所在がはっきりしたんですね。

ちなみに一人だけなんですか?」

碧がスピーカーにした電話に尋ねる。


闇バイトを色々と仲介するダークウェブみたいな感じに、呪師が何人か集まって手が空いているもしくは能力が相応な呪師が呪詛を請け負う様なサイトの可能性もあるかも?って碧と話していたんだよね〜。


『今回大江榛名が利用した際には相手は若い男が一人だったそうです。

その掲示板の履歴を調べた際もリンク先が書き込まれていた呪詛の請負いを誘うサイトは一つだったので、ここは一人な可能性が高いかと』


なんか、田端氏の口振りだともっとネットで呪詛を請け負っているサイトは多い感じなのかな?

単なる詐欺とか愉快犯的なガセもあるだろうから、警察としては実際に被害があったサイトからしか潰せないのかな?


呪詛って違法行為なんだからガンガンそれにアクセスした人を追跡して検挙すべきだと言う気もするが・・・ある意味、今回の大江さんへの嫌がらせレベルだったら費用対効果的に厳しいのかな。


以前の自殺を誘発させようと悪霊塗れな石碑へ人を誘導するサイトの方がもっと悪質だし、対処が遅れた場合の被害が大きいし不可逆だからなぁ。


そう考えると、限られた警察のリソースで怪しいサイトを全て潰すのは無理か。


「今後に検挙するサイトがどんな風に運営されているかは分からないけど、取り敢えず乗り掛かった船だし、初回は割安で同行して危険対処をしても良いですよ」

碧がこちらを見て小さく首を傾げたし、前もって想定していたラインからも外れていないので予定通り答える。


やっぱ、退魔協会の『呪われた被害者から依頼が無ければ何もしない』スタンスはちょっと頂けないからねぇ。


ボランティアを無制限にやってあげる程のお人好しと思われるつもりはないけど、まあ力ある者の義務・・・とまで言わなくても、善意で割安な公共サービス価格で手伝うくらいは良いだろう。


貴族制度なんてない日本にノブレスオブリージュなんてないし、私たちは貴族(日本なら華族かな?)の末裔でもないし、別に退魔師としての能力がある事で税金的な対価を得ている訳では無いんだから無償で民に尽くさねばならない理由もないんだけど、まあ余裕があるから善意の社会貢献プロボノ活動をある程度はやっても良いでしょうと言う結論になったんだよね。


呪師がお手軽にインターネットでサービスを提供しているのを放置したせいで、自衛できても当然な権力者とか金持ちではなく普通の一般人が呪われるなんて事になったらちょっと可哀想だし、呪詛の事を知っている身としては退魔協会の高い依頼費を払わなきゃ呪詛から解放されない人が続出する状況を看過するよりは、さっさと諸悪の根源をぷぎゃーと潰しちゃいたい。


カルマ値的にもきっと善行にはプラスな効果があると思いたいところだね〜。


『助かります。

では、明日の10時に川越駅でピックアップと言う事で良いですか?』


川越???

ちょっと意外な場所だね。

なんかインターネットを使った悪事なんてもっと遠い地方でやるか、じゃなきゃ都心の古いビルかなんかでやっている様な事を漠然と想像してた。


まあ、考えてみたら一応依頼人に会ってターゲットの髪の毛なり爪なりと言った生体指標マーカーを受け取らなきゃいけないんだから、地方だったら不便か。

・・・考えてみたら。掲示板で不特定多数の人間から依頼を集めるとなると、接触してきた相手が地方の人だったら断るのかね?

それとも、遠方だったらそっちの方に住んでいる呪師を紹介するネットワークでもあるのだろうか。


呪師の意識誘導の術への抵抗力が弱めだったら、ちょっと色々と警察に話して貰っちゃおう。

地方への検挙は付き合いたく無いから、やり方は今回ので覚えて欲しいけど。








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