第824話 証拠固めは重要
「うわぁ・・・」
大江さんの使っているウィークリーマンションは、薄っすらと穢れに覆われていて薄汚れて見えた。
『これって自然な穢れじゃないよね??』
碧が念話で聞いてきた。
『多分、あのリッチもどきがここまで遠征してきたんじゃない?』
どうやら監督者という事で、大江さんも祟りのターゲットにされていたのかも?
これは中にも何かいても不思議は無さそうだなぁ。
「ここです」
大江さんさんに案内されたのは2階の奥にある部屋で、何やらジメジメと黴臭い。
意外にも、悪霊は居なかった。
でも穢れはかなり濃い。
・・・穢れって濃厚だとカビが生え易くなるのかな?
穢れていると体調を崩し易くなるが、抗カビ剤の効果とかも穢れで減少するのだろうか。
まあ、ずっと水垂れしていたならそのせいでカビっぽくなっているだけなのかもだけど。
いい加減、ウィークリーマンションの管理会社の方も水道栓を修理すればいいのに。
カビが生えたら資産価値も下がると思うよ?
まあ、こんなに穢れだらけな場所じゃあ清掃員やメンテ人員もやる気が削がれちゃって怠けがちになっても不思議はないが。
「取り敢えず、部屋を清めてみますね」
碧が提案し、大江さんが呆気に取られている間に簡易な祝詞を唱えて部屋(と言うかフロア全部かな)を清めた。
ポタ。ポタ。ポタ。
「どうやら水垂れは水栓の劣化からくる故障な様ですね」
祝詞が終わって綺麗になった部屋でも変わらず音がしているのを確認して、碧が言った。
「呪詛ではないんですね?」
大江さんがちょっとホッとした様に言った。
そんなに妹の呪詛かもって言うのがダメージだったんかね?
家の方は実際に呪詛を掛けられているんだから、ここもそうか否かは余り妹さんの悪意に関係ない様に思えるが。
それとも妹に軽く八つ当たりされるのと、執拗に嫌がらせをされるのでは心理的ダメージが違うのかな?
「解体現場から悪霊が出張って来ていたのかちょっと穢れが酷かったですが、呪詛ではありませんでしたね。
どちらにせよ、部屋の管理人へ修理するなり違う部屋を提供するなりを要求すべきだと思いますよ?
部屋のサービス代を払っているんですから、ポタポタ煩くて安眠できない部屋なんて契約違反じゃないですか」
ちょっとぷりぷりしながら碧が言う。
と言うか、建築業の人だったら自分で直せないのかな、こう言うのって?
まあ、家を建てる際の色々って細かく分業されているらしいから、『建築業』って括るのはちょっと大雑把すぎるのかな?
下手に自分で水栓を閉めようとしてネジ(?)を砕いたりしちゃったら更に悲惨な事になるかもだし、迂闊に手を出さない方が良いのかもね。
「ちなみに、その血痕手形が出るマンションにはいつ帰る予定なんですか?
被害がエスカレートするタイプな呪詛の可能性も考えると、一人で帰らない方が安全ですよ?」
こっちまで呪詛を届かせていない事から危険性の評価はワンランク下がるけど、マンションの方で留守の間に呪詛の効果が蓄積していたら不味いかも?
まあ血色な手形をペタペタやって脅かす程度の呪詛だったら、蓄積とかエスカレートは多分ない筈だけど。
スマホの写真だけじゃあ呪詛の正確な状態は判断できないからねぇ。
一応本人に薄っすらと繋がっている呪詛もそれ程強い感じじゃないけど、家に何か補助具みたいのが置いてある場合は帰ってそれにうっかり触れたりしたら一気に悪化するリスクだってゼロではない。
今まで妹さんが置いていったと思われる補助具に気付いていなかったし触れてもいないものの、『あるかも』と私が示唆しちゃった事で夜中に探して破壊しようなんて思い立っちゃったら危険だ。
「こちらの仕事もありますし、明後日の金曜日の晩か土曜日に朝になりますね」
大江さんが答えた。
「夜遅くに呪詛がある家に帰ってくるのは良くないと思いますから、金曜日の晩は誰か友人の家に泊めてもらうなり、こちらでゆっくりするなりしてはどうでしょう?
で、土曜日の朝に我々と一緒に大江さんの家を見に行きましょう。
あ、一応呪詛返しの依頼を私に出すという事で良いんですよね?」
勝手に呪詛返しすることを決めちゃったが・・・いくらこの部屋の水垂れが呪詛じゃないにしても、あの赤い手形は気のせいでは済まない事に変わりはない。
「そうですね。
ちなみに、妹の事を当局に言うべきとの話ですが・・・そちらはどう言う流れですれば良いんですか?」
清められた部屋の中を見回しながら大江さんが尋ねた。
「警察の知り合いに声を掛けておきますから、呪詛が返った瞬間を目撃できる様にした方が良いですね。
土曜日の午前中に妹さんは何処にいるか分かりますか?」
碧が尋ねる。
考えてみたら、呪詛返しを喰らって依頼者だと確定するのってどうやって記録するのか知らなかったわ。
「実家に居ると思います。
後で確認しておきます」
うん。
バレない様に気をつけてね。
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