第818話 遠い親戚より近い知り合い?

「先日はどうもありがとう」

蓮君が東北の方で仕事で行って面白いお土産をゲットしたから会いに来て良いかと連絡して来たので、碧と相談して家に呼んだらなにやら大きな物を手に現れた。


あれがお土産??

持って帰ってくるのが大変だっただろうに。

それとも東北からは宅急便で一旦家に送ったのかな?


「困った時はお互い様だし。

いつか源之助とか他の大切な子が迷子になった時に助けてくれればそれで良いよ〜」

碧が返す。


まあ、退魔師な親族が多い碧だったら困ったことになっても何とかなる可能性は高いけどね。

でも東京に暮らしている風系の能力者に貸しがあるのは悪いことではない。


どちらにせよ、碧的には蓮君よりもコムギちゃんの方が重要だった可能性が高いし。


「あ、で、これがお土産です。

ちょうど依頼で行った先の親戚が作っているとかでウチの分と合わせて安く買わせて貰えたんで、良かったら源之助ちゃんにどうぞ」

蓮君が持って来た荷物の包装を外して見せた。


おお〜。

藁か何かで出来た、ちぐらじゃん。

藁製のミニ鎌倉みたいので猫用のサイズの入り口がついた、ベッドと言うかハウスと言うかなヤツだ。

源之助を迎えた頃に碧がネットで見ていた猫用ベッドの一つだったが、ちょっと高かったからやめたんだよね。


生産者から直接買えたなら多分それほど高くは無かったと期待しよう。

・・・もしかして、迷子探しの術の対価が安すぎると気にしていたのかね?

まだ高校生なのに良く出来た子じゃ〜。


「え、良いの?!

これって高かったんじゃない?!」

碧がびっくりした様に声を上げた。


「いえ、依頼人の親戚だとかで、物凄く安く譲ってくれたんで。

問題は源之助ちゃんが気に入ってくれるかだけど・・・」

蓮君が気掛かりそうに周りを見回す。


源之助はキャットタワーの上のベッドで呑気に寝ているんで、反応は分からないねぇ。

猫って客が来ると隠れるのが多いと聞くが、源之助は隠れはしないけど実質ガン無視と言うか気にせずそのまま寝てる事が多いんだよねぇ。

昔は青木氏が来た時に『遊べ』と言わんばかりに寄って行った事もあるんだけど、最近はそこまで日中は遊びたい欲求が強く無いのか、ベッドから欠伸をしつつ上から見下ろしてるだけだ。


夕方や朝は遊べと要求してくるし、碧が外出先から帰って来た時なんかは出迎えて『遊ぼう!』と要求してくる事も多いんだけど。


ちなみに私は帰宅しても上から尻尾を振る程度かな。

・・・つれない。


「今のうちにお気に入りのタオルを入れておこう。

そうしたらきっと夕方になって遊びまわった後に入ると思う。

ありがとね!」

碧がこたつのそばに置いてあった源之助のお気に入りタオルを持って来て、ちぐらの中にふんわりとなる様に置いた。


ああ言うのって防虫剤とかはどうなんだろ?

虫が湧いて出たら嫌だけど、防虫剤を掛けてあったら猫に有害そうな気もする。

まあ、虫が湧いたら即座に1匹生け捕りして碧に生体指標マーカーを覚えさせて虫除け魔道具の対象に加えさせれば問題ないか。


ちょっと大きめだけど、あっちの棚の上にでも置いたら良いかも?

もしくは出窓の所もありかな?

直射日光が当たると暑くなりすぎるかなぁ?


まあ、何ヶ所か試して気に入りそうな場所に置こう。


「ありがとね〜。

・・・そう言えば。猫と全然関係ない話なんだけど、蓮君って苗字は高木でしょ?

こう、5歳ぐらい上の親戚の女性で高木怜子さんって人が居たりしない?

実は兄貴が結婚を考えている相手なんだけど、去年・・・って言うか一昨年の暮れにちょっと悪霊に祟られて、その影響か風系統の能力に目覚めたんだよね。

同じ苗字で系統まで同じ力だから、もしかして蓮君の母方も退魔師の家系だったりするのかなってちょっと思ったんだけど」

偶然の可能性も高いけどね。


なんかこう、親戚になる可能性が高い相手ってプライベートな質問をどの程度しても良いのか微妙に不明であっちに聞き難かったんだよね。

まあ、蓮君との関連の可能性を思いついたのが彼女が北海道に帰っちゃった後だったから、メッセージアプリで聞くのは微妙だったって言うのもあるし。


「ええ?

母方に退魔師が居るって話は聞いていないけど・・・」

蓮君は首を傾げながら応じる。


「いや、彼女も親戚に退魔師が居るって雰囲気じゃなかったから、退魔師として誰かが生計を立てているとしたら親戚には言っていないんだと思う。

ただ、先祖は退魔師をしていて血筋的に能力者が出やすい家系かも?と思って」

父親だけが退魔師だとしたら、三人の子のうち二人が能力持ちで生まれるなんて後継者問題で喘いでいる旧家が歯軋りして悔しがるぐらいの勝率だ。


母親も能力者が多い家系だとしたらまだ納得できそうだ。


「う〜ん、母方の親戚で付き合いがある従兄弟とかは男ばかりだけど、再従姉妹あたりになったら付き合いが無くて俺が知らないだけかもだから、今度聞いておくよ。

ちなみに、その怜子さんのご両親の名前は?」

蓮君が聞kいてきた。


「高木雄介と洋子だって」

一応こちらは母親に聞いたら、あっちが兄貴から聞いていた。


さて。

蓮君と親戚だろうが無かろうがあまり関係は無いけどさ。

蓮君と遠いなりにも親戚になるとしたらそれはそれで悪く無いかも?

何かの際に手助けしやすいかもだし、助けを頼むのもしやすくなるかもだし。


乞うご期待ってやつだね。

兄貴と彼女さんの関係が拗れちゃったら、却って蓮君と親戚付き合いが無い方が私らに余波が来なくて良いかもだけど。


まあ、なる様になるでしょう。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る