第817話 吹き飛ばしちゃって欲しい

「なんかもう・・・白龍さまに実体化して貰って、ここら辺の建物を全部ペシャンコにして貰えたら良いのに」

薄汚れて、所々に怪しげな何かの残骸がある廃墟モドキな階段を上がりながら思わず愚痴が溢れた。


今日もまた廃病院の除霊に来ているのだが、建物って2階程度ならまだしも4階とか5階まであると一気に下から全部除霊するのは碧でも厳しいんだよねぇ。


前回の担当範囲は横に広い代わりに高さはそれ程無かったんだけど、今回は全ての建物となるから高い部分もあって、それを一々上の階まで順に除霊するとなると意外と時間がかかっている。


「確かにねぇ。

高いところを壊す際に悪霊にちょっかい出されて事故を起こしたら危険だから除霊するんだから、建物を先に壊してくれとは言えないけど・・・平面で除霊できたらマジでもっとずっと早く終わりそう」

碧も溜め息を吐きながら言った。


「流石に白龍さまに大規模な破壊行為なんてして貰うのはヤバすぎるだろうけど、どうせ何十年も前の病院の資材の再利用なんてしないだから爆薬でも仕掛けて木っ端微塵に出来ないのかね?」

これが前世だったら・・・龍の愛し子が居れば一つの街ですらその気になれば破壊できるのだから、いくら建物が無節制に敷地内に増えた病院だろうとこの敷地内の建物を破壊し尽くすのなんて簡単だっただろうに。


現世では流石に魔素の使用量が多くなり過ぎて、例え人目を気にしないとしても厳しいんだろうなぁ。

まあ、それこそ嵐を呼んで全部洗い流す系の破壊活動だったらなんとか出来るかもだけど。それは多分、病院だけピンポイントにと言うのは難しいんだろうね。


どちらにせよ、そんな大規模テロ攻撃にでも使えそうな破壊活動をやって貰うのは問題外だけどさ。


でも、面倒臭い。

平屋だったら全部1日で終わりそうな面積なのに、4階や5階まであるせいで作業量が4、5倍になるのがムカつく。

しかも浄化が終わったらそれを取り壊すんだから、なんとも切ない。


「でも、考えてみたら鉄筋コンクリートとか使って、耐震性とかも強くした公共の建物だったら龍の攻撃でも潰すのは難しいかも?

石造りの城とかよりも頑丈そうじゃない?」

碧がふと言ってきた。


・・・確かに?

前世は地震なんて殆んどなかったからなぁ。

鉄筋コンクリートって、石造りで補強剤と強化の魔術をプラスした建物と比べると強度的にどうなんだろうか?


「白龍さま、こちらの世界の鉄筋コンクリートのビルとかって魔術の世界の石造りの建物と比べると強度的にどうなのか、ご存じですか?」

興味があったので尋ねてみる。


『物理的には強いかも知れんが、魔力を込めた攻撃に弱いからブレスで一撃じゃの。

魔物のスタンピードがあった場合も身体強化系の魔物に体当たりされたら保たんと思うぞ。

まあ、この世界でブレスを吐いたら後で魔素の補給の為に一度幻想界に戻る必要が出てくるが』

白龍さまがあっさり応じた。


ああ〜。

そっか、この世界の建物って魔術的な攻撃には極端に弱いのか。

それこそ、ラノベにあるみたいな感じにダンジョンが現れてモンスターのスタンピードが起きるような事態が起きたり、異世界と継続的に繋がって軍が行き来できちゃう様な境界門が固定化されたりした場合、魔術的な攻撃には脆いんだね。


まあ、そんな境界門が開く様なことはまずないと思うし、ダンジョンなんぞ前世でも無かったから、心配する必要はほぼないと思うが。


と言うか、心配したところで出来ることは無い。


「それこそどこぞのヤバい国家に攻め込まれて国土の一部が占領されちゃった時の応戦の練習を兼ねて、自衛隊の戦車とかロケットで全部建物を吹き飛ばして貰えれば楽なのにね。

自衛隊は現実の建物を使った演習が出来て、ここを買った投資家は建て壊しの費用が浮いて、私らは平面的な除霊だけで済んで、皆にっこりだろうに」

碧がちょっと過激な事を言い出した。

源之助の元に早く帰りたいとジリジリしてきているっぽい。


「ああ言うのって不発弾があったらヤバいから演習場に後で高齢者用施設を建てるって訳にはいかないんじゃない?

土もなんか有害物質に汚染されそうだし」

ウクライナとかの小麦畑も隣国に攻められて被害が莫大だって読んだ気がする。

あれって地雷や不発弾だけの話じゃ無いと言う印象だったから、爆薬そのものが体に悪い物が含まれているんじゃ無いんかなぁ。


でも、考えてみたらアメリカなんかではビルの建て替えの際に爆破して解体することもある筈。

だったらそこまで人体に悪影響はないのかな?


まあ、どちらにせよ、日本じゃあ出来なそうだけど。

諦めて根気よく各階を除霊していくしかないよね。


ああ、面倒臭い。

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