第812話 お腹が減った
「ちょっと何か食べに行こう」
リッチもどきが消えて、気が抜けて思わず近くの岩の上に座り込んでいたのだが、お尻が冷えてきた。
「そうだね。
軽く食べた方が霊力の回復に良いかも。
なんか空腹感があるし」
碧も頷きながら立ち上がった。
レンタカーをピックアップする前に早めなランチを摂ったんだけど、3時ぐらいになってきたしティータイムという事で良いだろう。
ここら辺にケーキを売っている喫茶店があるかは知らないが。
無ければコンビニかスーパーで適当にクッキーとペットボトル入りのお茶でも買って車で食べれば良いや。
いや、どうせだったらクッキーよりもお饅頭とかの方がお茶に合うかな?
クッキーだったら紅茶の方がいいけど、ペットボトルで買う飲み物となると日本茶一択だからねぇ。そちらに合うオヤツと考えると和菓子系の方が満たされそう。
何故にああもペットボトル入り紅茶が日本茶に負けるのか、不思議だ。
それともそれって私が紅茶に対する拘りが強すぎるのだろうか?
でも、ペットボトル入りの紅茶って微糖って表示してあっても甘すぎて食べ物と一緒に飲むのに絶対向かないと思う。
メーカーによっては完全にストレートかつ美味しい紅茶を売っているところもあるのだろうか?
3種類ぐらい試してどれも酷かったから、もう諦めて基本的に日本茶か麦茶かウーロン茶しか買わなくなったのだが。
まあ、紅茶って安っぽい喫茶店で出されるのも美味しくないから、元々デリケートで美味しく飲むのが難しいのかも?
日本茶だってデリケートそうな気がするが、あっちはそこそこでも満足できる味なんだよねぇ。
不思議。
それはさておき。
「一応大江さんに、まだ除霊は終わってないけどエネルギー補給したら帰って来るって言っておこうか」
碧が提案したので、先程のコンテナハウスっぽい所へ向かう。
ついでに通りがかりの悪霊を確認しつつ歩いていたのだが・・・よく見たら、ちょっとそこらに居る悪霊の存在が薄れているかも?
なんかこう、悪意の塊として形は朧げだったものの穢れは濃厚だったのに、今見ると穢れが薄れた代わりに生きていた時の姿が薄っすらと視えるようになってきた。
もしかしてあのリッチもどきから、恨みや穢れを最大限に活用する為に在り方を方向付けられていたのが、無くなったのかな?
「どうやらあの研究所の死者だけじゃ足りなくて、あのリッチもどきがこの地域一帯で死んだ武士とか農民とかの昇天していない霊も集めていたみたいだね」
敷地を彷徨っている悪霊たちの姿が薄っすらと見える様になって気が付いたが、戦国時代っぽいイメージな格好をしているのがそこそこ居る。
まあ、単に和風な戦装備や和服を着ているだけなんで江戸時代や鎌倉時代の可能性もあるけど。
考えてみたら、日本の服って鎌倉時代から江戸時代まで変わったのかな?
平安時代はもっとストンとした服だったみたいだけど。
欧州なんかはカボチャパンツとか軍服っぽい服とか、ガンガン服の流行が変わっていったせいで肖像画とか見ると時代によって『マジ?!』から『お、今着てもお洒落かも?』といった違いが色々とあるが、和服はどうだったんだろ?
江戸時代は鎖国とか保守的な幕府の方針のせいで変化が少なかったかもだが、鎌倉から室的時代はもう少し服が変化してても良さげ?
今度、霊の時代検証の為にも各時代の武士の格好を確認しておいたら良いかも。
農民は基本的にボロを着ているので、時代が変わってもあまり変化は目立たないと思うけど。
「あ〜。
だから一掃した筈なのにまた悪霊だらけになっていたのか。
でも、ちょっと穢れが薄れた感じがするよね?
もしかしたら放置しても自然に穢れが散る?」
碧が足を止めて周囲を見回しながら言った。
「う〜ん、不自然に濃くされていた穢れが散った程度で、今まで染み込んでいた分は残るだろうからダメじゃない?
人が去って野山に戻るならまだしも、人手不足でキリキリしている工事現場じゃストレス度も高そうだし」
仕事のストレスも人間関係の軋轢からくるストレスも、穢れを生む。
大抵は薄らとした暫くすれば離散するような穢れだが、ここは土地が穢れに馴染みすぎてるからねぇ。
定着しちゃうんじゃないかな?
「まあどちらにせよ、浄化する契約だし。
浄化と浄化の間に環境が悪化しないだけでもありがたいと思うしかないね」
碧が肩を竦める。
「あ、大江さ〜ん!」
丁度コンテナハウスもどきから出て来る現場監督の姿を見て、声を掛けたら・・・大江さんがこちらに注意を引かれた一瞬の隙に現れた悪霊が大江さんの足を掴み、転ばせた。
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短編として書いている『子爵家三男だけど王位継承権持ってます(仮)』の続きをアップしました。
https://kakuyomu.jp/works/16818023211694735678
二話は以前アップした話の再アップですが、新しくその後に続きも書いてありますので三話とも良かったら読んでみて下さい。
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