第807話 謎に迫ろう
最初に取り壊すと言う事で除霊を頼まれたのは敷地の端にあるナンチャラ記念棟だった。
幹道に一番近い場所なのだが道に繋がっていなかった最後の方に足された部分らしいが、新しくそちらに敷地への入り口を作る予定らしい。
一応病院の本館部分とも渡り廊下で繋がっていたが、屋根が傷んで崩れかけていたとかで既にそちらは撤去されているのでポツンと離れて建っている。
なんかこう、本館、2号館、別館とあって更に細々とおまけがある上にこの記念棟って、この病院って只管広げまくっていた様だけど、こんな田舎にそんな需要があったんかね?
人口密度的に患者になる住民が周辺地域にそんなに居たのかという疑問を感じる。
と言うか、そこまで需要があったんだったらここが廃れて廃業出来ちゃった事自体が不思議だし。
何か公害病みたいので一時的に住民の病人率が膨れ上がったとかなのかな?
鉱山でもあったんだったら可能性はありそうだが・・・。
でも、鉱毒の垂れ流しで地元民に被害が出ても、こんなに病院を拡大できるほど治療が払える金持ちは被害者には少ないと思う。
ある意味、金持ちは周囲の環境がやばそうだったら病院を増築するのでは無く引っ越すか、被害の元を訴えるか、政治家を動かすだろう。
そう言う権力や資金力がない庶民が被害を受けざるを得なくなるんじゃ無いかと思うんだが。
それに、精神病院では無かったらしいけど精神病棟もあったと聞く。
もしかして、地域一帯の家に帰れない高齢者とかの引き取り事業っぽい事も社会保険の金を使ってやっていたのかも?
病院の理事長みたいな存在がどっかの厚生族な政治家と仲良くて、色々と資金を引っ張っぱるのを頑張りすぎて高度成長期バージョンな姥捨山を作り上げちゃったのかな?
ある意味、これから建てる予定の高齢者施設モドキな役割を果たしている間にどんどん膨れ上がったんだとしたら・・・何故にここが悪霊だらけになったのか、高齢者施設の企画者は真剣に調べるべきだと思うね〜。
まあ、私の知ったこっちゃ無いし、政治的な色合いがあるんだったら聞いたところで誰も教えてくれないだろうけど。
取り敢えずはまず、そこら辺を彷徨いている悪霊を捕まえてどこの誰なのか、記憶を探ってみよう。
ガシッとこちらを威嚇しようと近寄ってきた悪霊を掴む。
まあ相手は霊なんで物理的に掴んでもすり抜けちゃうから、拘束用の魔力を手に纏う感じに掴むんだけどね。
前世で肉体派な先輩に習った霊を殴る方法の応用編だ。
「あなた、何処から来たの?」
暴れている悪霊に魔力を込めて質問を叩き込む。
やり過ぎると霊が霧散しちゃって結果的に昇天しちゃうんだけど、ちょっと弱らせた方が質問に抵抗されないで済むんだよね〜。
『あっちだ・・・
暗い・・・熱い!!
ちくしょう、こんな所に閉じ込めやがって!!
恨んでやる!』
何やら不満がボロボロと出てくる。
まあ、悪霊なんて何かに不満があり過ぎたせいで昇天出来なかった死者のなれ果てだからね。
文句が無かったらその方が異常なんだけどさ。
取り敢えず、捕まえた悪霊が言っている『あっち』を見つける為に敷地周辺を一時間以上も歩き回る羽目になった。
霊って必ずしも現世の環境認識が正確とは限らないんだけど、悪霊になると更に現実の把握があやふやになる事が多いんだよねぇ。
お陰で『あっち』も二転三転して、結局只管歩き回ってやっと『嫌だ!ここには戻りたく無い!!』と暴れられたのは敷地の奥にあったちょっとした窪みぽい所の側だった。
あれ?
もしかして死んだ場所に戻りたく無くて嘘を言っていたの、こいつ?
意図的に嘘をつかれた感触は無かったから気が付かなかったけど、無意識に避けようとして不正確な事を言っていたのかも。
「ここ?
なんか遺体でも埋めてあるのかな?」
碧が顔を顰めながら窪みを覗き込んだ。
「う〜ん、遺体とかって後から発見されるよりは早い段階で見つかった方が良いのか、それともここら辺は整備しないから死体が見つかる可能性は低いって事で遺体なんぞ見つけたく無いのか、どっちだろ?
まあ、この下に埋まっているかも知れない遺体のせいで悪霊が出てくるんだったらさっさと掘り起こして供養した方が良いよね」
なんか濃厚な瘴気が漂っているし、絶対に埋まっている遺体は一人分じゃ無いだろう。
一体何があったんだろ?
病院で都合が悪かった死者を燃やす焼却炉でもあったの?
でも、戸籍制度が完備している日本で大量に人知れず死体を作り出して焼却しちゃうなんて出来るの??
それに瘴気の濃さのわりに悪霊自体はここら辺を避けているっぽいから、何か酷い事がここで行われていたのかも。
単なる『ちゃんと弔わずに遺体をこっそり焼却した』ってだけだったらここまで悪霊に避けられる事は無いだろう。
なんか嫌な予感がするかも・・・。
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