第799話 抵抗されたらどうするかね
(猫の名前が最初はコムギだったのにうっかり綺羅に変わっていたので戻しました)
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「この家の中に居るっぽい」
比較的大きめな戸建ての前で蓮君が立ち止まった。
ここら辺はどうも高度成長期とかその後に一斉に宅地開発されて庭付き戸建てが建てられた地域っぽい。
最近になって初期に入った人たちが死ぬなり高齢者用施設に入るなりして家を手放した際に、不動産相場が値上がりしたせいか敷地を分割して2軒分の戸建てに建て直したと思われる小ぶりで庭がなく妙に狭い新しい家も2軒ずつちらほら混ざっている。
ああ言うギリギリまで敷地を使った小さな庭のない戸建ての建蔽率ってどうなってんだろ?
ここら辺みたいな低層の住宅地域って高さの規定は当然ながら、周囲の家との距離とか敷地内でどれだけの倍率で家にして良いかとか、規定があるんだと思っていたが。
高度成長期の後になって建蔽率の規定が緩和されたのか、それとも高度成長期の頃は庭があって当然と言う常識に基づいて建てられていて建蔽率マックスまで土地を活用していなかったのか。
まあ、どうでも良い事なんだけどね。
目の前の家は庭付きながらも新そうに見えるから、分割せずに元の敷地のまま建て替えたちょっと小金持ちな家なのかな?
家の中に居るのはどういう状況なのか情報収集出来ないかと動物霊を探して辺りを魔力視で見回したら、なんか蓮君に見せられたポスターにあった写真と似た感じの猫の霊が門中の上に香箱座りしてこちらを見ていた。
ここで
『コムギちゃん?』
一応呼びかけてみる。
『キララにゃ。
コムギなら昨日美佳ちゃんに連れ込まれて、上にいるにゃ』
猫の霊が答えた。
あら。
『美佳ちゃん』が誰か知らないが、多分ここのウチの子なんだろうなぁ。
元々の飼い猫に似ているから生まれ変わったとか家出したのが戻ってきたとか、何か都合がいいことを信じ込んで迷子になっていたコムギちゃんを連れ帰ってきたのかな?
まあ、お陰でコムギちゃんがうっかり車に轢かれて死んだりしなかったのは良かったんだろうが・・・返して貰うのには抵抗しそう。
蓮君がインターフォンを鳴らそうとするの肩を軽く振れて止める。
「今ちょっと探したらここにポスターのコムギちゃんそっくりな猫の死霊がいるんだけど、その子曰く、コムギちゃんは『美佳ちゃん』とか言う子に家の中に連れ込まれたらしいの。
そのそっくりなキララちゃんが多分ここで昔飼っていた猫で、コムギちゃんはその子の生まれ変わりか・・・死んだのを見ていないなら家出したのが帰ってきたと思っている可能性が高そう。
多分普通にウチの子を返せって言っても抵抗すると思うよ。
蓮君が呼びかけたらコムギちゃんって自分から出てきてくれるかな?」
猫ってそれこそ手にチュールでも持ってないと呼び掛けたって寄ってこない事が多そうだからねぇ。
出迎えには来てくれても、声をかけてた場合は精々尻尾を振ってくれる程度な事が多い。
私の場合は出迎えすらしてくれないし。
「あ〜。
オモチャかおやつを使えば来るかもだし、どっちも持ってるけど・・・それじゃあズルだって相手が認めないんじゃないかな」
うげっと言う顔をして蓮君が頭を抱えた。
「まあ、取り敢えず外から見えたから保護してくれてありがとう、返して下さいって言って、自分の家のだって主張されたらマイクロチップの確認を主張するしか無いんじゃない?
上手くいけば返せって揉めている間にコムギちゃんが自発的に出て来てくれるかも知れないし」
碧が提案する。
まあ、寒いから玄関を開けっぱなしになんてしないだろうから、コムギちゃんが蓮君の所に来ようとしても上手く出て来れるかは微妙かもだが。
上手くいく確率を上げる為に、クルミを送り込むか。
『クルミ、中に入ってコムギちゃんにこっちへ来るように説得して来てくれない?』
部屋に閉じ込められている可能性はあるが、返せって主張したら少なくとも親は子供に声を掛けるぐらいはするんじゃないかな?
『行ってくるにゃ〜』
クルミがふわふわっと霊体になって窓の方へ飛んでいった。
躯体から離れると長時間は活動できないんだけど、クルミも最近霊体だけで動くのを覚えたんだよね。
どうも、ハネナガが自由に躯体無しに動けるのをちょっと羨ましいと思ったらしく、コツを聞いたら出来たと自慢された。
躯体無しだと攻撃を受けた際に消えちゃう危険があるんだけど。まあ一般家庭に忍び込む程度だったら大丈夫だろう。
「しょうがない。
常識的な対応をしてくれることを期待するしか無いな」
溜め息を吐いた後、蓮君はぐいっと背筋を伸ばしてインターフォンへ手を伸ばした。
幸運を祈る!
クルミが説得に成功するまでに上手いこと玄関を開けさせないとだね。
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