第795話 ペット専門・・・
『やっほ〜、どうしたの?』
取り敢えず静かでプライベートな所が良いってことで近くのカラオケに入って聖子さんに連絡したら、夕方で暗くなりかけだったお陰か一発で電話が繋がった。
ある意味、冬中スノボをしているから無理に夜にまで照明を頼りに滑る必要はないので日が暮れてきたら帰ってるのかな?
やっぱ暗いとうっかり他の人にぶつかったりぶつかられたりするリスクが高くなるから、普通に日中滑る方が無難なんだろう。
碧が猫の為に迷子を探す術を知り合いが探しているって話をしたら、聖子さんはぶっと吹き出して爆笑した。
『猫の為に迷子探しの術!!!
でも確かに家族だもんね。
アホな中高年が年甲斐もなく安易に山に入って迷子になったせいで捜索隊が山に入る羽目になるよりずっと意義がある力の使い方だね!』
どうやら迷子探しの術というのは存在するらしい。
聖子さんの口振では、『迷子探し』と言う名前だけど最近では子供ではなく適当な準備だけで山に入って遭難しちゃった人を探すのに使われる事が多い様だ。
最近の中高年は元気だからね〜。
暇と金と元気に溢れて山登りを安易に挑戦して、うっかり遭難する人が多いのかな?
携帯のお陰で子供が迷子になっても案外と簡単に親と合流できる様になった代わりに、元気だしGPSで地図が見えるしと思ってしっかり下調べや準備をせずに山に入る人が、圏外になったり道がない山の中を思う様に進めなくて帰れなくなって
どうやら退魔師も人間相手だったら迷子探しの術を依頼されたら請けているっぽいね。
猫相手だと門前払いされる様だが。
それとも、蓮君が舐められているだけなのかな?
それなりに成長して有能な術師になりそうなのに、ここで親身になって恩を売っておこうと考えないところに受付嬢の考えの浅さが滲み出てるよねぇ。
まあ、相手がバカの方が怖くなくて良いけど。
「その術を教えて貰えませんか?
風の術なら覚えられると思うので」
蓮君が携帯に向かって頼み込む。
符の紋様を送って貰ったらそれで覚えられるんかね?
まあ、今から符を書いて北海道から速達で送っても早くて明日、もしかしたら明後日までこちらに着かないだろうから、迷子探しの符が退魔協会の売店になかったんだったら死ぬ気で覚えて自分で術を掛けるのが一番早いだろう。
『う〜ん、今までチャットアプリで符の紋様を送って教えようとした事なんて無いから、上手くいくか分からないけど。
失敗しても時間分の費用は貰うって事で良いの?』
聖子さんがちょっと首を傾げながら聞いてきた。
だよねぇ。
術を教えるのって基本的に直に対面してやるもんだよね。
でも、もしかしたら基礎が分かっている相手だったらオンラインとかでも教えられるかも?
前世でだって昔の魔術師が書き記した本や資料を元に術を再現したり改造したりって言う研究はそれなりに行われていたし、ある程度は成功したのだ。
紋様をメールで受け取り、チャットアプリでコツを説明して貰って習得するのだって出来る可能性は高い。
私が転生した術だって古代遺跡からの資料を元に再現した術だったし。
まあ、かけた時間はかなり長かったけど。
「構わない。
どちらにせよ遭難者探しの依頼があるんだったらその術を使えたら便利だろうし。猫を探すのに活かせなくても時間をかけて物にする」
蓮君が頷きながら応じた。
『おっけ〜。
じゃあ、取り敢えず符の紋様を送るから暫くそれを試してみてて。
夕食後の・・・8時にもう一度連絡するから、その時に1時間ぐらい練習とか検討に付き合うよ。
費用は符の値段と退魔師の1時間あたりの定額報酬ね』
聖子さんが言った。
符を売る際はそれを勝手に複製されないように色々と隠蔽するんだけど、この場合は符の紋様を教えてあげるんだから符の値段より高くて当然なんだが・・・隠蔽付き符の値段で構わないなんて、聖子さんも猫好きなのかな?
「ありがとう!」
蓮君がぺこんと携帯に向かって頭を下げている間に通話が切れた。
「ちなみに、『猫を探すのに活かせなくても』って言ってたけど、直ぐに術が使えなかったら諦めるの?」
確かに行方不明になっている時間が長くなればなるほど生存可能性が低くなるかもだが、諦めるのはちょっと納得がいかない気がする。
「迷子猫さがし専門の探偵もあるんで既に申し込んであるんだけど、明日からしか来れないんだ。
だから今日中に探せなかったらプロにも任せるのでそちらが先に見つける可能性もあるかな、と思ってる」
蓮君が言った。
へぇぇ。
ペット専門の探偵なんてあるんだ?!
まあ、ペットを飼っている人って年々増えているらしいし、不倫調査よりはずっとやり甲斐がありそうだよね。
幾らになるか知らないけど、儲かるなら蓮君が退魔協会から袂を別つ気になった時に迷子猫探しで食っていくのもありなんじゃ無い?
迷子探しの術が猫に使えるならだけど。
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