第786話 自己満足的な行為?
「ねぇ、こんな感じの活躍はどう?」
テレビで海外ドラマを見ていた碧が外から戻ってきた私に言ってきた。
「うん?
活躍??」
テレビの中で、何やら焦茶の髪に綺麗な青い目の男性が取り調べ室みたいなところでおっさんに話しかけている。
刑事物?
警察に入るつもりは無いんだけど。
あそこも自衛隊と同じで男尊女卑が激しそう。
「カナダのドラマなんだけど、人の心が読める超能力を持った男性が警察の手伝いをして殺人事件を次々と解決していくシリーズなの。
当然物証か自白がなきゃ逮捕なんか出来ないけど、心の声が聞こえてちょっとしたフラッシュバック的に何かの場面の映像とかも見えることがあるから、それで犯人とか犯人が隠した殺人に使った凶器の隠し場所とか都合の悪い書類の場所とかを見つけて逮捕に貢献するの。
勿論、情報の断片があったら色々見つけ出せるコンピューター関連の凄腕男性とか、尋問したら色々と推察出来ちゃう切れ者な女性刑事とかもいるんだけど」
碧がドラマの概要を教えてくれた。
「なるほど。
物的証拠があるなら術師が嘘の自白を強要している恐れは無いから変に冤罪を疑われないですむか。
そう言えば、そう言う超能力系の主人公のドラマってちょくちょくあるよね。
死体の声が聞こえる死体安置所のバイトの女性とか、FBIのコンサルタントをしている死霊が見えて声が聞こえる霊能者とか」
死体安置所のバイト役の女性は美人だったが、霊能者の方はなんだって主人公でブロンドなのにこんな顎の四角い地味系な女性を選んだのだろうと不思議に思った記憶がある。
「・・・考えてみたら、術師が実在するんだからああ言うドラマも実際にそう言う働き方をしている人をモデルに作っているのかな?」
碧が首を傾げながら言った。
「殺人事件の解決率が100%な国なんてどこにもないから、それ程は術者を使ってないんじゃない?
殺人事件を解決するよりも悪霊や呪詛を祓う方がお金になるし」
公務員とは言え、警官の給料が退魔師より良いとは思えない。
と言うか、考えてみたら警官って公務員だけど多分霞ヶ関で働くような官僚と同じだけ給料を貰えたりしないよね?
安月給で市民を助けるためと言うお題目でやる気搾取されている気がする業種の一つだと思うんだけど・・・どうなんだろ?
まあ、霞ヶ関の官僚だって残業時間は過労死レベルが多いらしいから、時給に換算したら交番にいるお巡りさんと似たり寄ったりなレベルかもだけど。
「・・・考えてみたら日本のお偉いさんが殺人事件に術者を使うつもりがあったら、相続税問題で死者の霊の召喚を依頼できる人間を制限する法律を作った際に『ただし殺人事件の被害者は除く』ってしているか」
碧が蜜柑に手を伸ばしながら言った。
「だね〜。
そうしなかった時点で、政治家もそれなりの人数が後ろ暗い事に手を染めているって想像できて・・・嫌な感じ〜」
そう考えると、日本の政治家って思っていたよりも危険??
日本の政治家は密室での仲間内の話し合いで色々決めちゃうだけで実際に人を殺したりはしていないと思っていたが、ネットと言う政治家でも容易にコントロール出来ない情報拡散手段が出来たことで、都合の悪い情報を持つ人間を黙らせるために週刊誌とかの編集長やスポンサーに圧力をかけるのでは無く、煩い事を言っている人間を直接消す方に変化しつつあるのかも。
いや、遺産相続関係で法改正した時点で既に殺人を隠しやすい方向へ法制度を誘導している事を考えると、昔から政治家の煩い相手への最終手段は暗殺だったのかな?
「だね。
警察なり被害者の家族なりに依頼されて殺人事件の犯人解明に協力するとかはまだしも、こちらからしゃしゃり出てガンガン殺人犯を見つけていると、そのうち白龍さまの天罰を信じていない権力者に命を狙われそうかも。
そう考えると、依頼されない事にはあまり首を突っ込まない方が良いか」
碧が言った。
「まあ、流石に連続殺人犯っぽく大量に死霊を引き連れている人間がいたら田端氏にでも連絡するけどさ。財産目当てとかで誰かを一人ピンポイントに殺す程度だったら、ある意味社会全体にとっては大して実害はないから放置してもそれ程問題はないっしょ」
一度人を殺すと、殺人に対するハードルが下がって安易に邪魔な人間を殺そうとすると言う説もあるが・・・特定の人間の周囲で人が死にまくったら警察に怪しまれてボロが出るだろう。
つまり、病的な連続殺人犯以外は私が自分の身を危険に晒してまで関与する必要性はあまり無いよね。
そう考えると。
もしも海外ドラマにあるような殺人事件を毎回解決する能力者が実在するとしても、社会全体に取っては大して益になる事をしてないのに自分を危険に晒していて、意外と無駄な自己満足的行為だったり?
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