日常生活の中での感想

第783話 私生活

私たちのマンションの最寄駅に着いたら既に外は暗くなっていて、家まで歩いて帰る途中であちこちのマンションに灯が点っているのが見えた。少しずつ日が長くなってはいるけど、それでも5時にはだいたい真っ暗って感じだ。

これが夏だったら7時ぐらいまで明るいんだから、地球の軸の傾きって何とも不思議。これがもっと太陽に対して水平な傾きだったら、極寒と極暑しか無い世界になって人間どころか大抵の命が住めない様な世界になっていたのかな?


それはさておき。

「なんかさぁ。

ああ言うふうにカーテンを開けて室内の電気を点けたら外から丸見えだし冷えると思うんだけど、なんだってカーテンを閉めないんだろ?」


道に面している高層マンションを見ながら思わず呟く。


よく海外ドラマなんかで、ストーカーだったり単にすけべな人が窓際に望遠鏡を設置して他のマンションに住む女性の着替えとか日々の生活を覗き見するシーンがあるけど、あれって他者の目にかなり無関心な外人だからこそあそこまで無防備にカーテンを開けて生活しているんだろうと思っていたのだが・・・よく見たら最近のマンションだとカーテンを閉めてない人が意外と多い。


昔からそうだったのがベランダに面した窓だと床が邪魔でよく見えなかっただけかも知れないが、最近はガラス(?)張りのベランダや、ベランダがなくて嵌め殺しの窓ガラスがででんとリビングに大きく取られているタイプのマンションも多く、そう言うマンションでカーテンを閉めずに電気をつけているとかなりはっきり中が見えるんだよね。


まあ、角度の問題で住民がソファとかに座っている分には天井の照明と壁際の絵とか棚ぐらいしか道からは見えない事が多いけど。


「夜景を楽しんでいるんじゃない?

ああ言うお洒落な高層マンションってきっと窓が二重ガラスだったり断熱効果の高いサッシとかを使っているから、カーテンを閉めなくてもそこまで冷えないし結露も無いんだろうし」

碧が指摘する。


そっか。

昔と今の生活習慣の違いって窓ガラス周辺の断熱機能にも左右されているのか。


「でもさぁ、夜景が見えるって事は夜景の中にある建物の中の住民からも見えるって事じゃない?

双眼鏡や望遠鏡で人の家を覗き込む物好きや変態だって居るだろうに、怖くないのかね?」

年寄りや男性だったら気にならないのかな?

第一、レースのカーテンをつけていたら夜景は見えないのに外からは中が見える、一番悪い状態にならない?

プライバシーの保護とか効率的な断熱の為には、遮光じゃなくても少なくともレースよりはしっかりした生地のカーテンを閉めるべきだと思うんだけどなぁ。


リラックスしているところを赤の他人から知らぬ間に見られているなんて、私だったら絶対に嫌だ。


しかも最近は高層マンションが増えたから、双眼鏡とかを使わなくてもそれなりに中の人の動きとか服装程度だったら見える距離に別のマンションとかオフィスビルが立ってる事も多いと思う。


「う〜ん、どうなんだろうね?

そこまでな暇人は少ないと信じている人が多いんじゃない?」

碧が応じた。


人の家に盗聴器とかを仕掛ける人は少ないと思うけど、単に窓から外を見たら見える他人の私生活を覗き見して好奇心を満足させる人はそれなりにいると思うけどね〜。


まあ、それこそ家で誰かを殺していた現場を見られたとか、超有名人と不倫していた映像をどっかの週刊誌に売られたとでも言うんじゃない限り、覗き見されても大した害はないだろうから構わないのかな?

ストーカー被害に遭っている人だったらカーテンは帰宅したら真っ先に閉めるだろうし。


とは言え、下手に私生活を覗き込める状況にしたらそれを見ていて親しくなったつもりの勘違い男にストーカーされる危険はあるかもだけど。

そう考えると、カーテンを開けっ放しにしているのは男性が多いのかもね。


「そう言えばさ、人の生活を監視と言えば、あの敦也とか言う少年のモニターを弟子入りが決まるまで頼まれたりしたらどうする?」

碧が聞いてきた。


確かに、能力の使用を監視して行動を抑制するなら黒魔術師が適任だし、北藤家としては家の醜聞を知られる人間は出来るだけ減らしたいから私が黒魔術師だと知ったら要請してくるかもだね。


でも。

「嫌だよそんなの。

傲慢なガキは嫌いなの」

思わず前世の鬱憤晴らしに叩きのめしたくなるから、ああ言う傲慢な権利意識の強い子供は私の側に長時間近付けない方が良い。


「ガキは嫌いですって言って断るの?」

碧が笑いながら聞いてきた。


「後期の試験勉強を頑張らないと単位がヤバいんですって言うよ」

まあ、実際にもう少ししっかり勉強しないと単位はまだしも評価は悪くなりそうだし。

退魔協会の仕事とか魔道具モドキの研究とか色々と手を広げていたせいで、ちょっと大学の勉強の方がおざなりになっちゃったからね。


幾ら退魔師に大学の成績はあまり関係ないとは言え、折角お金を払って通っているのだ。

人様に自慢できる結果を出せる様に頑張るべきだろう。

少なくとも、頑張ると言っているのを邪魔する権利は退魔協会にも無い。





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