第782話 魔道具を作るのが難しい世界だったね

もう少し待ってくれと言われたものの、依頼人は敦也少年の将来や処罰・賠償に関して彼の父親や退魔協会らと話し合う必要があるが私たちがそれを聞く必要はないとなって、結局タクシーが呼ばれて私らは最寄りの特急停車駅まで送られて先に帰ることになった。


敦也少年の本性がどの程度が生まれつきのクソッタレさでどの程度が厨二病による汚染なのかイマイチ分からなかった私としても、強硬にそこに残る事を主張して彼の将来に関して口を出すほど本性の見極めに自信がある訳でも無かったし。


と言う事で、帰りの電車の中で碧に念話で質問してみた。

『翔くんとか親戚の子供とかでも、あの年齢だと変な行動をする男の子って多いもんなの?

なんかこう、家庭教師の人をちゃんと自分と同じ人間だと見做していない様な行動はかなり怖いモノがあったんだけど』


『う〜ん、翔とかウチの親戚とかは子供の頃から剣道とか習ってそれなりに攻撃される痛みとかをちゃんと実感する様にしているし、能力を使う際の責任とか危険に関しても小さい頃から言い聞かされているからねぇ。

中途半端に退魔師の知識は提供しているのに力を持つ者の責任とか倫理観とかをちゃんと教えない様な親とは、ウチの親が付き合いをそれとなく断る事が多かったし。

ただまあ、子供って教わらない事を自分で想像してちゃんと推測できるのは余程賢くて想像力がある子だけだと思うから、あまり想像力がない子だと悪人じゃ無くてもああ言う変な権利意識を持っちゃう事もあるんじゃないかな?』

碧がちょっと考えながら応じた。


『そっか。

本人の気質もあるけど、親の教育が足りなかったのもいけないんだろうって事なんだね。

じゃあまだ敦也少年がマトモに育つ可能性もあるって事なのか』

微妙に不安だったからなぁ。


『白龍さまもどうしようも無いとは言わなかったし、しっかり退魔協会の監視下で教育されれば大丈夫じゃ無い?

そう言えば、弟子入り先が見つかるまで能力を封じるって話は出てなかったけど、やらなくても大丈夫なのかしらね?』

碧が別の点を尋ねてきた。


『前世では逮捕された罪人用の魔術封じの首輪とかあったけど、こっちではそう言うのって無いのかな?』

あるなら碧の方が良く知っていそうだけど。


『聞いた事ないね〜。

危険な人物や退魔師になり損ねた能力持ちの場合は能力を封じられる事があるのは知っているけど、封じられた人は首輪なんてしてないし』

碧が顔を顰めながら言った。


首輪はね〜。

現実的に地球で使われてきたのか知らないけど、ラノベでの印象がめっちゃ悪いから現実でも使われたらド顰蹙ひんしゅくものだよね。


『考えてみたら前世の首輪って魔石で嵌めている人間の魔力の流れを乱れさせて術のコントロールを出来ない様にする魔道具だったから、魔石が無いこっちじゃ実質作成不可能なのかも。

黒魔術師が封じる場合だと恒久的に能力のラインを焼き切るのはそれ程難しく無いんだけど、一時的に使えなくしてまた後日元に戻すのってそれなりに加減が難しいから、子供相手にそれをやるよりは見張っておいて『弟子入りしてしっかり使い方や法律を学ぶ前に使ったら完全に封じる』って脅す方が無難なんじゃないかな』

魔石が無いと、作れる魔道具は大分と限られちゃうよねぇ。

誰かが魔力の流れを乱す魔道具にずっと魔力を注ぎ込み続けるなら一時的に封印出来るけど、それじゃあ魔道具としてはほぼ意味がないよね。


まだ聖域から魔力を維持できる石でも持ってきて短期的にそれを使う方が良いかも。

でも、需要と供給が合ってなさげだから難しいだろう。


『・・・ちなみにその焼き切るのって回復師が治療できちゃったりするの?』

ちょっと嫌な事を思いついた感じで顔を微かに顰めながら碧が聞いてきた。


『いや、魂の方だから白魔術師でも治せないね。だから能力を恒久的に封印処理したのにどっかの政治家とかが医療機関に金を払ってそこの白魔術師に解除させるなんて事は出来ないから大丈夫。

でも一時的な封印はクリップで血管を止めてるような感じだから、力加減次第では自然に外れちゃう事もあるし、反対にチューブをうっかり潰して破壊しちゃう可能性もあるから難しいんだ』

まあ、感覚的な話だけど。


それなりに気をつけて経過観測をしていれば大丈夫なんだけどね。

退魔協会が一時的な封印を提案しなかったのは、そんな技術がある術師がいないのか、もしくは忙し過ぎてちゃんと経過観測する様な暇がないのか。


まあ、どちらにせよ。

しっかり見張ってついでに退魔師としての教育をすれば良いんじゃないかね?






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る