第781話 よくある事??

子供の私室で話し合うのもなんだからと言う事で下のリビングで話し合うことになり降りて行ったら、あちら側は当局側の人間と調査担当らしき退魔師と、ついでに職員が居た。

家庭教師やその他の第三者も巻き込まれているから話が大きくなったらしい。


調査担当が当局の検察官っぽい役割の人(多分?)と一緒に時折依頼人や北藤家次男に質問しつつ敦也少年の話を聞いている。私たちはまだ帰るのは少し待ってくれと言われたので、ちょっと暇だったしこそっと職員の方へ声を掛けた。


「なんかこう・・・精神異常がある感じではないのに、かなり厨二病を拗らせていると言うか現実とアニメの世界の違いが分かっていない感じだったんですが、子供ってあんなもんなんですかね?」

異世界の記憶が蘇ったとは言え、私だってこちらの世界に普通に育っている。


自分はああも非現実的な事を言う子供じゃなかったと思うのだが・・・もしかして、重度な厨二病を患っていた兄とかもあんな感じだったのだろうか?


「ああ!

跡取りになれば何でも出来るとか、暗殺されるとかですか?

中途半端に退魔師の知識がある、非退魔師の両親から生まれた子供って才能が発現するとちょっと現実の線引きが分からなくなってあんな感じに混乱する事が時折あるんですよ。

ちゃんと退魔師の元に弟子入りして学べば大抵の場合は落ち着きます」

苦笑しながら職員が教えてくれた。


「ただ単に才能が開花しただけならまだしも、それなりに傲慢な言動をして違法な事をやっていたけど大丈夫なんですか?」

生霊3家庭教師の記憶にあった彼への態度はあまり良くなかった。


前世での王族クソッタレ子供ミニチュアの行動に近い感じを思い起こさせて、それこそ後々暗殺が必要かも?!と密かに思った程だ。

あのミニ魔獣どもは召使いを面白半分に刃物で切り付けたり、攻撃魔術を習う年齢になったら気まぐれで標的にして腕のいい回復師に即座に治療されなかったら死ぬ様な怪我をさせたりといった行動を平気で取る様なのも多かった。


まあ、理性がしっかりある筈のいい年をした親からしてそれに近い行動を取っていたのだから、そんな親を見て育った子がモンスターにならない訳がないのだが。

ごく稀にまともな教育係が付いて良識ある王族に育つのもいたが、大抵はまともな人間に育つ前に親に有る事無い事チクって厳しい教育係を放逐していたから、王が直接教育係に関与した王太子とか第二王子以外はまともな王族は少なかった。


ある意味、一番権力がある国王の方が有象無象な末端の王族よりもマトモなんだから不思議なものだ。


まあ、そのせいであの国が転覆しなかったんだろうけど。

クソッタレな王族が王座に座って国全体で好き放題していたら、それこそ私が生まれるよりもずっと前にどっかの大貴族が魔術師達と手を組んでさっさとクーデターを起こしていただろう。


黒魔術師はほぼ全員隷属させられていたが、それ以外の魔術師の自由意志は制限されていなかったのだ。

国に叛逆できない様な仕組みは色々とあったが、大貴族が手を組めばそう言うのも無効化出来た筈。


王太子や次男をしっかり育てるんだったら、残りのゴミを廃棄処分するかしっかり躾けるか、どうにかして欲しかった。


あれって権力の理不尽な恐怖を撒き散らして威嚇していたと共に、時々数人切り捨ててガス抜きをする仕組みだったのかも知れないと今になっては思う。


ある意味、一番上がマトモで、反乱を起こして王座につけそうな王家の血を引く人間が酷すぎると、反乱を起こそうという気すら起きなくなるかも。


完全に王家と無関係な貴族がクーデターを起こす場合、その貴族一派だけで国を完全制覇出来るのでない限り誰がトップになるか、その人間にどう言う権利があって他の貴族の生死を握る地位に就くのかと言うのは中々難しい問題だ。


その点、王族を反乱に巻き込めば王族内での内輪揉めみたいな感じに落ち着き、『王家の血』という手段で内乱の正統化が出来るので話が簡単になりやすいのだ。


が、前世の故郷は国王と王太子以外の王族が腐り果てていたので、あれらのどれかを旗頭にするのはどう考えても現状維持以下だった。

そう考えると、素晴らしいリスク管理手法と言うべきなのかも知れない。


それはさておき。

「関与したからにはあの少年が育ってまともに力を使うようになるか確認したいのですが、どこに弟子入りすることになるかとか修行の経過等を教えて貰うのは可能ですか?」

碧が聞いてきた。


やっぱ碧も気になったっぽい。

あの家庭教師への傲慢で冷たい話し方は私しか聞いていないが、やった行動も微妙だからねぇ。

ストーカー気質は危険だし。


単に家が色々跡継ぎ問題で揉めているせいで一時的に不安定になっていただけなら良いけど、跡継ぎになった事で更に歪む可能性もあるし。


「まあ・・・長谷川さんが何か機会がある際に同じ適性の能力を持つ若手の先輩として相談に乗りにいくって感じな事を手配するのは可能ですね」

職員が言った。

確かに同じ黒魔術師系だから、相談に乗るって言うのは名目としてはあるかな。


暫くして、落ち着いてきても良いぐらいの時間が経ったら見に行って言動が改善してなかったら能力の封印を推してみるか。

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