生霊と厨二病
第770話 変な案件
『実は去年の暮れ前に依頼人の娘さんが生霊に祟られた為、それの祓いの依頼を受けたのですが、祓って10日足らずの間にまた別の生霊に祟られる事態が起きました。
こちらも祓いましたが、更に今回また生霊に祟られたとの連絡があり・・・通常に祓う手続きではダメなのでは無いかと言う事で、祓うだけでなく原因解明及び解決をして頂けたら追加報酬を払うと言う形の依頼が入ってきています。
この案件を是非『快適生活ラボ』のお二方に受けていただければと思っているのですが、ご都合の方は如何でしょうか?』
電話をしてきた退魔協会の職員が依頼の説明を始めた。
生霊が3回なんて、異常だね。
悪霊が3回でも十分異常だけどさ。
余程恨みを買うような行動をしているにしても、人間って死んだ後の方が祟りやすい傾向にあるから悪霊ゼロなのに3人の生きた人間に祟られるなんて、普通なら有り得ない。
あれだけ酷い事をやっていた
まあ、
「ちなみにその娘さんが学校や職場で虐めを主導して怨みを買いまくっているとかって言うのでは無いんですよね?」
碧が確認に尋ねる。
そうなんだよねぇ。
単に依頼主側の悪行が原因なんだったら原因解明とか解決とかって言われても無理だ。
とは言え、虐めだったら生霊よりは自殺して悪霊が出てくる可能性の方が高い気がするけど。
『2度目の生霊が出た時点で協会側で興信所を雇って調べましたが、ちょっとした女の子同士の諍い程度しか無く、生霊が出てくるような熾烈な虐めは現在も過去もないとの事です』
へぇぇ、自発的に退魔協会が調べさせたんだ?
2度目の生霊が出た時点で『失敗したな?!』ってクレームが来たんかな。
「ちなみに、生霊の本人が誰かは分かりますか?」
違う生霊って言っているんだから、名前なり姿なりは分かっている筈。
『薄っすらと姿は見えているので体型が違うのは分かるのですが、知人や友人として思い当たる人物はいないそうです』
まあ、生霊状態になると見た目が劇的に窶れたり怖くなったりする事が多いからねぇ。
知り合いだとしても分からなくても不思議はない。
「名前とか、なんで祟っているのかとかは聞けなかったんですか?」
力技で祓っちゃうだけだと生霊側にもダメージが入るし、どうせならちょっと話を聞いて説得する感じに戻って貰う方が良いんだけど・・・そこら辺は黒魔術師の適性持ちじゃないと難しいだろうなぁ。
2人目に出た生霊の際にはどの適性の術師を送ったんだろ?
『2人目の時は『依頼遂行に失敗した』と言うクレーム対応のつもりだったので最初の依頼と同じ退魔師が向かったので、生霊が違う事は分かりましたが意思の疎通は出来ていないそうです』
微妙に残念そうに職員が答えた。
あ〜。
何らかの形で依頼に失敗したと思って最初の退魔師に行かせたのか。
まあ、完全に間違った対応って訳じゃあないけど、それのせいで依頼人側にとっては解決が更に遅れたって事で退魔協会に対する失望はより深まったんじゃない?
つうか、力技で生霊を祓ったところでまた戻ってくる可能性は普通の恨みの場合でもあるんだから、最初に死んだ悪霊じゃ無くて生霊だと分かった時点でしっかり生霊と対話できる退魔師を呼べば良かったのに。
退魔協会にどのくらい黒魔術師が居るのか聞きたいところだけど、ここで聞いたら自分が黒魔術師だって認める事になって色々と聞かれそうで嫌なんだよなぁ。
今回の依頼がウチらに来た事を考えると、私が黒魔術師の適性持ちだって言うのは既にバレているみたいだし、こう言う依頼で黒魔術師が必要だって言うのも協会側が把握しているっぽい。
本当にマジで、退魔協会が何処まで分かっているのか、知りたい!
それこそあのデータベースを作った西田の霊でも呼び出して退魔協会をハッキングさせたいよ〜。
でも、考えてみたら退魔協会のお偉いさんとかはメールとかチャットアプリとかは使ってなさそうだから、ハッキングしても情報はあまり入手出来ないかな?
盗聴器でも設置したいところだなぁ。
・・・そんな物に一日中耳を傾けている暇は無いけど。
「取り敢えず、生霊を祓えれば最低限の依頼達成にはなるんですね?
原因解明及び解決は出来たらよし、出来なくてもペナルティは無いと言う理解で大丈夫ですか」
碧が確認の念押しをした。
『その通りです』
「では、依頼を受けますので詳細を送って下さい」
私の頷きを見て碧が職員に言った。
さて。
一体何が起きているんだろうね?
依頼主の娘が生霊になって霊体離脱しまくっちゃうって言うならまだしも、次から次へと違う生霊に祟られるなんて変過ぎる。
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