第768話 馬鹿仲間?
『凛さん、今すぐ心当たりがあるのはウチの親戚でスキー馬鹿な子なんだけど、彼女って冬はスキー三昧な毎日を満喫するの!って言って仕事を受けないから教えるのもやってくれない可能性が高いと思うの。
雪がなくなったら普通に退魔師として働いているから弟子の面倒も見るとは思うけど、そんなのでも良いのかしら?
もっと常識的な術者が良かったら伝手に聞いて回るからもう少し時間が必要なのよねぇ』
碧ママが碧が質問メールを送った翌日にチャットアプリで電話してきた。
忙しいだろうに、ありがたいし・・・ある意味スノボ馬鹿な兄貴と同類らしい高木さんにはぴったりかも?
「え、誰それ?」
碧が横から顔を突き出して尋ねる。
『聖子ちゃんよ。
貴女もよく遊んで貰ったでしょ?』
「え、聖子さん??
いつの間に北海道に引っ越したの?!」
碧が驚いたように尋ねた。
『あら、聞いてなかった?
雪質が満足できない!!って言って一昨年の春に引っ越したのよ』
マジでスキー狂らしい。
兄貴もスノボの為に北海道の大学を選び彼方で働いているけど、この聖子さんとやらもそれに近い感じなのかな?
なんか都合が良過ぎる相手て気持ち悪いぐらいだが、考えてみたら諏訪の退魔師の一族の人間が北海道に移住するとしたら、それこそパウダースノー目当てぐらいしかあまり理由は無さそうだよね。
退魔師に転勤なんてないんだから。
これが退魔協会からの紹介だったら罠を疑うところだが、碧ママが罠をかける理由は無いだろうし、碧が親しかった親戚なら人格的にも多分問題はないだろう。
「高木さんもかなり重度のスノボ狂だと思うんで、その方と気が合いそうです。
今の時期でもお話をお伺うことは可能そうですか?」
流石に春まで話を聞くのさえ待つ事になると時間がかかり過ぎな気がする。
『夜なら問題ないと思うわ。
ニセコに住んでいるんだけど、いつだったら時間が取れるか聞いてみましょうか?』
碧ママが尋ねてくれた。
「是非お願いします!
ちなみに、兄貴の彼女さんが直ぐにニセコに行けるかはちょっと私も分からないので、もしも相手の方がよろしいのでしたら連絡先だけお伺いして、直接高木の方からお伺いするのに良い日を相談させてもらう形でもいいですか?」
2人で話し合えば良い事なのだ。私と碧ママが間に入って4人で伝言ゲームをするのは時間の無駄だろう。
札幌市内にいるなら高木さんも比較的柔軟に予定を組めるだろうが、流石にニセコはそこまで気軽に会いに行けないかも知れないので、空いていると言われた日に『じゃあお伺いさせますね!』と安易には言えない。
まあ、向こうもスキー以外に予定がないっぽいからニセコで会う分にはいつでも良いんじゃないかと思うけど。
昔風の気質な人だったらちゃんと紹介者に予約を手配して貰ってしっかり筋を通さないと怒る可能性が高いかもだが、碧が遊んで貰った程度の年齢なら時間効率を考えて直接のやり取りで文句を言わないだろう。
多分。
第一、兄貴たちも相手の聖子さんとやらも日中はゲレンデにいるせいで碌にメールを見てないとしたら、余計連絡にやり取りに時間が掛かりそうだし。
それとも高木さんはもうそろそろ新年の仕事始めになっているんかね?
フリーランスだと年末年始の休みってガッツリ多めに取るのか、それとも世間一般と合わせるのか、どっちなんだろ?
『そうね、その方が良さそうよね。
連絡手段を聞いて伝えるわ』
フリーランサーの休暇に関して考えている間に碧ママがあっさり頷き、碧とちょっと雑談してから通話を切った。
「この聖子さんってどんな人なのか、聞いても良い?」
碧ママの判断は信頼しているし、碧も気が合う人っぽいから大丈夫だとは思うけど、全く何も知らないのに紹介するのはちょっと無責任な気がするからね。
「う〜ん、三度の飯よりもスキーが好きなちょっと変わり者?
かなり個性的なんだけど、それを無理に変える必要はないって言い切って好きなように生きてる人だね。
お陰でまだ独身〜」
碧が教えてくれた。
退魔師ってだけで結婚のハードルが高くなりそうだが、それに加えてそこまでスキー狂だとしたら、確かに結婚は難しそう。
旧家とは絶対に合わなそうだろうし、一般人相手に結婚する場合は職業に事をどう説明するか悩ましいだろう。
つうか、一般人に退魔師の存在を説明できたとしても、殺傷能力が高い魔術師と結婚したがる一般人って少なそう
男性って妻が自分より稼いでいたり強かったりするのを嫌がる傾向が強いってどっかで読んだ気がするけど、表立って明言しなくても今でも裏ではこっそりそれって続いていそう。
しかも子供もそんな能力を持って生まれてくるかもなんだし。
兄貴みたいな元厨二病患者だったら気にしないかもだけど、もしかしたら段々嫉妬してくる可能性も高そうだし、中々前途多難だね。
まあ、取り敢えずは紹介するだけなら何とかなるだろう。
多分。
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