第761話 情報開示はどうするの?
明けましておめでとうございます!
今年もどうか宜しくお願いします
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「そう言えば、彼女さんにウチの家系の話はしてあるの?」
水切りをキュキュっと動かして窓拭きの仕上げをしながら兄貴に聞く。
前回の祟りとお祓いの時にどこまで話したんだろ?
あの前だったら話したとしても全く現実味のない話で、それこそ自分ちの先祖が侍だったか農家だったかとかレベルの話になると思う。
だが、あの祟りで実際に悪霊と言うのが存在するのを実体験し、私に霊障を見破られた上で解決に繋がる相手まで紹介された事で、子供の頃に母親から聞かれた話が単なる黒歴史への開幕では無かった事が判明したのだ。
結婚して子供を作る気があるなら知らせておいた方がいいだろう。
まあ、『俺たちの子が霊能力者になるかも』と言うか、『ウチの先祖に退魔師が居たんだって』程度で抑えるかは兄貴次第だが。
「あ〜。
一応、あの慰霊碑騒動の後に、先祖が退魔師だって話を子供の頃に聞いたけどマジで悪霊とかって存在するんだなって笑い話的にはしたけど、それ以上の事は話してない。
つうか、話し合う様な情報も持ってないし。
やっぱちゃんと話し合うべきかな?」
落ち着きなく窓拭きの道具とかを弄っていた兄貴が手を止め、こちらをしっかりと向いて聞いてきた。
おや。
これが本当に聴きたかった事だったんだね。
「う〜ん、退魔師の先祖の話をした時に極端に変な反応はしなかったんでしょ?
だったら別にどっちでも良いんじゃない?
キリスト教なんかは『魔術師は教会のエクソシストにならない限り悪魔の下僕だ』みたいな考え方をする宗派もあるみたいだから、子供を教会に入れて一生独身で居させる事に賛成できないなら先にしっかり話し合っておくべきだと思うけど、そう言う狂信的な考え方がないなら別にどっちでも良いでしょ?
才能が発現する可能性はあまり高くないし、出てきても高校生ぐらいまでは私が抑えておけるし。
才能があって、高校生になって退魔師になるって子供が決めて揉めても、そのくらいの年齢で進路に関して親と子で意見が一致しないのはよくある事だし」
能力持ちで封印出来ない場合だと、子供が機嫌を損ねるたびに突風が吹いたり部屋で火が出たりしたら困るし、抱き上げている母親の思考を子供が読んでしまうも問題だ。
だが、封印出来るのだ。
子育て中の実害はほぼ無い筈。
それに小さな子がこれだけ魔素が薄い世界で早くから能力を発現させる確率は低いだろう。
碧は小学校高学年ぐらいで発現したらしいが、彼女は例外だろうし。
あれだけ魔素が豊富で、日常生活で魔道具を使うことに人々が慣れていた前世でも10歳で発現している子はそれほど多くは無かった。
適性のテストで分かった段階で魔力の使い方を教え込んで色々補助することで早く発現するのだが、他国ではそれこそ15歳前後での発現が平均的だと聞いた気がする。
15歳ぐらいで能力が発現するなら、高校生にもなれば親もある程度子離れ出来た方が良いぐらいだし、遠くの退魔師の所に住み込みで弟子入りしたとしても留学したとか全寮制の高校に入ったとか思えば大した違いはない。
「そっか。
そうだよな!
俺だって霊能力者みたいな子が生まれた時にどうすればいいのか分かっていないんだし、話し合ったところで想像と仮定を積み重ねるだけであまり意味はないよな!」
ちょっとほっとした様に兄貴が言った。
うん?
「兄貴が心配だったの?
それとも掘り下げて話したら捨てられると思っているとか?」
不安があるなら話し合うべきだよ?
それに、自分の遺伝子が原因で子供が才能持ちで生まれてきたんだったら、あんたはしっかり子供を支えなさいよ??
奥さんはある意味巻き込まれ事故の被害者と言えないこともないんだから子供の能力に上手く対処出来なくてもしょうがないかも知れないけど、兄貴はちゃんと受け止めて支えないとダメだぞ!
「いやまぁ、ホラー映画みたいに子供が俺たちを部屋の中でぶん回す様なことになったらちょっと怖いかな〜と思って」
ポリポリと頬を掻きながら兄貴が言った。
おっと。
物理的に怖かったのね。
ポルターガイスト的な危険を危惧していたのか。
これだけ魔素が薄い世界じゃあ無理だと思うな。
大人になってしっかり魔力を溜め込んで使える様になったら短時間なら適性次第では可能だろうけど。
「まあ、まず無いとは思うけど、もしも子供が泣いた時に投げ飛ばされたりしたら即座に私を呼んで。
流石にそこまで力が強い子を飛行機に乗せたら危険かもだから、旅費を払ってくれたら私が北海道に行って適度に育つまで能力を封じるから」
大人を吹き飛ばせるレベル能力を幼児が発現することなんてまず無いと思うが、もしも例外的に発現した場合、子供じゃあ飛行機の中で力を振るったら自分を含めて数百人の人間が死ぬかもって事を理解しない可能性が高いから危険だ。
「そっかぁ・・・大丈夫そうで安心したよ」
それなりに兄貴も自分の結婚って事で真面目に考えていた様だね。
「ちなみに、彼女さんに今話すなら良いけど、言わないでおいて後で子供が出来てから何らかの理由で話すことになった場合は結婚を決めて両親への挨拶をする時に私に尋ねて聞いたとは言わずに、あの祟り騒動のすぐ後ぐらいに聞いたって匂わせた方が良いと思うよ?
結婚を決めてから詳しく教わったんだったら自分にも告知するべきだったって彼女さんが怒る可能性が高い気がする」
つうか、そう考えるとやっぱ現時点で彼女さんに言った方が良いかも?
ま、そこら辺は私の知ったこっちゃないね。
兄貴の結婚なんだ。
兄貴が決めれば良い。
私はやっと窓拭きが終わったので暖かい家の中に戻る!
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