第760話 連帯責任
「え、折角才能があるのに封じるのか?!」
兄貴がありえない!!という感じで聞き返してきた。
「退魔師って要は魔術師とか超能力者みたいなもんだから、普通の一般人にはない手段で悪事が出来る訳じゃない?
だから、悪事を働いて捕まったら罰則が厳しいし、安易に危険な技を考え足らずな人に教えない様に、教える側にも弟子が問題を起こした時の連帯責任が課されるの。
だから弟子入りする為の最初の礼金が下手したら百万円以上するし、月謝みたいのも年数十万から百万を超える事もあるんだって。
こんだけ掛けてもちゃんと一人前になれれば十分に元は取れるけど、人格的に問題があるから一人前と認められないって師匠に判断されたり、どうしても上手く術を覚えられなかったらりしたら結局能力を封じられる上に返金は無いんだから、本人が真剣にやる気があるとか家業の後継ぎだとでも言うんじゃない限り、迂闊に手を出さずに封印しちゃう方が良いかもなんだって」
ある意味、医大に子供を入れるのと同じかな?
あれも入学金や年間授業料が高い上に最低でも六年だか掛かるんだよね?
医者も収入は良いって話だけど勤務医なんかは過酷な労働時間を強いられるらしいから、退魔師の方がワークライフバランスに関しては勝ちだけどね。
「マジか。
・・・連帯責任って事は、当然本人にも賠償責任があるんだよな?」
兄貴が恐る恐る聞いてきた。
「当然。
とは言え、見習いじゃあ払えない事が多いだろうけど。
その場合は連帯債務者の師匠が一旦払って、師匠に借金が残る形になるね。
ちなみに、退魔師の才能って何通りかあるんだよね。
幽霊とか精神とかに影響を及ぼしやすいタイプと、ゲームの神官みたいに治療が出来るタイプと、攻撃魔術師っぽい感じに火や水や風や大地みたいな所謂四大元素への影響力があるタイプと。
神官タイプは余程のことがない限りそれ程悪事は出来ないけど、代わりに医師免許を持つか医者の監督下でしか治療行為を出来ない法律があるから働き方にそれなりに不満を感じる可能性は高いって話だね。
攻撃魔術師系はマジでうっかり火事を起こしたり水を氾濫させたりみたいな事をやらかして建物を大きく破損させたりする可能性がある。
幽霊とか精神系のはうっかりはあまりないけど、意図的に悪事を働こうと思ったら一番長く気付かれずに出来ちゃう可能性が高いから、発覚時の賠償額が一番大きいかも?」
ついでに、黒魔術師系はこっそり悪用出来るリスクが高すぎるから、発覚した時にお目溢しを貰えずに死刑になる可能性も一番高いんじゃないかなぁ。
もしくは、前世の私みたいに権力者に奴隷の如く隷属させられて扱き使われる事になるか。
死刑になるか否かはこの世界の隷属系な術がどの程度進んでいるかによるんだろうな。
しっかり首枷を科せられないなら死刑一択になるだろう。
前世の私は死ぬ方が
「え、霊感があったら誰でも幽霊が見える訳じゃあないのか?」
兄貴が驚いた様に言ってきた。
「う〜ん、悪霊は一般人よりは視やすいし、霊力の塊としてならそれなりに集中すればどの能力タイプでも見えるけど、それこそ念じるだけで火を起こせる様な退魔師は普通の無害な幽霊の容姿をはっきりとは分からない事が多いし、死んだ人の霊を召喚したりも出来ないね」
ある意味、退魔師ってかなり汎用性がないんだよねぇ。
「なんか思っていたのと違うな・・・」
「私は幽霊が見えて精神に影響できる方向に才能があるから、能力を封じたいなら出来るけど、教えるのはどのタイプでもほぼ無理だと思うし嫌だからね。
かなりの部分が独学だから上手く教えられる自信が無いし、連帯責任なんて絶対に嫌だし、身内の甘えがあると却って教えにくいと思うし。
ただまあ、人に才能が発現しているかは確認出来るから、子供が生まれたらお正月なりお盆なりに定期的に帰ってきたら?
前もって連絡してくれないと長期の依頼で居ない可能性もゼロじゃあないけど」
私の技術は最終結果である『悪霊を祓う』や『呪詛返し』に関しては問題ないが、やり方は日本の退魔師と大分と違う可能性があるので、うっかり子供に教えてそれが退魔協会の方へ知られたりするのは絶対に避けたい。
まあ、そうじゃなくても人を教えるのなんて面倒で嫌だし。
「そうか・・・」
ちょっと気落ちしたみたいに兄貴が言った。
「まあ、私と同じ感じだったら高校生ぐらいまで発現しないかもだし、もっと早く力が出てきたらそれこそ高校生ぐらいで自分の将来に関してしっかり考えて決められる年齢になるまで能力を一時的に封じておいて、あとは本人の自己責任で決めさせれば良いんだから、それ程深刻に悩まなくても良いんじゃない?
一応碧の実家経由で師匠役が出来る退魔師も紹介してもらえると思うし」
普通に大学に通わせる上にどっかに弟子入りとなったら出費は嵩むけどね〜。
ある意味、弟子入りの費用は奨学金扱いで本人の借金にすれば良いんじゃないかな?
その方が修行も真剣にするでしょう。
第一、ウチの両親も祖父母も一般人なのだ。兄貴のところから能力持ちが生まれる可能性はそう高くないだろう。
それよりも、彼女とうちの家族及び兄貴と彼女の家族が上手くやれるかの方が重要でしょ。
・・・一応、彼女さんにそっとクルミで触れさせてどんな風に私たちの事を感じたのか、確認しておこうかなぁ。
万が一兄貴を騙して託卵を考えていたら嫌だし、そうじゃなくてもうちの家族の何かにドン引きしてるならそれも知っておきたい。
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