第756話 クリスマスって
「うちって母親が学生時代にイギリスへ留学していた関係でクリスマスは25日に祝うんだよね。
その方が将来私や翔が誰かと付き合うようになってもクリスマスのデートと家族とのイベントがバッティングしなくて良いって言うのが母の主張〜」
碧が車の中で教えてくれた。
なるほど、流石に白龍さまの愛し子が生まれる家系の藤山家は留学できないが、他だったら海外に行って異国の除霊の術を見てくるのもありなのか。
そうじゃなくって単にイギリスの歴史とか政治学とか学ぶんでも面白そうだし。
スキンシップの多い藤山家の慣習も碧ママの能力を使う為だけではなく、海外での生活経験から来てるのかな?
「へぇぇ、海外じゃあ24日がメインじゃないんだ?
まあ、確かに25日がキリストの誕生日って話なんだし、その前日の方が盛り上がって25日当日には店のクリスマス用売り場が片付けられてお正月用品売り場に変わっているのってちょっと不思議っちゃあ不思議だよね」
バレンタインとか誕生日だって当日に祝うのだ。
何故かクリスマスだけ日本ではイブがメインになったのってなんでなんだろ?
「まあ、アメリカなんかは更に早い感謝祭で盛り上がるらしいけど、イギリスは24日は精々夜に教会に行ってクリスマスキャロルを色々と歌いまくるキャロル礼拝をやる程度で、25日の朝にクリスマス礼拝して昼食でクリスマス・ディナーを楽しんで、その後にプレゼントを開けるって感じらしい。
しかも26日まで祝日で町中スーパーとかも含めてほとんどの店が25日と26日は閉まるから、誰かの家に泊まりがけで呼ばれているんでもない限り、ちゃんと食料品を買い込んでおかないと下手したら冷凍食品かインスタントで侘しく凌ぐ羽目になるんだって」
「へぇぇ。
ある意味、クリスマスが日本のお正月みたいな感じなんだね」
クリスマスでそこまで本格的に休みになるなんて、なんちゃって祝賀な日本では信じがたいけど、考えてみたらイギリスとかはもっと真面目にキリスト教が信仰されているんだもんね。
日本だってお盆に閉まる店が多いことを考えると、そんなものなのかな?
「だね〜。
以前冬休みに長期休暇でクリスマス前から1月上旬まで遊びにきてた母親の留学先の友人が、イブのクリスマスケーキの予約品受け取りの行列にびっくりしてたからね。
三が日はウチが忙しかったせいで街の閑散とした様子はイマイチ実感が湧かなかったみたいだけど」
ははは。
確かにクリスマスイブのケーキの行列は凄いよねぇ。
「25日だったらケーキが割引になってそうだね。
でも、売れ残り期待じゃあちょっと危険かな?」
今日のケーキはどうなんだろ?
確実にあるって感じだから予約しているのかな?
それとも手作り??
「昔はケーキを母親が作ってくれていたんだけど、最近は色んな店のを年ごとに変えて予約してるね。
イギリスからの客人が来た年はついでにあっち風のクリスマスケーキ・・・っていうかドライフルーツの入ったおひとり様サイズのパイも作ってたけど」
やはり割引目当ての残り物狙いはしないらしい。
「イギリスのクリスマスはショートケーキじゃなくってパイなんだ?」
ちょっと意外。
でも、考えてみたらそっちの方が正当な伝統的クリスマスの祝い料理っぽいよね。
と言うか、昔だったら冬に苺のケーキなんて、無理だろう。
歴史的背景を考えるなら、キリストってイスラエルの辺で生まれたらしいから真冬でも暑そうだし、生クリームのケーキなんて夢のまた夢ってやつだろうねぇ。
イギリスのパイが本場のイスラエルでも食べられていたかは知らないが。
と言うか、イスラエルはユダヤ教だし、キリストが生まれたベツレヘムはパレスチナ自治区内って話だから更にキリスト教から遠いイスラム教だよね?
そう考えると、宗教なんて発生した場所で信仰されず、権力者に都合がいいと受け入れられた遠隔地で長続きするんだから、いい加減なもんだよねぇ。
仏教だってインドで発祥したらしいけどあっちじゃあ下手をしたらヒンズー教に弾圧される側だし。
その点、少なくとも神道はローカルだけど発祥の地で信仰されてる。
「ミンスミートパイって名前だからミンチが入っているのかと思ったらスパイスが効いたドライフルーツが詰まったタルトっぽいパイだった」
碧が微妙そうな声でパイに関する私の質問に答えた。
あまり美味しく無かったのかな?
まあ、イギリスは料理が不味いので有名な国だしね。
「ちなみに、プレゼントのやり取りなんてないよね??
それとも何か翔くんに買っておくべき??」
クリスマスプレゼントって言ったら付き合っている相手以外だったら子供用ってイメージだ。
翔くんは既に『子供』と言う感じじゃ無いけど、ケーキを食べさせて貰うなら何か買っておくべきなのかな??
「いやいやまさか。
ケーキは食べるけど、ウチは昔からクリスマスプレゼントは無かったから。
代わりにお正月のお年玉がちょっと多めって話だったけど、あれも手伝いを色々やる分のバイト代に近いよね」
碧が笑いながら言った。
「おやま。
子供でもクリスマスプレゼントなしとはちょっと切ないね。
でもまあ、神社の宮司さんが子供にキリスト教のイベントのプレゼントをあげるのは不味いか」
氏子さん達にバレなきゃ良いかもだけど、子供って色々とペラペラ喋っちゃうからねぇ。
「まあ、両親はお互いにプレゼントを送り合っているっぽいけどね〜」
碧が笑いながら教えてくれた。
あら。
なんかそれは素敵じゃない。
そうだよね、子供へのプレゼントなんかよりもお互いへの夫婦の労いと愛情の確認みたいなイベントの方が良さげだ。
クリスマスじゃなくって結婚記念日とかの方が更に良さげだけど、そうするとどっちかがうっかり忘れかねないのかな?
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