第748話 使い道?
武器系が大量に並んでいたブロックの横は防具系。
とは言え、刀の蒐集に比べると鎧は集めにくいのか、数は少なかった。
まあそれに古くて劣化した鎧は実用性が無いだろうし、それこそ戦国時代が終わったら武士の時代だった江戸時代ですら鎧はほぼ使われなかったらしいからね。
だからこそすらりと細い美術品のような日本刀が江戸時代になって流行ったってどっかで読んだ気がする。
戦国時代はもっと無骨な刀を消耗品として使ったが、江戸時代になって平和な世の中で誰も鎧を着なくなったから、着物しか着ていない相手ならほっそりとした美術品のような刀を差していても問題はないし、もしもの時の殺傷力だって十分だ。
鎧を着ている相手だったら美術品的な細い刀じゃ余程の凄腕が場所と角度を選んで切り付けない限り一発で折れちゃう可能性が高すぎただろう。
鎧への思い入れもあまり無かったのか、蔵にあった鎧はどれも特に想いも穢れも溜まっていなかった。
捨てなきゃいけない程場所に困っていなかったから保管していたってだけみたい。
次のブロックにはもっと日常品っぽい細々とした物が並べてあった。
意外にも、こちらの方がなんか付喪神憑きっぽい感じに想いが凝っている感じなのが多い。
ペタペタと付箋を貼っていくが、やっぱ武器じゃないからか籠っている想いも穏やかっぽいのが多い。
まあ、それでも無造作に捨てられたり不本意な使い方をされたら荒ぶるだろうから、使い方には要注意だろうけど。
「こう言う日常品で付喪神憑きのってどうするのかな?
蔵に押し込まれて放置されていたって事はもう使っていないって事なんだろうけど」
碧に聞いてみる。
藤山家は白龍さま由来のあの凄い硯があるから必要ないけど、退魔師だったら符を作るのに付喪神憑きの硯がある方が、少なくとも一般の品を今から買うよりは良いんじゃないかと思うけど。
何も効果のない硯を使っても、自分の魔力をがっつり込めれば符を描けるが・・・必要な魔力量は増える。
ある意味、付喪神憑きの硯だったら過去の使用者の想いで効果をブースト出来るんだから、退魔師で新しい道具を揃えなきゃいけない様な新米だったらぜひ欲しい言われそうなもんだけど。
「修理が実用的じゃないレベルで壊れていたり、今じゃあ使わない道具だったらそう言うのを祈祷して宥めながら燃やして供養くれる神社に頼むのが一番無難だろうね。
実用性があるのは一応そう言うのを専門に扱う業者がいるからそっちに売るんじゃない?」
碧が言った。
なる程。
ある意味、付喪神憑きな品って地球では数が少ない魔道具に近い物なのだ。
その利用価値を分かっている人間ならそれなりのお金を出すか。
実用性が無いのでも、珍しいのだったらコレクターとかが欲しがるかも?
変に悪用されない事を期待しよう。
武器じゃないから意図的に穢して誰かを害するのに使うとでも言うんじゃない限り、それ程物騒な事にはならないと思うが。
考えてみたら、ここ150年間は刀なんぞ使わない時代だったんだ。日常品の方が毎日使われるし、江戸時代だって刀に執着して想いを込めていたのは一部だけだっただろう。
そう考えると、見た目が立派な日本刀よりもちょっとボロい硯や湯呑みの方が誰かに大切にされてきたのはある意味当然かも?
人を殺すための道具より日常品の方が大切にされたのは平和な世の中だった証拠だよね。
値段的な価値に引っ張られて何とはなく日本刀の方が大切にされなきゃいけないような気がしがちだけど、考えてみたら武器を大切にするのは物騒な時代だからだと想定すると、付喪神が生じるぐらい日常品が大切に扱われる時代が続いたのは良いことだ。
でも。
今だったら付喪神憑きになる程大切にされる物なんてなさそう。
現代で一番身近で大切にされる道具って携帯とかタブレット、もしくはPCだろう。
どれも数年で次世代モデルに乗り換えるのを前提として作られ、販売されている。
ハイスペックである必要がないから買ったのを大切に使おうと思っても、勝手にオペレーティングシステムとか使っているオフィス系のアプリとかがどんどんアップグレードされて、やる作業は変わらないのに必要なメモリーや処理能力が増えていく上、五年か十年程度で『もうサポートしないから買い替えないと外部から攻撃されて乗っ取られても知らんよ』ってお知らせが来るようになる。
スタンドアローンで使うから外部からの攻撃の危険は無いって言ってもバッテリーがダメになるし、バッテリーの製造も終わってしまうので買い替えたところで購入した『新品』も使われていないだけで古くてそれなりに機能低下しちゃっている。
どうあがいても、付喪神化するだけの期間はもたないよね〜。
日常品もしっかり良いのを買うよりは100円ショップとかで適当に安物を買って壊れたら捨てて買い替えって感じだし。
まあ、これは単に私が高級品を日常使い出来ない貧乏性だからかもだけどね。
人件費が上がったせいか、それとも大量生産で日常使いの品物の値段が下がったせいか、大抵の物は壊れても修理するより買い替えた方が安いぐらいだからねぇ。
却って壊れた物を処分するのが大変なぐらいだ。
ある意味、今回の依頼人の蔵が凄いことになっていたのも、色々と捨てるのが面倒になって『いつか直すかも』って言い訳をして全部あそこに放り込んだからなんだろうね。
今じゃあ物を捨てるのにもお金が掛かる事が多いから。
付喪神憑きなタブレットがあったら、ガンガン魔力をあげて電子精霊にでも進化しないか試すんだけどなぁ。
残念。
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