第739話 制御出来てないと早く老けるぞ〜
「亜弥ちゃん大丈夫〜?
なんか変な音がするって・・・誰かに恨まれちゃったのかしらぁ?」
暫く雑談しながら待っていたら玄関に人が来た気配がしたと思ったら、明るい声と共に写真に写っていた女性が部屋に入ってきた。
写真での印象ほどはケバくない。
写真写りが悪いのか、今日は意図してケバさを抑えているのか。
印象を良くしようとしているなら、ここでそんな明るい声で嬉しげに声を掛けちゃあ駄目だろうに。
取り敢えず、相手がこちらの事を聞いて来る前に先制攻撃だ。
「この雀の霊に霊力を提供して嫌がらせをしていたのは貴女ですね。
今すぐこれと、他の使役している霊との関係を絶って下さい」
魔力を与えて見える様にした雀霊をぐいっと押し出して問題無用に要求を叩きつける。
自己紹介してもしょうがないからね〜。
ちゃんとした紹介は沙耶とやらの親や亜弥さんの両親を呼んでからで良いだろう。
と言うか、退魔師って基本的に自己紹介をしないし、されないんだよねぇ。
ミステリアス路線を業界全体で狙っているのだろうか?
ちなみに、前もって決めておいた手順として沙耶が黒だった場合は私が責め立て、ぐちゃぐちゃ言っている間に亜弥さんがチャットアプリで両親と沙耶の方の叔母夫婦を呼びつける事になっている。
「はぁ?
あんた誰よ。
第一、雀なんてどこにでもいるでしょ。
そんな雀に嫌がらせの芸を仕込むほど私も暇じゃないわよ」
一気に声が低くなった沙耶がこちらを睨む。
あれ?
もしかして自分の使い魔が分かってない?
魔力のリンクがはっきり視えるんだけど。
それともしらばっくれているだけかな?
私かクルミが触れれば何を考えているか分かるんだけど、流石に黒魔術師の適性持ち相手に露骨に考えを読もうとするのはやらない方が良いだろう。
「こちらの女性が悪戯をする様に言ってきたのよね?」
雀霊に敢えて声を出して尋ねる。
『そう〜。
今もなんか力をくれてるし』
雀がのほほんと答えた。
あれれ?
もしかして、魔力の制御方法が分からなくて使い魔とのリンクも自力でコントロール出来てないのかな?
「なによ、ちょっと悪戯したら面白いでしょって言っただけじゃない!
そこら辺の動物霊がこっちの言う事を聞いて気紛れに悪戯したって私のせいじゃないわ!
ちょっと悪戯や嫌がらせを唆す様なことは誰だって口にするでしょう!」
不利になったと思ったのか、沙耶が怒り出した。
「他者へ害を為すよう霊を促し、対価として霊力を与えるのは違法行為です。
今までは『何をやっているのか知らなかった』で済みますが、今回正式に退魔協会の退魔師である我々から止めるように勧告されました。今後も同じ様な行動を続けた場合、退魔師の違法行為と同じ様に通常の傷害罪より厳しく罰されますよ」
碧が淡々と告げる。
「沙耶ちゃん。
どうしてこんな事を」
バン!とドアが再度開き、今度は中年の女性が部屋に飛び込んできた。
これが亜弥さんの叔母って人かな?
一応前もって『相談したい事があるかもだが都合はどうだろう』と亜弥さんが連絡していたから、呼び出す前からこちらに向かっていたのかな?
想定よりも到着が早い。
まあ、その方がさっさと話を進められて良いんだけど。
亜弥さんの両親は元々家に居たので、叔母さんの後にさっさと続いて入ってきた。
「お母様、何を言っているの??
単にそこら辺にいる霊に悪戯を唆しただけでしょ?
今までだってやってきたけど問題なんか無かったわよ!!」
イライラと髪の毛をかき上げながら沙耶が怒鳴った。
「動物や人間の霊は以前から見えていたのですか?」
碧が尋ねる。
ある意味、見えていたんだとしたら私よりも見鬼の才があるのかも?
私は15歳で記憶が覚醒してからでも、魔力視をしようと集中しなくちゃ普通の霊は見えない事が多いからね。
「そうよ!
だけどそんな事を口に出したら変人扱いされるから何も言わなかったけど。でも、誰もいないところで話しかけたりしても今まで問題なんか起きなかったわ!」
「私に相談してくれたらちゃんと対応できる人を紹介したのに・・・」
沙耶の母親が溜め息を吐きながら言った。
「お母様はいつもパーティとかチャリティとかで忙しいじゃない!
お父様に言ったら冗談だと思って笑われたし、もしも悩み事があるなら一緒にカウンセリングに行こうなんて言われたのよ!?」
おやま。
どうやら沙耶は母親よりも父親に相談するタイプだった様だが、父親は退魔師とかと縁のない家の人間だったみたいだ。
確かに、親に相談したら精神科医に会いに行こうと優しく言われるのは堪えそう。
「悪霊や呪いって言うのは実在するし、高宮家にも退魔師の血が入っているんだよ。
私や
今回の事は内輪に抑えられるだろうか?」
依頼人がちょっと深刻そうな顔でこちらに聞いてきた。
「退魔師や、退魔師としての力があるのを理解した上で意図的に人に害をなした場合は厳しく罰せられますが、今回はまだ『出来ると思っていなかったのが偶然成功してしまった』の範疇に収まりますから、大丈夫です。
ただ、今後に関しては退魔師と同じ様な規定が適用されますので、しっかり自分で力を制御するか、退魔協会に依頼して能力を封じて貰う方が良いでしょう。
こう言った霊力は本人の潜在的な願いや、ちょっとした瞬間的怒りに反応して術となってしまう事もありますので」
碧が穏やかに説明した。
「ちなみに、この雀霊の他に何体かの霊と契約していると思いますが、本人に上手くその契約自体も制御出来ていないようなので、うっかりこのままちゃんと訓練せずに続けるとどんどん契約を重ねて霊力を枯渇させてしまう可能性もあります。
恒常的に霊力が不足した状態だと体調が悪くなりがちですし、見た目も早く老けますよ」
まあ、写真のようなケバい化粧が趣味なら魔力が潤沢にあっても老けて見えると思うが。
と言うか、もしかしてケバい化粧はうっかり使い魔契約をやり過ぎて窶れたのを誤魔化す為だったのかな?
「え?!
今すぐに契約を切る方法を教えて!!」
沙耶が飛びついてきた。
うん、そう言うと思ったよ。
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