第738話 クレームは回避しなくちゃ
「沙耶は従姉妹で、父の妹である叔母の娘なんです。
お父さんが婿入りして一族の会社で働いているからか、親族が集まる時なんかは必ず顔を出しますね。
私たちの世代で女の子は私と彼女だけなので小さい頃は一緒に遊んでいたんですが、中学ぐらいから比べられて嫌になったのか何かにつけてマウントを取りたがるようになって。
鬱陶しいので最近はあまり顔を合わせていなかったんですが、結婚するって話になって集まった際に顔を出してきてからはなんかこう・・・丸くなって『今までごめんね〜』という感じで良くあちこちで会おうとするようになったんです」
亜弥さんが容疑者の沙耶とか言う女性の事を説明し始めた。
丸くなったのは言葉だけで、実際はマウント取りから更にグレードアップして嫌がらせの使い魔をあちこちに派遣していたって感じかね?
まあ、人って気に食わないだけで嫌がらせ程度だったら普通にやるし、やられたら亜弥さんもそれ程気にしていなかったみたいだから沙耶さんも軽い気持ちでやっているのかな?
でも、親族間のマウント取りにしちゃあちょっとやり過ぎだよね?
しかもピンポイントに結婚の話題が出ると嫌がらせをさせる様にしている。
「もしかして、沙耶さんって結婚願望が強いとか?」
さっきの写真に一緒に写っていた連中は大学生っぽい感じだったら、本人もその程度の年齢だと思うのだが・・・もしかして、若いツバメ候補と遊ぶのが好きで実はケバい化粧で老けて見えるんじゃなくってあの見た目相応の歳だったり??
「沙耶って母親が女だからって最初から後継ぎ候補に含まれなくて、父親が婿だから一族の人間より一歩下に見られているって子供の頃から文句を言っていて・・・昔から本家の従兄弟の誰かと結婚したいって狙っていたんです。
だから小さい頃からそちらの従兄弟達と仲良くしようと必死だったんですが・・・この間最後の従兄弟が結婚しちゃったんで、荒れているのかも?
従兄弟達に焦点を当てていたから他の『本人にとって相応しい』ランクの令息探しに一歩遅れたと思っているところに私が結婚するって話が出て、苛立ったのかも知れませんね」
微妙な顔で亜弥さんが言った。
今まで見向きもしなかった本家以外の男をこれから捕まえなければならないと方向転換を強いられて凹んでいるところに、マウントをとってきた従姉妹に東谷氏のような美青年を捕まえて見せびらかされたせいで怒りが爆発して才能が覚醒でもしたのかな?
本人達は単に親族に挨拶しただけで見せびらかしたつもりはないだろうけど、タイミングが悪かったようだ。
「その沙耶さん本人に会えればこの雀の霊に指示を出していたのが彼女かは分かります。
ちなみにそれを指摘したら本人が自発的に使い魔達を解放して悪戯に関して謝罪すると思いますか?」
無理やり使い魔契約を横から奪い取って破棄させるのは雀霊に危険だからなぁ。
本人が多少ダメージを負うの構わないが。
「今回の事件で
本気で謝るかは不明ですが・・・繰り返さなければ私としては構いませんので」
あっさりと亜弥さんが言った。
強いね〜。
東谷氏の方がちょっと窶れている気がするから、彼の方が今回の騒ぎで心労が大きかったのかも。
まあ、退魔師の存在を分かっている一族の一員なんだったら本人は詳しく知らなくても親世代の人間に叱って貰えば止めるだろう。
多分。
問題は、その後だよねぇ。
「その沙耶さんはどうやら退魔師になる才能があるようですね。
そこら辺の動物霊を操って悪戯をさせる事が出来たので、既にそれなりに他者へ害を及ぼせる事が証明されてしまったので退魔協会に彼女の事を報告する必要があります。
本人は退魔師になる気があると思いますか?」
碧が尋ねた。
「さぁ?
本家の従兄弟達を狙っている時は努力を惜しまない感じでしたが、勉強とかはあまり好きでは無かったようなので全く新しい技術を身につけたがるかは不明ですねぇ」
亜弥さんが肩を竦めて応じた。
「今回は本人も何が起きているのかはっきりとは分かっていなかったと思いますし、被害者が身内なので罰則はありませんが、今後同じような事をやった場合には自分の能力を知っている上で敢えて他者を害したと言うことになり、一般の傷害罪よりも厳しい罰則が課されるようになりますよ」
まあ、ここら辺は本人やその両親にでも説明しなきゃいけない事だろうけど。上流社会っぽい人たちの間では一族の人間が問題を起こしたら親族もとばっちりを受けそうだ。
ちゃんと問題点を話しておいかないとね。
「そうなんですか?
取り敢えず、両親と叔母夫婦も沙耶ご一緒に集まって貰って話をして頂く方が良さそうですね」
「・・・それだけ人を集めて実は沙耶さんが犯人じゃなかったら気不味いんですが、先に彼女だけ今日中にでも呼べません?」
それなりに地位も金もありそうな人達を集めて、思い違いでしたなんて事になったら退魔協会にクレームが行きそうだ。
「ちょっとじゃあ、『変な音がして怖いの、相談に乗ってくれない?』ってチャットを送ってみますね」
亜弥さんが言った。
なんだ。
大して仲良くしてなくてもチャットのIDは交換してるんだね。
さて。
本人はあっさり出てくるかな?
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