見出されてしまった
第734話 ちょっと嫌な予感のする『ご相談』
「何故か今日のキッチンカーはベビーカステラとたこ焼きを売ってた」
今日のウォーキングに出たら、こないだクレープを売っていたスペースにキッチンカーが停まっていたので期待を胸に近づいたのだが・・・何故かベビーカステラとたこ焼きを売っていた。
あの駅のそばのスペースって駅構内の店へ商品を届けたりするトラックが停まっている事が多かったんだけど、どうも利益率を上げる為にキッチンカーへ貸し出すことにしたらしい。日曜日には来てなかったけど、意外とキッチンカーが頻繁に来ているっぽい?
クレープ以外だとあまり興味がなかったので今までちゃんと見ていなかったのか、それともつい最近始まった事なのか知らないが、これからはウォーキングに行く際に是非とも毎回確認せねば。
・・・ハネナガかその仲間に確認してもらう方が早いんだけどね。
でもまあ、期待しているキッチンカーの確認という目的があったらウォーキングに出る気になる可能性が高いかもだし。
悪くは無いだろう。
今日はハズレだったけど。
「ベビーカステラとたこ焼きって意外な組み合わせだね」
碧が目を丸くして応じた。
「でしょ?
食べ物ってその匂いで客を呼び込む事が多いのに、たこ焼きをベビーカステラの横で焼いていたら匂いが変な風に混じって却って客を追い払いそうな気がするけど、どうなんだろ?」
ベビーカステラだけか、たこ焼きだけの方が売れるんじゃないの??
「まあ、ベビーカステラってそこまで香りが強く無いのかも?
もしくは、香りをずっと漂わせられる程焼き続けるレベルで客が来ないか。
・・・考えてみたら、ベビーカステラって家でたこ焼き器を使って作れるってネットで見た事がある気がするから、そのキッチンカーもたこ焼きの鉄盤をベビーカステラにも活用しているんじゃない?」
碧がちょっと思いがけない情報を教えてくれた。
マジか。
ベビーカステラってたこ焼きサイズなんだ。
考えた事が無かったな。
「今日は人が並んでいなかったから、クレープに比べると明らかに人気は低い感じだったね。
何でもっとクレープ屋をやるキッチンカーの人がいないんだろ?」
あの甘い匂いは非常に魅惑的なのに。
「ベビーカステラとクレープじゃあ、必要なトッピングとか素材の種類と量が全然違うからじゃない?
クレープって言ったらチョコバナナ生クリームあたりが定番だとは思うけど、その他に5種類から10種類ぐらいはメニューがあるだろうから必要コストが高くてリスキーなのかも」
碧が指摘する。
あ〜。
確かに、いちごとかベリー系の味って私はクレープに欲しく無いけど、あれも定番かも?
バナナだけでなく多種類のソースを幾つ仕入れるかを読み間違えると、利益どころか損失が出るのかもね。
参入障壁が低い分、キッチンカーってあまり利益率は高くなさそうだし。
客が並ぶぐらいに売れ行きが良ければ儲かるんだろうけど。
こないだのクレープのキッチンカーはちゃんと人が並んでいたんだから、クレープは人気だとは思うんだけどねぇ。
「まあ、それはさておき。
退魔協会から『ご相談』の電話があったんだけどさ、動き回ったり分裂する悪霊って居ると思う?」
冷蔵庫からプリンを取り出しながら碧が聞いてきた。
「う〜ん、屋敷内程度だったら動くだろうけど、悪霊化した霊って決まった場所に根付いていない限り何故か日光が苦手っぽい感じだから、あまり外は移動しないんじゃない?
分裂も元々人の集団が悪霊化したとかじゃないと、しないと思うなぁ」
少なくとも前世ではそうだったし、今世もそのパターンから逸脱したケースは見ていないと思う。
もっとも、前世の場合はリッチぐらいまで霊格を上げていれば動き回れたし眷属を増やせたけど。
ただ、リッチってゾンビの進化系に近いから悪霊とはちょっと違う気がする。
どちらせよ魔素が薄いこの世界で死霊がリッチまで進化(?)するのは難しいと思う。
「だよねぇ。
なんか複数箇所で同じか似た様な悪霊の被害が出ているっぽくて、その除霊を頼めないかって話なんだけど」
碧が微妙そうに顔を顰めながらいった。
「何故に『依頼』じゃなくて『ご相談』なの?」
確かに悪霊が聞いた事がない移動するタイプなのか、もしくは複数の悪霊が出現するのかは微妙だが、悪霊が存在する事が確認できているならただの依頼なんじゃないの?
「なんか調査員も微妙に悪霊なのか確信を持てないみたい。でも被害は確かに出ていて自演ではない様なので、依頼は必要と思われるって報告だったらしいの」
碧が微妙な顔で教えてくれた。
「前世だったらレイスやゾンビやリッチじゃなければ他の魔術師を疑うところだけど、退魔師って呪詛以外では人に害を成す術がないの?」
昔は悪霊除霊だと思って行ったら山賊退治だったなんてケースがあったらしいから、こちらの世界の退魔師だって生きた人間を害せる筈。
だったら嫌がらせとかも出来るだろう。
「あると思うよ〜。
私だったら相手に触れないと出来ないから、悪霊に誤認させるのは無理だけど」
だよねぇ。
「ちなみに犯人が退魔協会の人間だったりした場合、ウチらはどうすりゃ良いの?」
特に、お偉いさんだったりお偉いさんに伝手がある人だったりしたら面倒な事になりそうじゃない?
「現行犯に近い形で捕まえれば、退魔協会の方で取り調べと処罰は受け持ってくれるって」
既に碧もそっちの可能性を疑っていたのか。
「なんかこう・・・嫌な依頼だね」
まあ、白龍さまの天罰デフェンスがあるから他の退魔師よりは協会のお偉いさんからの報復を心配しなくて良いんだろうけど。
「だから『ご相談』だったんじゃない?
多分、ウチらが断ったら退魔協会のお偉いさんの誰かがやるって言わない限り依頼そのものを断るんじゃないかな」
碧が溜め息を吐きながらプリンの蓋を剥がした。
「正義の味方になるつもりはないけど、変なことをする人間が退魔協会の上層部にいても困るから、受けようか」
普通に悪霊な可能性もあるんだし。
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