第720話 げ、地下室?!
ガチャン。
玄関の扉が大きな音と共に閉まる。
軋まないだけマシだけど、それなりに音が響いた。
しかも金持ちの建てた煉瓦造りの家は防音効果も高いのか、外の音が殆ど聞こえなくなった。
風の音とか遠くに響く車の音とかの代わりに聞こえるのは・・・。
カサカサカサ。
うげ〜。
Gは碧のG避けで逃げているはずだから、これってムカデ?
それともGが逃げていく音?
こちらへの物理的な脅威度で言えばGやムカデの方がネズミよりも物理的危険度は低いと思うんだけど、精神的打撃は虫の方が大きいんだよねぇ。
音はネズミが原因だと期待しよう。
と言うか、ムカデって動く時にカサカサ音がするものなの??
なんかGはカサカサ音がしそうな気がするけど、考えてみたら動く時に音がする虫ってちょっと生存競争的に問題ありじゃない?
そう考えると、Gもムカデも動く時に音がしないんじゃ無いかと言う気がするんだが・・・だとしたらかさかさ音がしているにはネズミ??
もしくは忍び込んじゃったイタチとかハクビシンでも住み着いているのかな?
まあ、多分電気をつけて動き回っていれば人間から逃げようとするだろうから、あまり壁際とか床をしっかり見ないのが正解かな。
とは言え。
「何も霊的な存在は居なく無い??」
碧が立ち止まって言った。
「そんな気がするねぇ」
やたらと小さな生き物の気配はガッツリするのに、霊の存在は感じられない。
穢れもさしてないし。
あれだけ見た目がオドロオドロシイのに穢れがないなんて、驚異的な湿度と蔓の弊害だね。
「クルミ。
屋敷の中や周辺に霊や呪詛が無いか、ちょっと探索して回ってくれる?」
私達も回るけど、霊であるクルミの方が敏感だからね。
『了解〜』
クルミがふわふわと2階の方へと飛んでいった。
上から確認していくのかな?
私達が入り難い屋根裏とかもしっかりチェックしてくれるだろうし。
元が猫だったせいか、クルミって狭いところが好きなんだよね〜。
「下の階から確認して行こうか?
・・・ちなみに、退魔協会の調査員はこの屋敷も調べたんだよね?」
あれ、考えてみたら調査報告書には孫の方に霊的ダメージがあって現時点でも継続的に霊力が抜き取られているって書いてあっただけで、この屋敷については言及して無かった??
「調べなかったか、調べても分からなかったから何も書かないで水を濁したか、微妙に不明だね」
碧がタブレットを取り出して報告書をざっと再確認して言った。
「つうか、悪霊憑きでも無いなら何だってここまで家が痛むまで放置したんだろうね?
それなりに建てた時は素敵だっただろうしお金もかけただろうに」
ギシギシと軋むフローリングの上に帯みたいに敷かれた絨毯の上を土足で歩きながら周りを見回す。
一応玄関の形を見るに洋風な煉瓦造りと言っても本来は日本式に靴を脱いで入る家だったと思うが、これだけ汚そうな家を靴下で歩き回るのなんて絶対にゴメンである。
ここを建て直すのでは無くそのまま利用するにしても、どうせ徹底的な掃除は不可避だ。車に乗ってきたから大して汚れてもいない靴で入るぐらいなら実害はないだろう。
「まあ、悪霊なんて視えない人だったら、誰かがここで自殺したとか殺されたとか言った事件があっただけでヤバいかもって忌避するんじゃない?
日常的に普通に使うにはちょっと不便な立地だし。
とは言え・・・靴を脱いで靴下で入ったんだったらヤバい何かを踏んづけて破傷風にでもなったんじゃ無いかと思う程汚いねぇ。
破傷風だったら病院で分かるだろうし霊的ダメージも受けないだろうけど」
碧が溜め息を吐きながら腐って崩れ落ちてるっぽい陥没箇所を避けつつ言った。
「でも、外の見た目に反して珍しいぐらい霊的な穢れも無いよね。
カビや埃や何かの糞みたいな汚れは嫌になる程あるけど」
カビと埃臭いせいで全然清々しくないが、実は家の中にも霊的な穢れはない。
普通の街の通りよりも綺麗なぐらいだ。
街の通りって意外と交通事故で死んだ人の苦しみや絶望で穢れている事が多いからね。
ある意味、普通の森の中に近いかも。
いや、カビ臭いし湿気ている感じだから洞窟の中とでも言う方が近いかな?
・・・考えてみたら、丘の上だったら地下水とかが出てくるって事もないだろうに、なんだってこんなに湿気てるんだろ?
そりゃあ、地質的に丘の上に地下水が湧き出てくる事だってあり得なくはないのかもだけど、昔はそれこそ見回す限りがこの屋敷の持ち主の土地だったらしいのだ。
態々水が出る場所に家を建てる事はないだろう。
そう思いつつ家の中を見てまわっていて奥の部屋にあった扉をあけたら、下へ降りる階段を見つけた。
げぇぇ。
また、地下室??
変な腐臭とか穢れはないけど、地下室はちょっとトラウマに近いんだけど・・・。
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