眠れる・・・?
第717話 次の依頼
『退魔協会の瀬田です』
碧が留守なのでコタツに寝転がりながらおもちゃを振り回して源之助と遊んでいたら、電話の音の後に留守電から聞こえてきた声に一瞬ギョッとした。
こないだの浄化結界モドキの破棄にマンションの穢れの浄化。
どちらも、退魔協会に知られたら多分睨まれる案件だろう。
もしかして、バレて嫌味を言いに電話してきたのかと思わず体を固くした。
一応バレたところで罰則はない筈なんだけどね。
『悪霊祓いもしくは呪詛祓いの依頼があります。
依頼主の孫が過去に親族の使っていた古い屋敷を調べていたところ医者に治せぬ体調不良に罹り、その祓いと原因と思われる屋敷の浄化をお願いしたいとの事です。
都心から日帰りで行ける距離ですので、『快適生活ラボ』のお二人にお願いできればと思っております。詳細のメールを送りますので出来るだけ早くコールバックしていただけると幸いです』
退魔協会の職員の淡々とした声がメッセージを残していく。
先日の青木氏経由の依頼の話では無い様だ。
良かった。
別に退魔協会を経由しない依頼を受けるのはウチらの自由だし、破棄した結界にしたってあれは突きつめれば違法な結界な筈だから、被害者がそれの破棄を依頼するのに退魔協会がクレームをつけてくる事もない筈だと碧は言っていた。
とは言え、色々と退魔協会的には面白くない条件が重なっていそうだから、微妙に良心の咎めと言うか嫌がらせへ身構えちゃうと言うか、心配だったんだよね。
お陰で電話にもビクッと反応してしまった。
現実的に考えると、退魔協会が態々嫌味を言いに電話してくる程馬鹿だとは思わないけど。
マンションの穢れ祓いで退魔協会に中抜きさせなかったことに関する嫌味はまだしも、実質違法な結界を破棄した事に対しての嫌味は録音されている可能性が高い電話でなんぞ言わないだろうし。
もしも退魔協会があの結界に関わっていて破棄したのが私たちだと知って嫌味を言うとしたら、それは何かのパーティとかで人が集まってガヤガヤしていて録音も難しい様な状況で直接言うだろう。
先日の案件で連絡が来るとしたら、あの御神木さまの接木の樹霊からが一番ありそうかも?
マンションは穢れを祓ったから問題はないだろうし、もしも何か問題があってまた穢れが溜まり始めるにしても数ヶ月から数年は掛かるだろう。
お寺の方も・・・ある意味、お寺だからこそ自分のところが霊的に何も分かっていないなんて認められないだろう。
そう考えると地域の穢れを祓う結界を維持できなくてそれが変質していた事も、それが壊されて地域の穢れの排除効果が無くなった事も、気付かないだろうし気付いても認めるのは難しそうだ。
だからこの時期であるとしたら、それこそあの公園の木を核にした術を依頼したクソッタレが霊や穢れを視える人間で、しかもあの区画に住んでいる為に術が破棄された事に気付いて再度術をかけるよう誰かに依頼する事だ。
そうなるとあの樹霊・・・と言うか御神木さまの接木から育った樹をまた核にしようとする可能性はあるから、そうなったらぜひ遠慮なくご一報下さいねと樹霊に私の魔力を渡しておいたのだが・・・樹霊が電話してくる事は無いし、穢れを他所に押し付ける様な術は違法だから流石に退魔協会が私らに電話で依頼してくる事もないだろう。
取り敢えず、源之助も遊ぶのに飽きたのかコタツの上で丸まって昼寝を始めたので、タブレットを取り出して送られてきたメールを確認することにした。
今月はこないだの青木氏の案件でガッツリ収入があったから、無理に依頼を請ける必要はないんだけどね〜。
でもまあ、比較的暇だし。
あまり寒くなる前に適当に依頼を請けておいて、1月や2月の寒い時期は出掛けずに家に籠もろうかな。
炎華って魔力をあげると良い感じに部屋の中を暖めてくれるから、マンションの中だと快適なんだよね。
去年は気付かずにヒーターを使っていたが、夏にクーラーの電気代に関して文句を言っていたらなんと炎華が温度の管理ならお手のものだと教えてくれたのだ。
熱を吸収して涼しくする事も放出して暖める事も出来るなんて、素晴らしすぎる。
湿度の管理は出来ないので除湿の為にちょっとエアコンを使ったが、温度管理を魔力で出来るようになってマジで助かった。
まあ、それでもコタツの快適さは手放せないけどね〜。
炎華がコタツの中に入って暖めてくれるのもありなのだが、そうすると部屋の空気はあまり暖まらないので、部屋全体を程よく暖めて貰い、コタツで更に快適にぬくぬくしている。
うむ。
碧と離れられないなぁ。
マジで私が男だったら碧と結婚したのに、残念!
家の家事も半分やるよ!って売り込めたんだけどなぁ。
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