第715話 ヤバげじゃね?
「うわぁ〜。
見事に穢れが出てきてるねぇ」
二つの浄化結界モドキの残骸を取っ払って数日後。
そろそろマンションの穢れを祓おうと言うことで戻って来た私達だが、先に結界を取っ払った高台の高級住宅地街がどうなったのか興味があったので電動自転車をレンタルしてフラフラと回ってきた。
で。
まずは御神木さまを切り倒した方の高台にある高級住宅地を回って見たところ。
たった数日なのに既に穢れで薄汚れているっぽく視える家がそこそこ。
どうやら怨まれている人が多い様だ。
まあ、妬まれている人とか、誰かを恨んだり妬んだりしている人でも穢れが出てくるんでそっちの可能性もあるけど。
しかもなんかそれなりな数の悪霊になりかけなちょっと力の強そうな地縛霊も見かけたり。
あれらって穢れを吸収してこれから悪霊に転じるんだろうなぁ。
成仏できなかった霊って穢れがないと悪霊になりきらずに地縛霊になるんだね。
それが穢れを集めて悪霊になるんかぁ。
今まで普通の地縛霊とか悪霊は視た事はあったけど、考えてみたらそれなりの年月をしぶとく耐えて力も強くなったのに悪霊になってない地縛霊って視た事が無かった。
そう言う霊は普通はパワーアップする為に穢れを吸収して悪霊化するからなんだね〜。
ちょこちょこ見かけた強そうな地縛霊は早速意図的に穢れを集めているっぽくて、明らかに穢れがそこだけ濃くなっていた。代わりに周辺の穢れが薄くなっているのはちょっと皮肉な現象だ。
穢れが欲しいなら結界から出ていけば良いのにとも思ったが、そこら辺は思う様に動けないから地縛霊なんだろうね。
穢れを溜めたら動ける様になるのかな?
何を恨んでいるのか知らないけど、特定の誰かへの報復を終えたら満足して昇天してくれる事を期待しているよ。
無理な可能性が高いだろうけど。
「なんかこう、近いうちにこっちの高台にも事故物件が発生しそうな勢いだね〜」
恨みがましくとある一軒家を睨んでいる地縛霊を見ながら碧が言った。
「だねぇ。
まあ、普段から恨みや穢れを祓いながら生きていく人ってそれ程居ないから、この区域の人たちが生き方を変える必要があるとまでは言わないけど・・・今まで恨みを買っても全然平気だったのに、これからは因果応報とか自業自得みたいな厳しい四文字熟語を実感しちゃう人が増えるかも?」
しかも地域を開発した時期に買った住民だったらもうそろそろ老齢に掛かってきていて、体力や気力もピークを過ぎた時期だろうから祟り目に弱り目みたいな感じで立て続けに痛い目に遭う様になるかもね。
「まあ、自業自得ならしょうがないんじゃない?
心を入れ替えて善行を心掛ければ恨み満載な悪霊も許してくれるかも知れないし」
薄く笑いながら碧が言った。
あんたそれ、信じてないでしょ。
もう刻々と変わる世界で生きていないせいか、死にたてのホヤホヤ以外な霊って頑固なのが多い。
なまじ何十年も浄化結界モドキで守られてきたから、解除を待って寄って来た悪霊はゴリゴリに凝り固まってそう。
と言うか、何十年じゃないか。
武家屋敷時代から考えれば数百年ぐらい前から浄化結界はあった筈。
いや、ちゃんと浄化結界だった頃は地縛霊も時間をかけてゆっくりとだが浄化されて最終的には昇天したのかな?
単に穢れを押し出す様になったここ数十年の恨みを持つ霊が地縛霊として残っただけだから、化け物クラスに古いのはいないか。
まあ、金持ちなんだ。
何かあったら退魔協会に連絡してくれば良いよね。
「御神木さまから接木した樹がある公園は空気が清らかだったから、あそこに毎日散歩に来て清らかな空気を吸って少しでも穢れを落としていたら多少はマシだろうしね。
あのお寺はどうだろ?」
私と碧の魔力でガッツリ術を焼き払ったので、一時的に境内の空気は飛び切り綺麗になったが、あの地域の穢れを清める力はあまり無さそうだったからなぁ。
まあ、高台全部を清められないだけで、境内だけだったらなんとかなる程度の信仰心はあるかも?
流石にお寺がそれ程恨みや妬みを買うとも思えないし。
「見に行ってみよう」
碧が自転車で坂を降り始めた。
高台が繋がってないから、一度降りてからまた上がらないといけないんだよねぇ。
電動自転車で良かったよ。
小学校の頃に使っていた自転車は電動アシストなんてついていなかったから、あちこち行く時も坂があるとマジで大変だった。
降りるのはスピードが出て楽しかったけど。
今思うと、良くぞあんなにかっ飛ばして坂を降りて事故に遭わなかったよなぁ。
車に轢かれる方もだけど、人を轢いちゃう方もやばい。
と言うか、最近だとうっかり老人とかとぶつかって怪我をさせると何千万円とか一億強もの賠償金なんてことになりかねないから、考えてみたらヤバかったよね。
先の短い老人を寝たきりにしてなんだってそこまで金を取られるのか、マジで良く分からないけど。
子供を殺しちゃったり働けない体にしちゃったからと言う事でガッツリ賠償金を取られるなら分かるけど、子供だと将来どれだけ稼げる様になったか分からないので賠償金額が少なくなるって不思議だ。
それだったらもう年金を貰うだけで自分で稼がなくなった老人の死期を早めたからって何千万円も払えって話になるロジックが理解できない。
もしかして、老人だったら家族に金があって腕がいい弁護士を雇えるからなのかな?
若い子供の親だったらまだ働くのに忙しいから八つ当たり的な損害賠償訴訟に掛ける金も時間もあまりなさそうだ。
一応裁判所が決めるんだから、それなりに通りのいい論理はあるんだろうけど。
まあ、それはさておき。
もう一つの高台住宅地だ。
こっちもヤバいことなりかけているのかなぁ?
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