第705話 犯人は・・・!
午後の2件目の物件では、珍しく管理人がマンションの一室に住んでいた。
昔のマンガとかだと住み込みの管理人さんもそれなりに居たようだが、今ではマンションは居住可能な部屋は全部分譲・賃貸して管理人は9時5時とか午前中だけって感じで通うのがメインだと思う。
うちのマンションみたいに大家が上に住んでいるみたいなケースはまだしも、雇われ管理人じゃあ夜中にゴミ置き場が散らかっているとか切れた電球とか設備の故障に関して住民に起こされるのは嫌がるだろうから住み込み人員を見つけるのも難しそうだし。
ウチのマンションでも故障とかの相談も不動産屋経由でしろって言われてる。
明らかに金持ちっぽい老人な大家夫婦にエアコンが故障したって苦情を言いに行く勇気がある住民は少ないだろうし。
これが雇われ管理人だったら住民が遠慮なく夜中に突撃しそうだ。
そう考えると住み込み管理人を見つけるのが難しくなっても不思議はない。
かと言って適当な人を雇って、日中の住民が留守の最中に盗みに入ったり女性の寝室を盗撮をしたりとか言った問題行動を起こされたら発覚した時の賠償問題がヤバいし。
現実的な話として現代では住み込み管理人って難しそう。
考えてみたら、海外ドラマなんかではニューヨークの大規模高層マンションとかには居るみたいだったけど、あっちはあっちでかなり狭くて物置部屋みたいな場所に浮浪者一歩手前な貧乏人が住み込んで働くって感じだったから、ある意味社会の格差が大きて底辺層の人が沢山居ないと住み込みの管理人制度って難しいのかも?
一応不動産業界の人って事で悪霊が実在する事は知っているらしく、青木氏も私たちが退魔師だと言う事は伝えたと言っていた。
でも、鍵を私らに渡して管理人を通さずに勝手に見てくれと言って来たって事はあまりここの管理人の態度が良く無いのかな?
うちらが来た際にはゴミ置き場を掃除していたけど。
ちょっとストレスが溜まっているのか、オーラは濁った感じだったけどね。
やっぱ1人で24時間体制になりがちな住み込みの仕事ってストレスが溜まるようだねぇ。
キビキビ働くって言うよりはのそのそ動くって感じだったし。
まだ老人というよりは中年になりかけぐらいな年齢に見えるんだから、嫌だったら他の仕事も見つかりそうなもんだけどね。
中途での就職が難しい日本社会の弊害って奴なのだろうか?
住み込みの管理人だってそれなりにスクリーニングしそうなものだけど。
まあ、ちゃんと掃除とか簡単な修繕とかをしていればそれで良いんだから、少なくとも無謀な営業ノルマとかを科されるブラック企業で働くよりはマシだろう。
と言うか、ブラック企業から退職してこう言う仕事を選んだのかも?
そう考えると、住み込みの仕事だって探し様によっては人を採用するのも十分出来そうだよね。
まあ、ブラック企業に囚われちゃってる人って精神的余裕が無くて求人欄なんか見ない可能性が高そうだけど。
それはさておき。
エレベーターがあるのでそれを使って6階の部屋へ。
このマンション内では何ヶ所もの部屋で夜中に異音がすると苦情が出ていて、霊障だと怖がった住民が出ていってしまう事態が起きているらしい。
6階の部屋は住民が出てしまった部屋で現在空室なので、試しに調べてくれとのことだった。
「じゃあ、私らは霊が居ないか調べるから、クルミは何処かで変な音がしているかとか穴が開いているかとかを調べるついでに周囲の
クルミに情報収集を頼み、部屋を手分けして別々に見て回る。
そこそこ古いマンションだが壁紙とフローリングは貼り直してあるので見た目は悪く無い。
ちょっとトイレが古っぽいのと、お風呂場が洗面所と一体式なユニットバスなのがマイナス評価だけど。
誰かが死ぬと言う意味の事故物件だった事は一度もないとの事で、多少値引きしたら直ぐに賃借人は見つかるらしいがどうもマンション内全体で定着率が低いらしく、何か問題があるのだろうと青木氏は言っていた。
「やっぱ、霊は居ないね〜」
しっかり全部の部屋と窓の外まで確認したが、特に霊も穢れもなし。
やっぱ悪霊ってそうそう出てくるもんじゃあないよねぇ。
事故物件ばかり見ているせいか死霊憑き物件ってそれなりに多い様な気がしていたが、実際はそうでも無いのだろう。
「ちょっと古めだけど普通な部屋だよね」
「古いから、防音機能は微妙なのかも?
だとしたら住んでいる人の嫌がらせやうっかりで鳴らした音が他の部屋にガンガン響いているんじゃ無いかな」
マンションでの音って必ずしも真下と真横だけに伝わるのでは無く、斜め下とかにも想定外な伝わり方をするって聞いたことがある。
とは言え、なんかマンション全体で異音を理由に出ていく住民が居るっぽい話だから・・・そうなると廊下とか非常階段とかからの嫌がらせかね?
「共用部に水道とかガス管のメーターとかがあるんだから、そう言うパイプを叩いたらちょっと離れた部屋にも響きそう」
碧が指摘した。
そっか。
そう言うパイプの場所とかを知っていたら嫌がらせはやり放題かも?
「そうなると、マンションで問題が起き始めた頃から住んでいる人が怪しいのかな?」
出入りの多いマンションだったらそれなりに長く住んでいる人は限られそう。
とは言え、古くからいる住民に『他の人に嫌がらせしていませんか?』と聞く訳にもいかないだろうけど。
『戻ったにゃ〜』
碧とどんな嫌がらせが可能か色々と提案しあっていたら、クルミが帰って来た。
結局、こう言う調べ物ってクルミ頼りだよなぁ。
あとでちゃんと報酬代わりにガッツリ魔力をあげないとね。
「何か分かった?」
『犯人は、管理人だにゃ!』
ピッと動きを止めて勿体ぶったクルミが徐に宣言した。
え?
あの管理人、そんなに長くここで働いているの?
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