第699話 おっさんの、意外とお洒落?なマンション

おっさんが住んでいるのは何やらお洒落なのか手抜きなのか判断に迷う、コンクリの打ちっぱなしみたいな壁が目につくマンションだった。


これって噂のデザイナーズマンションってやつかな?

お洒落さを追求して、実用性がかなり低いマンション。

家事をほぼやらない男性が(女性でそう言うタイプも居るかもだけど)設計したせいで、凄くお洒落だけど実際に暮らして日常生活で使おうとすると収納が全然足りなかったり、台所の使い勝手が悪かったりで最悪なのも多いと聞いた。


意外と1LDKでもそう言うデザイナーズマンションがあるらしく、大学に入る前に住む場所を寮と並行して幾つか見て回った際に、候補として不動産屋に示されたのだ。


同行した母に、絶対やめておけと言われたから見にすら行かなかったけど。

不動産屋の映像では凄くお洒落っぽかったんで、家賃もお手頃だったし心が惹かれたんだけどね〜。

母親スポンサーが、『問題があった時に再引越し費用と礼金・敷金とかの追加出費を全部凛が責任を持って借金として負担するなら良いわよ』と言われたのでやめた。


『お小遣いから払う』と言わずに、『借金』と言うところが生々しく現実っぽかったからね。

考えてみたら例え敷金が全部返ってくるとしても、引越し費用と礼金だけで20万から30万円位は掛かりそうだし、カーテンとか家具とか電気製品とかを買い足す羽目になったら更に足が出る。


そんな金額をお小遣いで払える訳はないし、バイトだってまともに大学の授業を受けるつもりだったら短期でそこまで稼ぐのは厳しいだろう。


そうなると、確かに問題があったら親に泣きつく羽目になるし・・・それを前もって『借金』と言われていると、『お洒落』にそこまでリスクは取れないと言う結論になったのだ。


あとで聞いたら、会社の部下がデザイナーズマンションを買って泣きを見たらしい。

モデルルームのお洒落さに悩殺されて買ったものの、実際に住んでみたらめっちゃ不便だったとか。


ただでさえ、新築が中古になった瞬間に例え1日しか住んでいなかったとしても1割から2割価値が下がるのが日本の不動産なのに、デザイナーズマンションって事で購入価格が割高だったらしい。


新築を転勤でもないのに買ってすぐに売り出そうとしたら、当然ながら理由を聞かれる。

そこは『ライフスタイルに合わない』とか適当に誤魔化したが、使い勝手が悪いと言うのがバレていたのか興味を示した購入者候補には誰からも足元を見られて値切られまくったそうだ。


もしかしたら、中古物件を仲介する不動産屋的には引き渡し後直ぐに売られるデザイナーズマンションは値切りまくれと助言するのが常識なのかも?


結局部下の人は住宅ローンの残債を賄える値段で売ることが出来ず、ローンの返済の為に親から借金して売る羽目になったそうだ。


それを聞いて、借金で足が出るなら不便なぐらい我慢すれば良いのにとも思ったけどね〜。

何でも一人っ子らしきその部下が泣き付いたら、親は『生前贈与って事で』とお金を融通してくれたらしい。

住居を買うときの贈与はまだしも、買ったのが気に入らなくて売る時に残債を払う為の贈与って税制度上の免税になる生前贈与じゃあ無いよね?


ちなみに、うちの親からは生前贈与は期待しないでねと言われている。

まあ、私の場合は退魔師という職業を明らかに出来る様になったので収入源をごかまさなくてすむから何とかなるけど・・・考えてみたら、住宅ローンとかって組めるんかね?

『快適生活ラボ』の収入が安定したら会社の借金で社宅みたいな感じに買う事になるかな?


それはさておき。

おっさんの部屋は見た感じ比較的普通だった。

ちょっと埃っぽい感じだけど。

リビングにはソファとテレビがあるだけでかなり殺風景だが、ある意味ミニマリストでおっさんの棲家にしてはかなりお洒落っぽく見える


寝室の方は・・・段ボールが積んであった。

収納が足りないのか、エネルギー不足なのか。

引っ越してきたばかりなのかね?


まあ、引っ越しても段ボール箱を次に引っ越すまで何年間も積んでいる人も居るから、分からないが。

兄貴だって、北海道で大学を卒業して寮を出た後にマンションに引っ越したが、私が大学に入る前の春休みに遊びに行ったら部屋に段ボールが積んであった。

・・・男ってそう言うものなのかも?


いや、女性でも片付けとかしない人はいるけど。

少なくともこの部屋は戸塚さんのゴミ部屋よりはマシだし。


おっさんは帰ってきたら楽そうなジャージに着替え、ソファに寝転がったらテレビを付けたと思ったらウトウトと寝始めた。


あれ?

昼寝出来るんだ。

昼夜反転しちゃっているにしても、昼寝出来るなら大丈夫なんじゃ無いの?


そう思いながら見ていたのだが、やがて居心地悪げにモゾモゾし始めたと思ったら目が覚めたのか、ちょっと体を起こして疲れた様に首を掻いてテレビを見始めた。


おやま。

ダメっすか。


『ここ、滅茶苦茶煩いニャ。

きっとそれがいけないんだにゃ』

クルミが不満そうに呟いた。


煩い?

音なんてしてる?


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