第683話 犯人は執事だった?!
さて。
「術をしっかり確認して解呪する為に集中する必要があり、時間も必要です。
他の方々は部屋から出て行って下さい」
碧が部屋に向かって宣言する。
返すだけだったら一瞬なんだけどね。
呪師を見つけるとなると、それなりに時間が掛かる。
他の連中が居たら邪魔だから追い出し、このおっさんには眠っていて貰おう。
ぐちぐちとおっさんは文句を言っていたが、それを宥めた奥様(多分)と執事が出ていき、誰も居なくなったらさっさと近づいておっさんの肩に手を触れる。
「何をする!」
「暫く眠っていて下さいね〜」
作業中の話し合いは念話で済ますにしても、このおっさんの人を見下したような視線に晒され続けるのは不快だ。
しかもこいつ、解呪出来て元気になった途端に『愛人にならないか』とか上から目線で持ち掛けてきそう。
流石に現代日本のおっさんだったら愛人の誘いを断ったからって失礼だと逆上する事はないとは思いたいけど。
前世の
流石に貴族相手にはそれなりに令嬢の家族や友人の伝手とか経済力等を推し量って相手を選んでやっていたけど。
平民だったら目が醒めるほどの美人じゃ無いと例え一晩の相手であろうと自分には相応しく無いと目もくれなかったが、その代わり平民に『情けをかけてやろう』として断られたらマジで逆上して死んだ方がマシな思いをさせて殺していたからなぁ。
あれだけ悪事をやりまくっていたのに呪い殺されなかったなんて、それを防いだ身だけど理不尽だったと思う。
まあ、きっと生まれ変わった次の命はGかネズミか、直ぐに踏み躙られる様な生き物だっただろうと思うけど。
時折とは言え無理やり悪事に加担させられた私がゴブリンだったのだ。
人型になるのは何百回も生まれ変わるまで無理だと思いたい。
それはさておき。
部屋の中を魔力視で探す。
・・・呪詛を含む
『やっぱ呪いの媒介になった様な
本人の髪の毛か何かをゲットして呪詛を掛けたみたい』
念話で碧に告げる。
呪詛って言うのは基本的に対象者の髪の毛や血、爪の破片とか言った身体の一部を
まあ、相手に触れさせる場所に怪しげな物を潜り込ませられるんだったら相手の髪の毛を盗むのだって可能だろうから、呪師に直接繋がる様な
そうなると、ハネナガに呪詛を辿って貰わないと。
呪詛返しをした瞬間が一番はっきり視えるけど、返し終わったら消えちゃうから途中で見失ったら困るので返す前に追跡させる。
しかも呪詛返しが依頼人に行く形だとそっちで呪師を探せないし。
『ハネナガ』
今回の追加依頼の為に協力を頼んでいた鴉の使い魔に喚び掛ける。
『うむ』
外の庭にハネナガが現れたのが感じられた。
『呪詛に私の魔力を乗せるから、私と視界共有しながらそれを辿って頂戴』
クルミと比べるとそれなりに地理とか方向とか分かるハネナガだが、流石に距離が離れていると何処なのかを私に分かる様には説明出来ないので、視界共有して何か目印になる建物なり看板なりを見つけて場所を特定する必要がある。
『うむ、分かった』
あっさりハネナガが合意し、私が呪詛を辿る形でそっと魔力を乗せたら空に飛び立っていった。
まあ、霊が飛ぶのって鳥が物理的に飛ぶのとはちょっと違うんだけどね。
なんかこう、ワープしながら転々と地点を跳躍しながら目的地に近づいている感じ?
なんで一気に向こうに辿り着かないのか、もしくは普通に飛ぶのでなく地点を跳躍出来るのか、よく分からない。
不思議だよね〜。
まあ、お陰で実際に鴉が空を飛んでいくよりもずっと早く呪師の隠れ家っぽい所?にたどり着けたが。
呪師の隠れ家が見える大木にハネナガが止まり、周囲を見回す。
『私鉄系のスーパーと・・・チェーン店の古本屋があるね』
店のロゴの形とかはハネナガの視界だとそれなりの距離があってもよく視えるんだけど、住所の文字とかは人間の目で見える様な距離まで近付かないと読めないんだよねぇ。
ハネナガに文字を教えたらマシになるのかなぁ?
まあ、興味がない文字の勉強なんぞさせるのにどれだけ
しかもアルファベットと違って日本の地名じゃあ常用漢字全て必要かもだし。
となると何千字もなるな。
・・・まず無理だね。
『あ、多分ここだ』
タブレットで探していた碧が地図アプリを見せてくれた。
道路の形も近い感じだ。
これだったら呪師の隠れ家の側でハネナガに待機していてもらって、電車で行って合流すれば良さげだ。
『うっし。
じゃあ、返すか。
ハネナガは呪師を遠くから見張っていてね。
そいつが移動し始めたら知らせて』
呪詛返しが呪師に行けば多分動けなくなるだろうし、呪詛の依頼主に行くなら呪師は関与しないから逃げないと思うけど。
と言う事で、さっと呪詛を返しおっさんを起こす。
うん。
どうも依頼人の方に返ったっぽい。
随分と近い感じだったが・・・。
「終わりました」
目を覚ましたおっさんに碧が声を掛ける。
「うむ。
すっかり楽になったようだ。
伊藤!退魔協会の人たちが帰るぞ!」
おっさんが声を上げる。
自分で見送るつもりはない様だ。
お礼も言われてないね〜。
「伊藤!」
直ぐに現れなかった伊藤氏(執事の事かね?)におっさんが苛立たしげに再度声を上げる。
いや、執事だって仕事があるだろうからドアの外で待っているわけじゃあないでしょ?
ちょっとは対応する時間をあげれば良いのに。
そんな私の思いをよそに、おっさんが立ち上がってインターフォンっぽい器具を荒っぽく叩いた。
『伊藤!さっさと来んか!!』
おっさんの声が家中に響き渡った。
うわ〜。
なんか品がない。
でも、これだけ短気な雇用主だったら執事も効果的な対処法を身につけていそうだけど。
もしかして、呪詛の依頼人は執事だったの??
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