第676話 ターゲットをしっかり絞ってくれ
「小説サイトも広告がガンガン出てくるんだから、動画サイトみたいに広告収入や投げ銭とかで収入が入る様にして、出版しなくても作家に収入が入る様にしたら出版してエタる作家が減らないかなぁ?」
駅ビルの階段を登りながら思わず呟く。
出版するとエタる作家が多いのって、校正が大変すぎて時間が食われて新しく話を書く時間とエネルギーが削られちゃうのと、売り上げが思う様にいかないとモチベーションが下がるせいだろう。
ネットに無料公開した小説を読んだ人数に応じて収入が入る形だったら、ちょっとやそっと誤字脱字があったって構わないんだから書いた後の作業はぐっと減るだろうし、リアルタイムでそれなりに手応えが分かるからちゃんと読者が楽しんで続きを待っている間は『売れない』って事でモチベが下がることもない筈。
「でもさぁ、そう言う広告効果分をくれるサイトもあるみたいだけど、そう言うとこに公開している作家でも出版してエタる事が多いよ?」
碧があっさり指摘した。
「やっぱ、『出版する』って言う世間に認められる形が承認欲求を満たすから違うんかね?」
「承認欲求的に出版の話がきたら『やります!』って言っちゃってから、実は精神的・労働時間的負担が思っていたよりも重くて後悔している作家もいるんだろうね。
とは言え、一度動き始めちゃった話を『疲れるから辞めます』とは言い出せなくて無理しちゃって、結果的にエタるのかも」
5階の本屋に辿り着き、目当ての本を手に取ってレジへ進む。
出版日より2日も早く店頭に並ぶって不思議だよねぇ。
だったら電子版ももっと早く読める様にしてくれれば良いのに。
出版業界にしてみれば、やはり電子書籍よりも物理的な本を買ってもらいたいのかな?
「なんかさぁ、ラノベが増えたせいか、子供の頃にあったファンタジーとかSFの普通の小説が減ったね」
新書コーナーを見ながらふと碧が呟いた。
子供の頃は棚一つ分ぐらいあった新書ノベル系が、今では棚1段の30センチほどまでに減っている。
見る影もない。
「確かに!」
考えてみたら、新書で出るファンタジーとかはちゃんと一冊ごとに起承転結して話がしっかり纏まって引き締まっていた感じがする。
最近のラノベってオンライン小説の素人作家が書いた話で人気が出たのを出版しているだけだから、ある意味終わりなんぞ考えてないだろうって言うのが殆どだからなぁ。
面白いけど、引き締まってはいないよね。
無理に1冊ごとの本の形にして出版するよりも、マジでオンライン小説を投げ銭なり広告収入なりでサポートする形にした方が皆にとって良い気がする。
アクセス数や広告収入で承認欲求を満たせば良いじゃん。
とは言え。読者数が一番大きいと思われる『なろう』サイトは広告収入を作者にフィードバックしてないから、どうしても収入が足りないのかもだが。
考えてみたら、広告収入が貰えるサイトでランキング一位とかになるとどの程度広告収入が入るんだろ?
まあ、出版している作家にしても金が主たる目的じゃあない可能性が高いけど。
本当に、あれだけうざったい広告が否応なしに出てくるんだから、それで作者がエタらないようサポートしてくれたらいいのに。
動画サイトの広告もそれなりにウザいが、許容範囲内だ。
と言うか、動画サイトの広告の方が一回ごとに見させられている時間は長いが、オンライン小説サイトのR18っぽいゲームの広告がスクリーン上で延々とチカチカしているのよりは遥かにマシだ。
ちゃんと小説サイトにプロフィールを登録して性別を女性と明記しているのに、成人男性用の胸がやたらに大きな女の子が出てくるゲームの広告がひっきりなしに出てくるのってマジで意味がないしムカつく。
ラノベなんて読んでいるのってそれこそ18歳以下も多いだろうに。R18なゲームを広告しても購入できないだろうし、ウェブ広告ってターゲット機能があるんじゃなかったんかね?
ペットのケージやおもちゃや餌を検索すると翌日から他のサイトではそっち系の広告がギョッとする程良く出る様になるのだから、クッキーとかでプロフィールどころか検索とか閲覧といったこちらの情報を色々と抜き取っているのは確実だ。
なんだってオンライン小説サイトだけは馬鹿の一つ覚えみたいに絶対に成人女性が買わない男性用R18ゲームを執拗に見せるのか、理解を超える。
それはさておき。
「そう考えると、無料のオンライン小説サイトが出来た事で素人でも色々と話を書いて人に読んでもらえる様になった代わりに、まともな作者が減ったのかも?」
まあ、SFやファンタジー作家が世間一般で『まともな作者』と言われるのかは知らないが。
ミステリーとか純文学は変わらず出版されているのかな?
純文学系の賞は毎年話題になっているから、真面目な作者は今でも普通にいるんだろう。
SFやファンタジー系作家だけがラノベ人気で割りを食ったのかもなぁ。
ちゃんとしたSFやファンタジー系作家を駆逐しちゃうなら、オンライン小説サイトには面白い作家がエタらないよう、もっと工夫して頑張って貰いたいところだね。
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