第663話 ロシアンルーレットだよね
「ここもかぁ。
こんだけの数のゴミ箱を加工する労力って・・・中々凄いよね」
北側の指定範囲を終わったので西側に足を伸ばしているのだが、相変わらずゴミ箱が呪詛発生機になっている。
と言うか、これって範囲指定されていない場所にあるゴミ箱も確認すべきなんじゃない?
いや、それどころか渋谷だけで無くて全国の人が集まる地域のゴミ箱をゴミ回収のついでに調べた方が良いんじゃないかと言う気がしてきたぞ??
流石に一人の呪師が流せる血の量には限りがあるし、魔法陣を描く時間だってそれなりに必要だから全国のゴミ箱を網羅できるとは思っていないが、それこそ問題が起きやすそうなサッカースタジアムとか野球場とか、ヤバくないかね?
欧州ではサッカーの試合の後にファン同士の喧嘩が暴動もどきになる事は時折あるみたいだし、日本やアジアの他の国でも熱狂的なファンが試合の後にピッチに乱入するとか往来で乱闘したって話を新聞で時々見る気がする。
多少は酒を飲むんだろうし、試合って事は2つのチーム分の敵対的な関係になるファンが集まり、片方は確実に結末に不満を持つグループが同時間に大量に道に溢れる事になるのだ。
スタジアムのゴミ箱で怒りや不満を煽るような呪詛をばら撒いたら例えハロウィンだろうと渋谷でゴミ箱に手を加えるよりもよっぽど効果的に暴動を引き起こせそうだ。
「だねぇ。
これで呪詛の実験が上手く行っちゃってハロウィンで何か大騒動が起こったとして、犯人はそれをどう利用するつもりなんだろ?
どう考えても魔法陣と呪詛の研究に明け暮れた一人の暇人がその研究結果を試しているって規模じゃないよね」
碧が溜め息を吐きながらタブレット上の地図に載った膨大な数の黒い丸を見やった。
「まあ、暴動をうまく引き起こせるならそれなりに政治的に誰かの面子を潰せるだろうし、技術の買い手はいるだろうけど・・・あんまり暴動そのものってお金になりそうでは無いよね」
スポンサーが付いてこれだけの事をしたって訳なら、何か経済的に影響が大きい結果が目的だろうし、未来見が警告を発したって事は将来的に多くの人命に関わる事な可能性が高そうなんだけど。
暴動ってどの位の人が死ぬんだろ?
「呪詛って病気っぽい症状も引き起こせるけど、本当に病気になったりもするのかな?
大した事なくても人に感染するようなちょっと悪質な風邪を呪詛で生み出せたら一気に人の行き来に支障をきたしそうだし、製薬会社とか医療機関がボロ儲け出来そう」
碧がふと呟いた。
呪詛発の疫病かぁ。
「地球でも大昔は黒死病とかって呪いだと思われていたらしいよねぇ。
呪いであんな感じに黒っぽい出血斑が出て死ぬ様にするのは対価さえ払えば可能だし。
ただ、病気っぽく見せても呪いだから呪詛だったら他者への感染はしない筈。
そう考えると、免疫力を下げるような呪詛を開発して、ゴミを捨てて軽くその呪詛がかかるのと同時に何か病原菌の粉末か飛沫がふわっと広がるような仕組みだったらヤバいかも?」
と言うか、粉末を飛ばすよりも真夏だったら最近流行りのミストを撒いて気温を下げる仕組みなんかが危険かも?
あのミストの液体の中に病原菌を混ぜておいて、免疫力が弱った人が通る場所に設置しておけば一気にやばい病気が流行ったように見えそうだ。
後は伝染病だ!!って大騒ぎすれば観光事業とかは大打撃だろうし、製薬会社や医療機関には国から色々と資金援助が入るかもだし、悪用方法は色々とあるだろう。
エボラとかヤバい病原菌を入手できるならそれをばら撒けば国に致命的なダメージを与えられるかもだし。
とは言え、本当にヤバい病原菌とかは既存の人間の免疫システムで対処できないからヤバいんであって、それを入手出来るなら態々呪詛を使って免疫力を下げる必要は無いよねぇ。
ヤバい病原菌っぽく見せる為に免疫力を下げてそこまで危険じゃない病原菌をばら撒き、儲けようと考えているのかな?
人の移動が容易かつ大規模になった今の世の中では、どれだけ金になろうとも下手に広まったら全人類が壊滅的ダメージを受けかねない病原菌をばら撒くのは、無理心中狙いな気狂いだけだろう。
まあ、人類を滅ぼすべきだと考える狂信者は意外と沢山いるかもだけど。
大多数の愚者を
気狂いの考える事は分からないから、人類滅亡の危機に関しては未来見がちゃんとキャッチしてくれると期待するしかないね。
それはさておき。
危険ではない病原菌をマジで危険だと誤認させる為に呪詛を使うのはありかもだが・・・病原菌ってそのうち変異するんだから、変な伝染病もどきの演出は人類全体の存続をかけたロシアンルーレットだと思う。
・・・だから、今回の騒ぎに未来見が警告を発しているのかなぁ?
ハネナガと仲間の鴉の霊をもう少し引き込んで、この呪詛発生装置の魔力の持ち主が渋谷に現れたらすぐに捕まえられるようにしておこうかなぁ・・・。
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