第664話 天罰アタ〜ック!

「白魔術にこう、血から結界に入った本人を簡単に見つける術って無いの?」

呪詛を研究するようなヤバげな集団が、呪詛の大規模テロ化を考えているのかもって言うのは怖い。


出来ればここで潰せるなら潰したいし、複数の未来見による警告があったって事はもしかしたらこのハロウィンが大きな岐路なのかも知れない。


とは言え。

人探しって中々難しいんだよねぇ。

もしかして、血があるなら体や生体に関してはぶっち切りで一人者な白魔術師の方が何か出来る手段があるかも?と聞いてみた。


「血?

血、ねぇ。

確かにあの魔法陣の血が手元にあるんだから、その大元を探せる・・・?」

碧がちょっと考え込み始めた。


考えてみたら、回収したゴミ箱の全部が同じ血を使っているのか、田端氏に聞いた方が良いよね。

確か成年男性が問題なく1年間に献血できる量って1200mlらしいから、粘度を下げる為にちょっと水で薄めた上に細く描くよう細めの筆を使ったにしても、あのサイズの魔法陣を描ける数はそれなりに限られる。


研究をしつつ何年間か血を溜めていたか、弟子っぽい人間がいるかじゃないと、現時点で確認しただけのゴミ箱の数すらカバー出来ない気がする。


今回のハロウィンは小手試しで、上手くいったら次に本格的なテロ行為として何かやろうとしているならば、もっと血と手が必要になる。

まあ、そう考えると無闇矢鱈とあちこちにヤバいゴミ箱をばら撒かない理由にはなるかもだけど。

マジで何種類ぐらいの人間のDNAが魔法陣を描いた血液から見つかったのか、至急田端氏に聞かないと。


「・・・うん、結界の中に特定の血を有する人間が入ったら分かるようには出来るかも!」

田端氏へ回収したゴミ箱の魔法陣に使われた血が全て同一人物の物か至急調べて教えてくれとメールを書いていたら、碧が突然再起動して声を上げた。


「お?

出来そう?

ついでにこう、失神するように何とか出来ない?」

居ることが分かっても、渋谷のハチ公前やスクランブル交差点では普段でも特定の誰かを見つけるのなんて至難の業だ。


呪師も含めて(多分)大多数の人間が仮装しているハロウィンの最中で特定の人物の確保は至難の業だろう。


だったら人混みで体調不良を起こして倒れた人を介護するって様相で確保するのが一番楽だ。


「う〜ん、その場に居れば何とかなるかなぁ。

でも、ハロウィン中ずっと渋谷に張り付く訳にはいかないよ?」

碧がちょっと嫌そうな顔をした。


確かに。

金曜日の夕方から4日半ぐらいになるよね。

しかも酔っ払いが多いような夜をメインに調べるとなったらオチオチ寝てもいられない。

それだけ頑張っても呪師が来るかも定かじゃないし。


『もっと単純に、呪師が足を踏み入れたら気を失うようにしてはどうじゃ?

浄化結界に儂が力を足せば、呪詛なんぞと言う自然に逆らう術を使う人間に天罰を下して意識を失う様に、出来なくはないぞ?』

突然白龍さまが思いがけない提案をしてきた。


「え??

良いんですか、そんな事して??」

氏神さまでも人の世にあまり直接関与出来ないのかと思っていたんだけど。

まあ、白龍さまって本性は神というよりもパワフルな幻獣ってだけだから、『やりたくない事』は多くても『やっちゃいけない制約』とかは実質無いのかも?


『儂にダメと誰が言うのじゃ?

あの様な、『個に対する呪い』と言う呪詛の制約を掻い潜る様な手法は広めぬ方が良い。

関係ない呪師も引っ掛かるかも知れんが、呪詛なんぞに関わるのが悪いのじゃ。

呪師を全て捕まえて、力を使えなくすればこの国ももう少し良くなるじゃろうよ』

ちょっと不機嫌そうに尻尾を振りながら白龍さまが言った。


おや?

魔術師に対する魔封じみたいな感じで、呪師に呪詛を使えなくする方法なんてあるのかな?

まあ、白龍さまだったら呪詛に関わる様になってからの記憶を全部焼き切るとか言った大雑把な手段もありかもだけど。


それとも天罰チックに何か出来るのかな?


「おお〜!

じゃあ、浄化結界も一度設定したら霊力の補填は無しでも大丈夫だったりします??」

碧が嬉しげに聞く。


『天罰なのじゃ。意識不明になった人間をお主が回復させねばいつまでも寝たままになるぞ?』

白龍さまが指摘する。


厄介な呪師が寝たきりでそのまま10年ぐらい起きないって言うのも世界の平和の為には良いんじゃね?と言う気もするけど、関係者をついでにキャッチする為には意識を戻して尋問に応じてもらう必要があるか。


さて。

どんな風に田端氏なり退魔協会なりに話を通して、渋谷のスクランブル交差点で意識不明になった人間を確保しておいて貰うかね〜。







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