第645話 肉だよ肉!!
「そう言えば、味覚を誤魔化す魔道具カードがあったじゃない?
あれで美味しいミルクシェークの味にでもしたら更に良くない?」
胡椒を振った野菜ジュースを飲み終えた碧が提案してきた。
粒よりジュースは既に終わっているのでここのところ毎日これだが、特に問題はない。
微妙に肌が綺麗になった気がしないでもないが・・・ポーションもどき液とか碧のサポートとかで肌の調子はほぼ問題ないから、あまり目立った違いはないんだよねぇ。
でもまあ、野菜をしっかり摂取すると活性酸素が減って体内の錆が発生しにくくなると言う話だから、老化を遅らせる効果は早くから始めておくに越した事はないと思っておこう。
それはさておき。
味覚誤認の魔道具カードか。
どこにしまったんだっけ?
「そう言えば、その手があったよね」
忘れてたんだけどさ。
今世は基本的に美味しい食事に困らないから、魔術で無理やり自分の味覚を誤魔化す必要があまり無いんだよねぇ。色々と研究している時ならまだしも、研究熱が冷めると記憶からも消えちゃっていた。
まあ、今回は胡椒で解決したから良いんだけど。
「胡椒でまろやかになった野菜ジュースに飽きたらシェーク味でいってみよう。
ちょっと舌触りが違うけど、まあ良いっしょ」
魔道具カードを備蓄用小分けジュースの箱に入れておこう。
「そう言えば、非常食のカレーがさっき届いたよ」
コップを水で濯いでシンクに置きながら、碧がカウンターの上に置いてあるブツを示して言った。
「お!
じゃあ、今晩の夕食はそれにしようか」
水もそれなりにスーパーでコツコツと買いだめしてきたし、災害時用のトイレも購入した。
猫砂と餌もポイントアップデーにがっつり買い増ししたし、後は食事分を備蓄すれば突然思い立って始めた防災備えも終わりだ。
と言う事で、夕食時にお湯を沸かし、カレーのレトルトと一緒に入っていたアルファ米の袋にお湯を注いで上の蓋を閉める。
「意外と使う水の量が少ないね。
これだったら鍋でお湯を沸かして食事をするにしても固形燃料が長持ちしそう」
お湯なら15分、水なら60分で調理できると買いてあるんである意味夏だったら水で戻しても良いし。
「・・・考えてみたら、お湯を鍋で沸かすなら、もっと熱効率の良さそうな鍋を買うべきかな?」
碧が台所のコンロの所に置いてある鍋を見ながらふと呟いた。
「・・・お湯を沸かすだけだったらフッ素コートしたこの鍋よりも、もっと薄そうな安物のアルミ鍋みたいなの方がいいのかも?
それとも一度沸かしたら終わりなら、やかんの方が良い?」
碧がフライパンが入っている引き出しを開けて中を見ながら言った。
引越し当初から電気ケトルを使っているから、この家にはやかんが無いんだよねぇ。
「やかんだと湯煎とかをしにくいから、アルミ鍋が良いかも?
でもまあ、起きるかどうか分からない地震時の熱効率を求めて普段使わない鍋まで買わなくても良くない?」
お湯を沸かしてインスタントラーメンを作るとか、パスタに出来合いのソースと缶詰を混ぜる程度の料理はするかもだが、基本的に断水や停電が起きている時にしっかりとした料理をするとは思えない。
だからノンスティック加工をした鍋ではなく薄いアルミ鍋の方が熱効率は良いかもだが、お湯を沸かす時の熱効率の微量な差のために普段は使わないアルミ鍋を買う必要も無いだろう。
多分。
「・・・ま、そうか。
備蓄は完璧を期したら際限なく増えるからね〜」
碧が頷きながら、時計を確認した。
「お、出来たみたい。
この袋の中に直接カレーを入れられるみたいだけど、今回はそこまで拘らなくて良いよね?」
碧がスープ皿を取り出しながら言った。
「うん。
流石にそこまで本番に迫らなくても良いでしょ」
と言う事でアルファ米をスープ皿に出し、その側に置く事で一緒に温めておいたカレーをかける。
「・・・一応認識できるサイズの人参とジャガイモも入っているけど、写真程は多く無いね」
いつも思うんだけど、レトルトとかの写真って明らかに具が現実よりも多いよね??
あれって角度や盛り付けを工夫するとそう見えるのか、それとも特に具が多くなったパックを何らかの手段で選んで写真で撮っているのか、はたまた二つか三つのパックから具だけ足して増やしているのか。
絶対に普通にやっただけでは写真通りの現実にはならないと思う。
ちょっとずるいよねぇ。
「思ったより具は多くないけど、でもまあレトルトにしては美味しそう?」
碧がコメントし、一口スプーンにとって口に入れる。
私も自分のお皿のを混ぜて口に入れた。
見た目はみっともないけど、カレーはガッツリ混ぜて食べる方が好きなんだよね〜。
流石に外では格好つけてもう少しお上品に部分的に混ぜながら食べるけど、家の中なら許してもらおう。
碧もそれなりに人前では見せない癖があるし。
「う〜ん、ちょっと普通のカレーと違って微妙にエスニックな下味がある感じ?
まあ、悪くは無いけど」
碧が首を傾げつつ言った。
「買ったカレー感がちょっと強いね。
味は悪く無いけど、災害時なんかは変に拘りな味じゃなくって日常のカレー味の方が良い気がするけど・・・長期保存の為に必要なのかな?」
ごく普通のカレールーから作った一般家庭的なカレーの方が飽きがこなくて良いと思うんだけどねぇ。
「まあ、二週間分も食材を買っておくとなるとかなりの量になるから、バラエティの一部として買っておいても良いか。
でも、やっぱ見事に炭水化物系だよね。
避難時ってあまり動かないからタンパク質が無くても良いのかな?」
碧が微妙そうな顔をしてお皿を見下ろした。
具が少ないと、名目上は野菜カレーでも実際は『炭水化物!』って感じが強い。
「それこそ家の中の物が散らばったりしたら片付けや処分の為に忙しく動き回るだろうし、断水期間が想定よりも長引いたら近所の避難所まで行って水を貰ってくる羽目になるかもだから、あまり運動しないとは限らないと思うけど」
まあ、私ならそっと人目がないところで収納に水をしまえるから極端な重労働にはならないが。
「つうか、これって意外と量が多いね。
朝昼兼用ぐらいなのかな?」
碧がまだそこそこ残っているお皿を見ながら言った。
「・・・かも?
流石に1日3食、二週間分を揃えるのは大変だよね。ガツンと昼食に多めに食べて、夜寝る前に空腹を紛らわせる程度に軽く食べて朝は抜きって感じになるかも?」
夜にガツンと食べるよりは昼にガツンと食べる方が良いよね?
そうなると夕食をどうするか、悩ましいけど。
「飴とクッキーで夕方の空腹感は誤魔化し、寝る2時間ちょっと前ぐらいにグラノーラでも食べるとか?
あれだったらそのままでもポリポリ食べられそうじゃない?」
碧が提案してくる。
「グラノーラは苦手なんだけど、碧用にグラノーラ、私用に玄米フレークでも買っておいてボリボリ食べれば良いか」
グラノーラってレーズンとかが入っているから嫌いなんだよね。
碧はヨーグルトをかけてちょくちょく美味しそうに食べているけど、個人的には気が知れないと感じてしまう。
「まあ夕食はそれでも良いかもだけど、ガッツリ食べる一食にはやっぱりタンパク質が欲しいな!
肉か魚!!
缶詰もある程度買っておくにしても、お肉のレトルトでも保存期間が長いのがないか、探してみようよ」
確かにねぇ。
なんか炭水化物だけだと気力が抜けていきそうだ。
近所のスーパーだと魚の缶詰ばかりでお肉は小さい焼き鳥のと、後はなんか得体の知れなそうなコーンビーフとか言うのしか無いんだが。
あれって美味しいのかなぁ?
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