第633話 運命の恋人って生まれ変わるとどうなる??
念話って黒魔術師だったら誰でも持っている能力だが、それ以外だと『才能があったら』とか『相性が良かったら』とかだと繋がることが多い。
国際的なフォーラムに出てくる程の術師なんだからあのおっさんもそれなりに魔力は多い筈。それでもあれだけ力一杯魔力を込めているっぽいのにロビーの中に入ってくるまで聴こえ無かったのは本人が黒魔術師ではなく、偶々ちょっと才能があるからなのだろう。
彼がロビーに入ってきた時や、自分がロビーに踏み込んだ時に周囲を見回してあのおっさんを微妙な目で見ている人間は黒魔術の適性持ちな可能性が高いかな。
意外と思っていたより数が多い。
前世で国が把握していた以上に黒魔術師の才能があると分かった子供が人知れず殺されていたのか、地球での黒魔術師率が前世より高いのか、もしくは各国が色々と探りを入れる為に黒魔術師を選んで送り込んでいるのか。
・・・最後な気がするなぁ。
下手に探ってくる相手を完璧に防いだら怪しまれるかも?
でも、既に退魔協会側に私の適性がバレていそうだし、バレているんだとしたら協会にある情報は興味ある相手にはぼろぼろと溢れていそうだからなぁ。
今更取り繕っても無駄かな?
ただの若手退魔師だったら誰も態々調べようとしないだろうが、ローカルとは言え人間よりは遥かに力のある氏神の愛し子で白魔術師でもある碧の事務所共同経営者となったら、脅迫か囮利用目当てにがっつり調べられてそう。
まあ、それはともかく。
問題は、このリチャード・ハウスマンがどの程度危険なのか、だよねぇ。
そんな事を考えながら受付業務を続けていたら、私のシフトが終わったので碧と待ち合わせをする事にしてあるカラオケショップへ向かった。
喫茶店とかでは声って意外と響くからねぇ。
近くに昼から営業しているカラオケがあるので、そこで情報共有しながらランチを食べる予定なのだ。
「お疲れ様〜。
どうだった?」
カラオケショップの受付にほぼ同時に辿り着いた碧が声を掛けてきた。
「思っていたより普通な人が多かったけど、最後の方に一人強烈なのが来た」
宗派違いでの嫌がらせの話とかを聞いて、かなり奇天烈な人が多いのかと思っていたんだけど、意外にも基本的に皆さんICカードの作成に行列になって待たされても文句を言わずに穏やかに対応してくれた。
アジア系の方が無表情なの人が多かったけど。何でだろ?
欧米出身の魔術師は昔の魔女狩り時代の後遺症でにこやかに周囲に紛れ込む様、訓練されているのかね?
アラブ系はなんかイマイチ髭が多くて表情の判断が付きにくかった。
中東って暑いだろうに、髭を伸ばしていて汗疹とかにならないのかな??
食事で汁とかが垂れても出先では完璧に綺麗には出来ないだろうから、清潔な状態を保つのは難しいだろうに。
「強烈??
こっちは普通っぽい人ばかりだったかな。
変に手を握ろうとするのもやたらと話しかけてくるのも居なかったし、白龍さま曰く、魂がロールケーキなのも居なかったって」
碧がメニューを取り上げながら言った。
碧は北側の受付で働いていたのだが・・・なんかこう、碧と私のこれまでの体験が違わない??
対女性ハニトラ??
はっきり言って、手を繋ごうとしたりやたらと話しかけるのって普通は嫌われると思うんだが・・・愛し子のハニトラを命じる様なおっさんは何が若い女性に嫌がられるか、分かって無いのかな?
「あ〜。ありがとうございます。
ロールケーキに関しては探さなくても大丈夫と言いましたが・・・後でもしもリチャード・ハウスマンって男を見かけたら、調べて頂いて良いでしょうか?」
碧の横に現れた白龍さまにお願いする。
『うむ、構わんぞ。
見かけたら言ってくれ』
白龍さまが気軽に合意してくれた。
「どったの?」
店の端末にオーダーを打ち込み、メニューと一緒にこちらに渡しながら碧が聞いてきた。
「なんかさぁ、念話で滅茶苦茶精一杯魔力を込めて『愛してるエリーザ!僕はここだよ!今度こそ一緒になれるね!!』みたいな事を叫んでるキャソック姿の男性が居てね。
もしかしたら愛している女性と来世で一緒になろうと約束して悲劇的に死んで転生した人なのかも知れないけど、思い込みが激しいストーカー男な可能性もあるじゃん?
まずは妄想なのか本当に前世の記憶なのかを確認してから危険度の評価をしたいな〜と思って」
まあ、実際に転生した人間だとしても、前世の恋人を延々と探している間に気が触れちゃってる可能性はあるし、もっと嫌な事に前世から付き纏っている究極なストーカーの可能性もゼロでは無い。
と言うか、生まれ変わる際に恋人や伴侶と一緒の世界と時代に生まれ変わる様指定する術なんてあるのかね??
無いとしたら、下手に生まれ変わっても精神的に微妙な感じそう。
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