第626話 ワクワクするかも

「見て見て〜」

新しく完成した魔法陣を試し、上手くいったので碧に声をかける。


結局、藤山家の元素系の先祖が残した符だけでは電気を使う魔法陣を実用レベルまで高められなかったので、攻撃用の雷撃の符を退魔協会で買って更に色々と試行錯誤していたら、中々面白い効果が見つかった。


「うん?

何?」

微妙に寝るか遊ぶか決めかねていた源之助を猫じゃらしで誘惑しようとしていた碧が、オモチャをソファに置いてこちらに来る。


さっきまであまり乗り気でないような素振りを見せていた源之助だが、碧の興味がこっちに向いた途端立ち上がって碧の足に擦り寄っている。


何なんだろうねぇ、あの猫の移り気と言うか天邪鬼と言うかな性格って。

こう言う姿を見ると、犬派と猫派の好みがスッパリ分かれるのって当然なのかもと思えてくる。


犬の飼い主って自分がボスって主張しなくちゃいけないのに、猫って明らかに飼い主が下僕オモチャだもの。

役割が180度違う。

まあ、猫のふにゃりとした柔らかさとゴロゴロと鳴らす喉は犬派をも誘惑する魅惑の攻撃力を有するけど。

前足で甘えるみたいにフミフミされるとメロメロだし。

『踏まれて喜ぶ』なんて文字にすると終わってるよね〜って感じだけど、不思議と猫にやられると愛を感じると言うか何と言うか。


前世ではペットを飼う余裕なんてなかったが、来世でもできれば猫を飼いたいな。


それはさておき。

「攻撃用の雷撃の符に、『絶縁』の効果の紋様を見つけたんだ。

何故かこっちの効果は電気系の効果よりもずっと相性が良くて、案外とあっさり実用レベルになったの」

そう言いつつ、動画を流しているタブレットに魔法陣を近づける。


プツっとタブレットの画面が消えて真っ暗になった。


「え、何それ?

『絶縁』って電気製品の電気を遮るの??」

碧がタブレットを手に取り、ホームボタンを押してみる。


「絶縁で電気を一度遮って電源を落とすと、電源ボタンを押さないと立ち上がらないみたい。

他の家電も単に電源をオフにしたんじゃ無くって停電した後みたいに完全に落ちるね。

コンセントへの配電を遮るとそれが繋がっている家電の電源も落ちるし」

家電を起動させたり、ショートさせたりするだけの電圧(?)は黒魔術師の適性では生み出せないようなのだが、絶縁効果は意外とそれ程強くなくても実効性があるのだ。


不思議。

とは言え、電撃に対する耐電能力はそんなに高くはないと思う。

流石にわざと自分を感電させて絶縁出来るか試す度胸は無いので試してないけど。


「へぇぇ。

じゃあ、盗聴器が仕込まれているかも知れない火災警報器とかを警報器ごと無効化出来るかもって事?」

碧が尋ねる。


「多分?

ちょっとまだ長距離では使えないんで、そこを工夫する必要があるけど」


電流を察知する探知結界モドキは一応出来上がったものの、火災警報器とかに仕込まれると結局火災警報器なのか盗聴器なのか分からない事が判明し、イマイチ実用性は微妙だったのだ。


まあ、考えてみたら何か怪しげな電流があったとしても、退魔協会の会議室の天井とかを調べる訳にはいかないしね。

ウチらの住んでいるマンションは常時使い魔のどれかが居るから侵入して盗聴器を仕込まれる心配は無いし。


そうなると、電流探知結界モドキはイマイチ使い道がないと言う結論になったのだ。

しかも、退魔協会の会議室だったら電池式ではなく元から電源に繋いだ盗聴設備があっても不思議ではないし。


まあ、色々な所での電流の流れを観察する癖をつけて知識を増やしていけば、不自然な機器があったらわかるようになるかもだけどね。


それまでは、周囲の機器を電池切れか故障かのような感じで機能停止させられる魔法陣が凄く使い道がありそうな気がする。


「どの位近付かないとダメなの?」

碧が尋ねる。


「そのタブレットで30センチぐらいかな。

壁の中の配電だと平均して壁際20センチぐらい?

だから天井の火災警報器とそこに仕掛けられているかも知れない盗聴器を止めようと思ったら机の上にでも登って天井に手を伸ばさなきゃいけないんでちょっと微妙」

クルミに持たせて近くで使わせるのも可能かな?と思うのだが、現時点では手で持って魔力を通す形なのでクルミに起動させるのは難しい。


そこをなんとか出来れば便利かも。

まあ、盗聴されて困るような会話は念話用魔道具カードを使えば良いんだけどさ。

でも。

新しい魔道具ってワクワクするよね?!








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