第627話 使いようだね!!

「魔術がリモートで発動出来るようになれば良いのに・・・」

聖域の蔓っぽい雑草を裂いて長めな繊維質にし、紐に編みながら思わず呟く。


結局、絶縁魔道具はリモートで起動させる方法が思いつけず、かと言って攻撃魔術のように狙って発射するのも上手くいかなかった。なので聖域産の雑草を導線の様な感じ使い、自撮り棒に取り付けた魔道具カードを天井近くで起動させる事にした。


魔道具を作れると知られると色々と問題だろうから、ネットで買った盗聴盗撮発見センサーとか言うののケースの中にそっと魔道具カードを仕込む事にしている。


まあ、センサーがあった所で盗聴器が誤作動する理由にはならないが、少なくとも怪しげな機具を天井近くに動かしている理由にはなるだろう。

碧と一緒だったらセンサーで発見した盗聴器を白龍さまが止めたとでも思われるだろうし。


一応20センチぐらいの長さまで編んだ蔓では上手く絶縁魔道具カードは起動したので、今度は自撮り棒の長さ分まで蔓を編んでるのだが・・・ちょっと手を離すとふわっと崩れそうになるし、中々難しい。


寒村時代には蔓を色々と編んで使ったんだけど、肉体記憶が引き継がれないせいで中々思う様に指が動かないんだよねぇ。


しっかし。

マジで魔術がリモートで使える様になれば良いのに。


そうすれば怪しげな人がいたら近付かずに記憶を読んだり、何らかの条件付けとかを埋め込んだり出来るのになぁ。


まあ、何のリスクも無しにそんなことが出来るようになったらバレた時に危険視されてヤバそうだけど。


と言うか、危険視以前に誰かがそんな事を出来たら怖すぎるから、黒魔術師や白魔術師は対象者に近付かないとその力を振るえないのは良い事だね。


「凛の前世でもこう、回復術を投げるみたいな事とか、黒魔術の何かを投げつけるとかって出来なかったの?」

私が編んでいる最中の蔓紐に源之助がじゃれつかない様に抑えている碧が尋ねてきた。


「黒魔術は呪詛的な感じにトリガーを触れさせてそれを媒体に術をかけるって言う半リモート的な技術はあったけど、白魔術は無かったなぁ。

考えてみたらそれなりに工夫すれば同じ様なトリガー式は回復術でも可能だっただろうけど、元々回復術って術者が患者の状態を診ながら施すものって考えが一般的だったからそんなリサーチも無かったね」

黒魔術の関しては本人がいない所で敵を痛めつける方法としてかなり熱心に研究した術者が過去にそれなりにいたせいで、色々と禁呪とされた危険な術は開発されていた。


白魔術に関しては、ラノベの世界と違って前世では希少な白魔術師が冒険者として少人数の戦闘集団と行動するなんて事はまず無かったから、戦闘中にリモートで癒しの術を掛ける必要なんかは無かったからそう言う研究はなかったんだよね〜。


「ちなみに、この絶縁って人間に使ったら一時的に手が痺れるとか痛覚が麻痺するとか言った効果は無いのかな?

神経の信号も遮るなら、そう言う効果があっても不思議じゃなくない?」

碧がふと思いついた様に聞いてきた。


ふむ。

確かにね。


とは言え。

「それだったら普通に黒魔術師の魔力を使う方が効率は良いかな。

電撃モドキよりは絶縁の方が魔力の通りがいいとは言え、普通に黒魔術を使うよりはかなり無理やりに出力を上げている感があるから」


つまり、この絶縁の魔道具カードは人間よりも機械相手に使うべき代物ってことだ。


ちなみに碧も試してみたら絶縁の魔道具カードを起動できた。出力が弱いせいでちゃんと落ちる機具と落ちないのとあったが。


面白いもんだね〜。

マジで黒魔術師と白魔術師ってコインの裏と表とまで言わないけど、近しい関係だったんだね。

そうじゃないかな〜とは思っていたけど。


後は後日翔くんや碧パパあたりにでも参考までに発電と絶縁の魔法陣を試してもらおう。

・・・いや、新しい魔法陣を私が開発できるって知られない方が良いかなぁ?

碧パパなら大丈夫そうだけど、翔くんはまだ若いからうっかり退魔協会でのオリエンテーション中とかにぽろりしかねないから危険かも。


「考えてみたら盗聴器なんて使われる機会ってそれ程はないと思うけど、電車の中とか映画館で携帯が煩い人のをそっと電源を落とせそうで良くない?」

ふと悪戯を思いついたかの様に、にっかり笑いながら碧が言った。


「確かに!!」

念話カードを使えば済むことが多い盗聴器対策よりも、よっぽど実用性がありそう!!

まあ、隣とか目の前に座っている人以外だったらさりげなく使うのは難しいかもだけど。


うむ。

イヤホンからガンガン音が漏れる様な大音量で音楽を聴いている人の携帯なりiP◯dなりを止めるのにも良いかも!!





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