第625話 試行錯誤

「うわ!」

ぼっと手元の魔法陣が火を吹いた。

慌てて台所のシンクに投げ込む。


一応感電したり発火したりしても大丈夫な様にニトリルゴム手袋をして台所で実験していたんだけど、本当に火を吹くとは思わなかった。

びっくりだ。


まあ、紙を土台にした魔法陣だからちょっとした事で簡単に発火するんだろうけど。これってラミネートしたら発火しないのかな?

お守りとかはかなり緩やかな黒魔術や白魔術系のだから発火する様な機能はないだろうけど、これから電気を使う系の魔法陣の魔道具カードを作っていく時はうっかり発火しないか、事前の安全性チェックは欠かせないな。


実用的な電気系の魔道具カードが作れるかはまだ不明だけど。

紋様を繋いで出力を上げられないかと色々工夫してみているのだが、電池をケーブルで繋ぐのと違って魔法陣の紋様はそう簡単に魔力を増幅させてくれないんだよねぇ。


普通に発雷(発電?)と思われる部分や魔力を取り入れる部分を繰り返しても何も変わり無し。

並列繋ぎっぽく発雷部分諸々を繋いでもダメ。

発雷部分諸々の線を太くしてみても何処かで魔力の流れがつかえるのか、却って電球の光は弱くなった。一筆書きで太さを変えるのにはかなり苦労したのに。


そこで2枚魔法陣を重ねて電球がそれらをぶち抜くような形にしてみたら・・・発火したのだ。


まあ、発火は発火でやりたい事ではあったので、これは意図的に再現できるか後で試さないとだけどね。

今世では白龍さまの魔力がぎっしり詰まった硯と聖域の木を使った和紙を使っているのだが、来世は魔力が溢れる世界だとしたら魔石でも砕いて水に解かしたインクを使えばなんとかなるかな?


でも考えて見たら火をつけるのにも苦労するような生活だったら、紙の入手が厳しいかも。

木に描いた魔法陣を重ねても上手く発火しなそう。

後で木版ベースも試してみて、ダメそうだったら別の魔法陣を考えないと。


現代並みに文明が進んでいない限り、紙を気軽に火を起こすのに使えない可能性は高い。

羊皮紙は元々燃えにくいし。

草を適当に潰して和紙っぽいのを作ってやれるかもだけど、和紙を作るのだってそれなりに大変だよねぇ。

やった事ないし。


和紙作りの体験コースにでも行くべきかな?


「大丈夫ぅ?」

作業室でお守り作りに励んでいた碧が声をかけてきた。


「一応ねぇ」

少なくとも火傷はしてないけど、出力を上げる方はアイディアが尽きてきた。

もう諦めるかなぁ。


今回の雷撃の符を分解して分かったのだが、意外と魔法陣って属性に関係ない部分も多い。

もしかしたらもっと強力な攻撃魔術の符だったら出力を上げる紋様があるかも。


退魔協会の販売コーナーに威力重視なのがあるだろうけど、まずは藤山家でゲットした符を解体して片っ端から紋様候補に魔力を通して各文様の意味を確認していくか。


取り敢えず出力アップは一時中止にして、次は盗聴器とかの探知の方を試してみよう。

魔力視みたいな感じで微細な電気の消費が見て取れる様になったら、記憶にない機器が動いているのを発見出来る・・・んじゃないかな?


家の中って色々と電気だらけだろうけど、コンセント沿いに流れているのが殆どだろうから電池で動いているのって別立てで目立つと期待したい。

基本的に盗聴器は電池で動いている筈だから、時計とか火災警報器とか携帯以外の電池で動いている機器が天井とか家具の裏にあったら怪しいよね。


問題は、どうやって電気を見える様にするかだが。

魔力視は魔術師として基本的過ぎる能力だから、これに関する魔法陣なんて存在しないんだよねぇ。

何か感知用の魔法陣ってあったっけ?



色々と自分が過去に使ったり教わったりした魔法陣を一つ一つ思い浮かべて考えていき、1時間後ぐらいに侵入者探知用の結界の魔法陣があったのを思い出した。


あれは人が入ってきたら探知する為の魔法陣だけど、結界を展開した際に中にいる人間も感知出来るから、対象を『人間』ではなく『電気』にして部屋のサイズよりちょっと大きい結界を展開する感じにしたら使えるかな?


まずは侵入者探知用の結界の魔法陣を単語ごとにバラバラにして、探知対象の部分を見つけて入れ替えてみよう。

ついでに色々と必要ない部分とかを修正できたら効率も上がるかもだし。












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