里(聖域)帰り

第586話 新たなお守り?

「月1とか隔月程度でも、何度もレンタカーの加工をするのって微妙に面倒だね」

お盆が明けて交通渋滞も解消された高速を進みながら碧が愚痴る。


「だね〜。

とは言え、多少の億劫さの解消の為に月5万円とかそれ以上する駐車料代や車検料や何百万円もする本体分を払うのは躊躇われるからねぇ。

現時点では貯金額も全然足りないし」


結局、碧の実家の方はお盆もお盆明けも特に手伝いは必要ないとは言われたものの、そこそこお守りが溜まっていたし、聖域の雑草が欲しかったので二泊三日予定で行くことにした。


数日泊まりがけで出かける事になるので、今回は源之助を連れてレンタカーで移動としたのだが・・・初回ほどは念入りな準備はしていなくても、それなりな猫対応改造をするのがちょっと面倒になってきたんだよねぇ。

新しい工夫とかが無いと面白味も無いし。


「まあ、お守りが良い感じに売れてるし、カリスマ祈祷師と退魔協会の仕事も順調だから、来年あたりには二人でお金を合わせればバンを買えるかもだけど・・・継続的な出費を考えるとレンタルの方が経済的なんだよねぇ」

碧がため息を吐きながら言った。


「お守りを届けて雑草とヨモギをゲットしてくるだけだったら日帰りでも何とか出来なくはないからねぇ。

それだったら源之助を連れて行く必要は無いって気もするなぁ。

退魔協会の仕事だと日中源之助だけで車の中に閉じ込めておく事になるから季節によっては危険そうだし。

こないだもパチンコ屋に行っている間30分車に放置しただけで子供が熱中症になったとかって報道してたよね」

冬は冬で寒そうだ。

暖房器具だって車に持ち込めるサイズだったら源之助が悪戯で倒したりしたら発火しそうで怖い。


そう考えると、猫を1日車の中に放置しておいて快適な時期なんて、極めて限られている。


「実家に帰る際に泊まりがけする時だけだと思うとやっぱバンなんて大きな買い物は必要ないかなぁ。

雑草を刈る時間を考えて泊まりがけで行くにしても、隔月程度で十分だし。

そう言えば、凛は実家に帰らなくて良いの?」

碧が聞いてくる。


「お盆の前に帰って肩凝りと不眠と自律神経調整用のお守りを渡したよん」

流石に夏休みに一度も帰らないのは許されないだろうと思って、お土産代わりにお守りを持って行った。

日付を確認する為に電話したら母が更年期障害が出始めてウザいと愚痴を言っていたので、前世にあった自律神経を整える魔法陣を描いたお守りも持って行ったのだ。


後日電話が掛かってくるぐらい、めっちゃ喜ばれた。

何でもホットフラッシュで突然汗がダラダラ出るのがかなり治ったそうだ。

肩凝りや暑さで寝苦しかったのも一気に解消できて、お守り最高!!と絶賛された。


爆睡していたせいで汗をダラダラかいて夜中に脱水症になっているのに気付かないと危険だから、気を付けてねと言っておいたけど・・・夜中の脱水症状って寝る前に水分補給すれば大丈夫なのかね?


「自律神経調整用って何?」

碧がちらりとこちらを向いて尋ねてきた。


「前世で更年期障害とか、ストレスで体調を崩した人用にあった魔法陣なんだ。

黒魔術で唯一の回復系な効果の魔法陣だね」

まあ、不眠用の魔法陣も回復系と言えなくも無いが。


「へぇぇ、そんなのあるんだ?

お守りとして神社でも売れば良いのに」

碧が言う。


「それも考えたけどさ、聞いたことがない様な変わり種のお守りを買うのって若い人でしょ?

更年期障害が出る様な年齢の人がお守りでそれの対策をしようと考えるとは思えないんだけど」

不眠用のも肩凝りのも、うちらの税理士さんの会計事務所とか青木氏の不動産屋経由で知り合いに売っている分に関しては購入者の年齢層にかなり幅があるらしいが、神社で普通に売っている分はやはり若い人が多いらしい。


まあ、若いと言っても働き始めて不調を感じ始めた30前後ぐらいらしいから、『若い』の定義は微妙なところだけど。

少なくとも更年期障害が起きる年代ではない。


「でも、実質50代前後の女性が全員苦しむ症状でしょ?

口コミで売ったら売れると思うな。

ウチの母親経由で神社の氏子さんに流してみたら?」

碧が指摘する。


確かに肩こりはまだしも不眠症に悩まされる人数よりは更年期障害の方が多そうだよね。

口コミで既存の購入層に存在だけでも知らせてそれとなく売り込んでみるか。


雑草の刈り込み量を増やした方が良いかもなぁ。

今回はついでに聖域の渓流で水垢離も試してみる予定なのだが、雑草刈りで暑くなった体を冷やす為に水に入るって言うんじゃあ、駄目かなぁ・・・。







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