第547話 便利なアプリ、求む。

「さて、やってみようか」

朝食後に顔を洗ってからソファを和室の方へ押し込み、ローテーブルをテレビの方へ退けてテレビをつける。


ラジオ体操である。


「意外と二人でテレビの前に並ぶと狭い感じだね」

碧が腕を広げながらコメントした。


ソファを退けた事で後ろのスペースが出来たけど、前後に二人で並ぶほどでは無いから微妙に空間を最適化出来てない。


「ただ立っている分には全然余裕だけど、これから体を動かすと思うとぶつかりそうだね」

十分広いと思っていたリビングだが、一人ならまだしも二人で体を動かす運動をするのはちょっと無謀かも?


録画していたラジオ体操が始まった。

と言うか、『テレビ体操』なのか。


最初に何やらラジオ体操とは違う運動をする。


微妙に昭和な雰囲気(偏見だけど)なレオタードを着たお姉さんが前で見本を見せているのだが、源之助がテレビの前のローテーブルに飛び乗って熱心に見ながらテレビの画面を前脚で叩いている。


お姉さんは獲物じゃないよ?

天気予報でも良く地図を指す棒をパシパシ叩くのだが、画面で動くお姉さんも気になるらしい。


まあ、取り敢えずそっちで夢中になっていてくれる方が助かる。

と、思っていたのだが。

ストレッチ運動っぽい最初の部分が終わって本番のラジオ体操(今日は第1だった)を始めたら、人数が増えて人影が小さくなって興味が薄れたのか、源之助がこっちに寄ってきた。


「うわ!

飛び付かないで〜」

太ももにジャンピングハグをされた碧が声を上げる。

幸い今は上半身を動かしているだけだから良いけど、運動中にジャンピングハグは困るねぇ。


そう思いつつ動いていたら、ハグはやめてくれたものの源之助は離れずにそばでこちらをじっと見ている。


おもちゃを振っているならまだしも、それ以外で体をブンブン動かすことなんて滅多に無いから興味を引いちゃってるっぽいなぁ。


やがて何やら横にステップと言うかスキップと言うかしながら動く場面になった。


「うわ、これ二人でここでやるのは無理じゃ無い??

源之助を蹴っちゃいそうだし」

碧が動くのを諦めて止まったので、取り敢えず私はそのまま運動を続ける。


意外とラジオ番組も飛び跳ねるんだねぇ。

これじゃあアパートで早朝にやったら絶対下の住民から文句が来そう。

煩いだろうし、それこそ天井から埃が落ちてきそうだ。

朝食時とか朝の着替えの最中に天井からどこどこ音がしたら嫌な感じだろうなぁ。


横へ移動する動きが終わって今度は上半身を回す事になったが、これも2人並んでやるのはちょっと微妙な気がする。

タイミングを間違えなければ同じ方向に動くんだからぶつからない筈だけど、なんか気になってのびのびと体を伸ばしにくいだろう。


そんな事を考えながらラジオ体操を終わらせた。


「それなりに汗をかくし、体の筋が伸びる感じで肩凝りとかには良さそうだけど、腹筋や二の腕を細くするのにはあまり効果が無さそうだね」

ラジオ体操って第二と第三がある筈だけど、掛かる負荷が極端に違うとは思えないから、筋肉をつけるのにはあまり役に立たなそうだ。

有酸素運動ってことで脂肪を燃焼させるのには活用出来るかもだけど。


「だね〜。

源之助が飛び付いてくるのも危険だし」

碧が源之助を抱き上げて頬擦りしながら言う。


「色々と二の腕とかの筋肉を鍛えるエクセサイズがネットに載っているから、適当にバスタオルでも敷いて床で運動しない?

ガッツリ運動したいならダンベルでも買ってくるのもありかもだけど、あれも飽きた時に捨てるのが面倒そうだし」

つうか、何をするにしても・・・一番の問題は『継続できるか』なんだよねぇ。


ある意味、何かにお金を出したら勿体無い精神で長続きする可能性は高いのかも。

でも勿体無い上に続かなくて邪魔になったりしたら悲惨を極めるから、フィットネス器具はやっぱり反対だなぁ。


碧の場合、体重の管理は能力で簡単にできちゃうから余計にモチベ維持が難しそう。

なんかこう、カメラで自分を写したら体型を記録できてシェイプアップが上手くいっているのか、希望の部位を削る為にはどんな運動をするべきなのかアドバイスしてくれるようなアプリでもあれば良いのになぁ。


最近は服をオンラインで買うためにサイズとかも認識できるアプリがあるらしいけど、体型管理に関して役に立つ運動アプリなんかもないのかね?




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