第546話 後で邪魔になるぞ〜

「幾つかフィットネス器具を買わない?」

碧が夕食時に提案してきた。


「えぇ〜?どっかのジムに行って、パーソナルトレーナーにダンベルで出来る程よい運動の仕方を教えてもらう方が良くない?

フィットネス器具って邪魔だよ??」

あれって本体自体がそれなりに大きくないと運動をした時の負荷に耐えられないし、その上さらに運動時に利用者が動くだけのスペースも必要だから、かなり場所を取るんだよねぇ。


兄貴が北海道の大学に進学した時に、『部屋が空いた!』て事で母親と父親が協議して、半分書斎、半分フィットネス空間にしたんだけど、結局フィットネス器具が部屋の殆どを占拠しちゃう結果になった。


「そうなの?」

碧がグラタンをスプーンにとりながら尋ねる。


「実家で、兄貴が北海道の大学へ行った時に空いた部屋にフィットネス器具を入れたんだけど、ちょっとした腹筋用器具とバイク型の2つ入れただけで、6畳半位の部屋が実質潰れたね〜。

運動するのにもスペース使うから、部屋の半分を書斎にもらう筈だった父親はバイクマシーンで本を読む羽目になったし。

まぁ最終的には1年もしないうちに使わなくなったから、結局全部部屋の隅に押しやられて父親はもっと座りやすい椅子を買っていたけどね」

あれは金の無駄だった。

しかもフィットネス器具って買っても使わなくなる人が多いらしくて、リサイクルショップでも引き取ってくれないのだ。お陰で十分動く中古品でも粗大ゴミしか行き先が無く、良心が咎めるから捨てるに捨てられなくて未だに兄貴の部屋に積まれているし。


「う〜ん、じゃあどっかの軍曹のスパルタ運動DVDでも買う?」

碧が提案した。


このマンションのリビングはそれなりにスペースがあるけど、運動しようと思ったら家具を退けなきゃいけないから面倒じゃないかなぁ。

「取り敢えず、実験みたいな感じで適当な動画でも探してみない?」

DVDだったらそれほど高くはないし場所も取らないが、買って使わなかったらもったいないのでお試しを先にやることを提案する。


「・・・だったら、ラジオ体操でもやろうか?

あれだったら、毎朝テレビでやってるじゃん?」


マジ?

あれって今でもやってるんだ??

毎日じゃなくても週一程度で放送して、運動したい人は録画してやれば同じだろうに。

ラジオ体操って第三までしか無いよね??

それを繰り返し毎日放送するなんて、人件費の無駄な気がするけど。


昔からちょくちょく見ていた色々な健康法の実験とかをやってくれるガッテン番組を中止した癖に、誰もやらなそうなラジオ体操は続けているなんて。

納得いかない。

早朝なんてせいぜい老人しか見てないだろうに。


・・・まあ、少子高齢化しつつある日本だったら老人相手の番組は削れないのかもだが。


「そんじゃあ取り敢えず、明日の朝6時ぐらいにでも起きてやる?」

夏休み中だし、何だったら運動してから二度寝したら気持ち良いかもだし。


「いや、朝早くに運動したら近所の人に迷惑じゃん。

録画しておいて、朝ご飯食べて歯磨きが終わってからにしようよ」

碧がささっとリモコンを手に取りながら言った。


「まあ、それで良いけど。

考えてみたら、安いアパートとかで朝早くにラジオ体操なんぞやってたら迷惑そうだよね。

基本的に戸建てに住んでる高齢者相手な番組なのかな?」

アパートに住んでる老人もいるとは思うが。

まあ、日本は高齢者の方が学生や勤労世代よりも金持ちだから、アパート率も低いんだろう。


それとも高齢者が金持ちなのは平均資産が多いだけで、個別に見るとがっぽり持っている金持ち老人と、年金でパンの耳を食べているような貧乏人との両極端になるのかな?


・・・と言うか、小学校の頃に読んだ小説なんかでは貧乏でちゃんと食べ物を買うお金もなくってパンの耳を食べているって言うような設定の話があったが、今時の日本じゃあパンの耳なんて売ってないよね??

今の貧乏人は何を食べるんだろ?


それはさておき。

取り敢えず、明日はラジオ体操だな。

あれって二の腕やお腹周りの脂肪を減らすような動きをするんだっけ??

子供の頃にやったけど、あの頃は二の腕とかお腹周りのぽっこりなんて気にしてなかったから、負荷がどこに掛かっていたかも気にして無かったんだよなぁ。


まあ、やってみれば分かるか。

どこの筋肉が増える効果があるか、碧に観察しておいて貰えるかな?





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