第492話 掲示板は危険
「ゾンビにした犬が何処にいるか教えて?」
PCと魔法陣解読プログラムの使い方を聞き出し、ついでに遺族へ何かメッセージがあるか確認した後、ゾンビ犬について尋ねた。
『うん?
僕を殺して出ていってしまったんだろ?
知らないよ』
のほほんと西田幽霊が答える。
「貴方が創り出したゾンビで、貴方の生命エネルギーを喰らって存在維持力を高めたゾンビなんだから、二重に繋がっているでしょ?
リンクを手繰って何処にいるか探してみて」
殆ど命令らしい命令がない魔法陣なので足元の魔法陣とのリンクを元にゾンビを探すのは難しいが、西田幽霊だったら二重に繋がっているのでゾンビがまだ残っているなら繋がれる筈。
運動不足とは言え、一応健康な成人男性を殺してそのエネルギーを吸収したんだから、ゾンビ犬もまだ残っている可能性が高い。どっかの悪ガキが迷子の犬を虐めようなんて考えて石を投げたりして、攻撃に対する反撃で殺される前に浄化しておく方がいいだろう。
動物を虐待するような人間は居なくなった方が良いと思わないでもないが、ゾンビ犬に苛めっ子が殺されたなんて事になったら色々面倒だ。
それこそ、ゾンビや呪詛が実在すると広まったら虐められっ子が苛めっ子への反撃手段として魂を穢してしまうかも知れない。
余計な知識は広まらないのが一番だ。
『あれ?本当に繋がってるね。
師匠の元で退魔術を学んでいた時は霊力も術とのリンクも中々感じられなくって散々苦労したのに、死ぬと色々簡単になるんだね』
驚いたように西田幽霊が呟く。
いや、死んだから分かりやすくなったんじゃなくって、元々魂とか精神に特化した適性だから、師匠の教えられる術と相性が悪かっただけだと思うよ。
まあ、今更そんなことを知ってもどうしようも無いから敢えては何も言わないが。
西田幽霊が意識して手繰ったお陰でしっかり太くなった繋がりを辿り、ゾンビ犬を見つけた。
うっし。
それ程離れていないし、これなら直ぐに見つけられそう。
どうやら日光を避けて近所の車の下に隠れているようだ。
「よし、ワンちゃんの方へリンク出来た。
じゃあ、これで良いや。
何か他にやっておいて欲しい事とか伝えて欲しい言葉でもある?
ないなら昇天してもらおうと思うんだけど」
『あ〜。
家族に渡される前に、PCの中にある『秘匿』ってフォルダの画像は消しておいてもらえるかな?』
西田幽霊が気まずそうに言ってきた。
ポルノとかエロ画像でも入っているのかな?
「今証拠品に触って削除するわけにはいかないけど、遺族に返却される前にPCの中身を消すよう伝えておくわ」
『頼むね。
じゃあ、それだけで良いや。
来世はもうちょっと空回りしないで人の役に立つ人生を歩みたいけど・・・それは退魔師さんに頼んでもしょうがないだろうし』
ちょっと気の抜けたような感じでしゃがみ込んでいた西田幽霊が肩をすくめた。
悪人との戦いの為に実験で犬を殺してゾンビにしようとして自分が殺されるなんて、『空回り』を突き抜けた愚行だと思うが、色々上手くいかなくってちょっと精神のバランスが崩れていたのかな?
死んで落ち着いて本来の姿に戻ったのだとしたら、来世はもっとちゃんとした師に出会えたらまともな人生を送れるかもね。
黒魔術師の適性持ちだから、私の前世の世界みたいなところに生まれたらそれはそれであまり幸せじゃあない人生になるかもだけど。
「じゃあ、さよなら」
碧が前に出て、浄化の祝詞を唱え始める。
相変わらず綺麗だよねぇ。
あの霊泉並みにスッキリするし。考えてみたら、霊泉にいけない時は週1ぐらいでお風呂場で湯を溜めた後に碧に浄化の祝詞を唱えてもらったら良いかも?
田端氏とサイバー部隊の人たち(多分)に情報を伝えようと表に出たら、ランチに行ったとかで門番係以外誰も居なかったので、ゾンビ犬を探しに向かいながら碧が聞いてきた。
「PCの削除の約束なんてしちゃって大丈夫?
嘘って良くないんでしょ?」
「魔法陣解読プログラムだけじゃなくってそれこそ呪詛とかの情報も退魔協会のネットワークからコピーしてあるかも知れないPCだよ?
下手に遺族にフリマで売られてネットで面白半分に公開されたりしたら目も当てられないから、絶対に遺族に渡す前にハードドライブを初期化か削除用プログラムを使うかして完全消去するよう説得するわ。それで消したがっていた映像も一緒に消えるでしょ」
本来ならば遺品を勝手に弄るわけにはいかないだろうが、警察も退魔協会も魔法陣プログラムをコピーして貰っちゃうだろうし、呪詛や
どうせ手を出すならとことんやって、全部消すよう説得する予定だ。
遺族がPCを使うならまだしも、こんな大きな本格的なマシーンは要らないってネットオークションかリサイクルショップに売る可能性は高い。
そう言うのは最終的には北朝鮮へ売られるんだと固く信じている友人が以前いたが、そうじゃなくても面白半分にネットの掲示板にでも公開されたりしたらやばすぎる。
つうか、一握りの人間しか見ないテロ組織に直接流れる方が、テロ組織だけでなく不特定多数の愉快犯とかにも見られかねないネットの掲示板に公開されるよりまだマシかも。
そう考えると、現世も中々平均的な民度が低いよね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます